このところ風俗営業に対する摘発が増えています。
2023年の11月、12月に全国で729店舗のホストクラブに立入り検査に入ったとのことです。
警察庁から下記のような通達も発出されています。
ホストクラブ等の売掛金等に起因する各種事件捜査等の捜査の推進について
また、今年も風俗営業に関する統計が発表されています。
令和5年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について
摘発されてしまうと営業停止や取消、風俗営業許可を受けられないといった罰則を受けます。
偏見の目で見られることの多い風俗営業ですが、法を守って営業している限りは世の中に必要な娯楽を提供している産業です。
そこで、あらためて摘発されやすいポイントや事例を解説します。
少しでも風俗営業に基づく摘発を減らす手助けになればと思います。

メンズエステ

東京都でも人気、在籍数が1,2を争うようなメンズエステも摘発されています。
メンズエステが摘発されたというニュースはよく聞きますが、ここまでの規模のお店が摘発されることはまれです。
記事によるとかなりの売上を上げていたようです。
ネットやSNSで目立つと違法行為がある場合は摘発のリスクが上がります。
メンズエステに関してはコラムでも何度か取り上げています。

しかし、違法営業は後を絶ちません。
あらためて適法な営業方法と申請について解説したいと思います。

メンズエステの摘発事由

メンズエステにも様々な業態があります。
マンションなどの個室を使用してマッサージを行うことが多いのですが、一歩間違えるとたちまち違法性を帯びてしまいます。
摘発事由としては下記のケースが非常に多いです。

禁止区域営業

メンズエステの摘発で最もよく聞くものは禁止区域営業です。
性風俗営業を行ってはいけない場所で営業を行ってしまったというものです。

 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条6項2号

上記の基準に該当する営業を行っている場合は、店舗型性風俗特殊営業とみなされます。
その場合、公安委員会への届出が必要となります。
ただし、この届出は実質的にはほとんど不可能となっています。風営法と都道府県の条例によって、ほとんどの地域で届出ができなくなっているからです。
ごく一部の地域については届出が可能ですが、新規での開業は非常に難しいでしょう。
その結果、届出が受理されない地域で営業したことになり、禁止区域営業として摘発の対象となってしまいます。

摘発されないためには

  • 個室等で性的なサービスは行わない
  • 性的サービスを行うなら無店舗型性風俗特殊営業として届出を行う

マンションの1室などのルーム型と呼ばれる営業を行う場合は性的なサービスは厳禁です。
店舗型性風俗特殊営業に該当するケースが大半です。
一方、無店舗型性風俗特殊営業の届出をしておけば性的サービスの提供は可能です。
近隣のホテル等にセラピストを派遣することになります。
この場合、メンズエステというよりはデリヘルに近い営業となります。

風営法における無許可営業

無許可営業とは、公安委員会から許可を受けるべきところ、許可を受けずに営業することです。
風営法で最も重い罰則が定められています。(2年以下の懲役又は200万以下の罰金)
純粋に許可を受けずに営業することは論外ですが、大半のケースでは許されている営業の範囲を超えることによって無許可営業に該当してしまいます。

接待行為の有無

最も多いものは、接待行為を行うことによる無許可営業です。
接待行為などの人間の欲望を刺激するサービスは大きな売上が期待できます。
しかし、風営法では歓楽やギャンブルに対して規制をかけています。
最近ではガールズバーやコンカフェ、ショーパブなどでの摘発が増えています。
例えばガールズバーなどは、深夜酒類提供飲食店の届出で営業するケースが大半です。
ショーパブなどでは特定遊興飲食店営業許可を受けて営業しています。
このような営業形態では接待行為はできません。
接待行為を行うためには風俗営業1号許可を受ける必要があります。

名義貸し

名義貸しとは、実際の経営者が風俗営業許可を受けずに他人が許可を受けることです。
この場合、実際の経営者が無許可営業、許可を受けたものが名義貸しとして罰則の対象となります。
名義貸しは風営法で最も重い罰則である、2年以下の懲役又は200万以下の罰金です。

摘発されないためには

接待行為に関しては様々な解釈があふれています。
ネット上では隣に座ったらダメ、カウンター越しなら大丈夫といった根拠のない情報が溢れています。
しかし、接待を行う場所はまったく関係ありません。
店内で接待行為があると認められてしまえばアウトです。

接待行為の定義は、解釈運用基準と呼ばれる警察庁の通達に示されています。
しかし、非常に抽象的です。
摘発されたケースをしっかりと検証して対応する必要があります。
弊所では、接待行為として警察から摘発されやすいパターンを蓄積しています。
迷ったらまずはご相談ください。

賭博行為

日本では賭博は禁止されています。
厳密には1円でもお金を賭ければ違法です。
特にパチンコ店や雀荘、アミューズメントカジノなどは、賭博行為が行われやすい土壌があります。
風営法では、遊技場営業として規制の対象となっています。

マージャン店

雀荘ではお金を賭けて麻雀は行った場合は賭博行為に該当します。
そのため、雀荘では賭博が行われていないことが原則です。
しかし、実態として賭け麻雀が行われているのは公然の事実です。

摘発のポイントとしてはレートと呼ばれる金額と公然性、反社会的勢力との関連が絡んでいるケースがほとんどです。
もちろん1円でも賭ければ賭博に該当するので、レートの多寡は関係ありません。
しかし、高額すぎるレートや射幸心を煽る特別ルールなどを採用しているお店は目立ちます。
現在はSNSなどですぐに拡散するので、警察としても黙っているわけにはいかない事情もあるのではと思います。

アミューズメントカジノやポーカーバー

カジノの営業は日本では認められていません。
そのため、カジノを模した設備のあるお店やポーカーバーといった営業が人気です。
チップなどを購入して遊技ができますが、換金行為はできません。
換金行為があれば当然に賭博行為に該当します。
風営法においても5号営業は遊技の結果に応じて賞品を提供できません。

また、いわゆる闇スロ店やインターネットカジノは言うまでもなく違法となります。

摘発されないためには

実際に雀荘を営業していて賭け麻雀を禁止することはほぼ不可能でしょう。
常に違法行為として摘発されるリスクがあることを意識しておく必要があります。
ギャンブル性を上げたルールを採用して目立つことや、反社会的勢力との繋がりが疑われると摘発の可能性が上がります。
また、イベントにしても必要以上に射幸心を煽っていないかということを確認しておく必要があります。

軽微な違反からの摘発

上記のような事例は重大な違法行為とされます。
しかし、軽微な違反で指摘を受け、改善が見られないことから重い罰則に繋がるケースも多くあります。
指導を受けてから数か月後に突然出頭命令を受けることもあります。
まずは、すぐにでも対策できる下記の事項から確認しましょう。

従業者名簿の不備

風営法では、営業開始後に従業者名簿を管理することが義務とされています。
アルバイトや派遣といった雇用形態にかかわらず記載する必要があります。
また、国籍など一定の確認事項を網羅していなければなりません。

毎年、取締り事由で一番多いものは従業者名簿の不備です。

料金表示

風営法の許可を受けているお店では料金を見やすい場所に掲示する必要があります。
飲食店であればメニュー表、遊技場であれば遊技料金を明確にしなければなりません。

料金が不明瞭の場合、ぼったくり等の疑惑を持たれますので注意が必要です。
サービス料やTAXといったわかりづらい料金も明確に表示しなければなりません。

営業時間の順守

風営法では営業に合わせて営業可能時間が決まっています。
原則として、風俗営業許可を受けた場合、午前0時から6時までの深夜は営業ができません。
つまり、風俗営業と深夜営業の両立はできないこととなっています。
営業時間に違反しても直ちに営業停止等になることは稀です。
しかし、改善がない場合は重い処分となるケースが多くあります。

摘発されないためには

上記の違反は、接待行為などと比較して明確な違反となるため、警察としても取締りやすいといえます。
逆にいえば法令を守っていれば問題ないため、対策しやすいともいえます。
まずは、できることは必ずやっておくようにしましょう。

反社会的勢力との関係

風営法の規定で反社会的勢力の者は営業許可を受けることはできません。
大半の営業者は反社会的勢力との繋がりはありません。
しかし、事例を確認すると反社会的勢力との繋がりが疑われた場合、摘発の可能性は非常に上がります。

最後に

風俗営業は許認可権をもつ機関が取締り機関でもある警察(公安委員会)となっている点に注意が必要です。
他の業界と比較して違法行為に対する対応も早く、有無を言わさず摘発となるケースがあります。
必要以上に気を使う必要はありませんが、決められたルールは守る必要があります。
また、日頃から近隣の方との良好な関係性を築いておくことも重要です。
ただし、風営法の規定は曖昧な部分も多く、施行規則や解釈基準まで理解しておくことが前提となります。
弊所では様々な事例の蓄積を基に最新の法令を網羅したサポートが可能です。
営業するにあたり、不安な点がある場合はご相談ください。

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