風俗営業における接待行為については質問も多く、中には誤った認識の方もいらっしゃいます。
接待行為の定義があいまいで明確な基準というものがないので無理もありません。
そのため、無許可で接待行為を行って摘発というニュースは相変わらず多く聞きます。
「ガールズバーは許可がいらない」や「隣に座ったら接待だ」など様々な情報も溢れています。

最近でも日本ハムファイターズが売り子BARを始めるということで物議をかもしました。
そこで「接待行為」に焦点を当てて、どんなときに風俗営業許可が必要になるかということを解説します。

風俗営業許可が必要となる営業

風俗営業許可が必要なお店といっても飲食店や遊技場など様々な業種があります。
その中でも店内で「接待」と呼ばれる行為が可能な営業は、風俗営業1号許可を受けたお店だけです。

第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条1項1号

キャバレー、待合など現在では廃れてしまった業態ですが、あくまで例示です。
現在の業態にあてはめるとキャバクラ、ホストクラブ、ラウンジなどが一般的には該当します。
ただし、名称の問題ではなく営業の実態で風俗営業に該当するかが判断されます。
つまり、ガールズバーやコンカフェを名乗っているから大丈夫ということはありません。
判断のポイントは「接待行為」「設備を設けて」「飲食をさせる」の3つです。
上記の3つの要件がすべて満たされると風俗営業1号許可が必要になります。

接待行為

接待行為の定義は非常にあいまいです。
しかし、無許可で接待行為を行って摘発されるお店の特徴のようなものはあります。
風営法上での定義は下記の通りです。
非常に抽象的ですが、例示も確認しつつ無許可営業とならないよう注意しましょう。

 この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条3項

歓楽的雰囲気醸し出す方法による接客の意味については風営法解釈運用基準で説明されています。

営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して会話やサービス等を行うことをいう。
(風営法解釈運用基準第4-1)

特定のお客さんに対して、通常の接客を超えるようなサービスや会話を行うことが接待行為といえます。
また、慰安や歓楽を期待しているお客に対して積極的に応える接客である必要があります。
隣に座って会話をしていても内容によっては接待に当たらないという判例もあります。

具体的な接待行為

具体的な接待行為は風営法解釈運用基準で例示があります。
〇・・・接待行為に該当
×・・・接待行為に該当しない

具体的な接待行為の例示(風営法解釈運用基準第4-3)
  • 談笑・お酌等
    特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供する行為。
    ×お酌をしたりお酒を作るが、すぐに立ち去る行為。
    ×カウンター内で単に酒類を提供するだけの行為。
    ×社交儀礼上の挨拶、若干の世間話。
  • ショー等
    特定少数の客に対して、専ら客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為。
    ×不特定多数の客に同時にショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為。(ホテルのディナーショー等)
  • 歌唱等
    特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを推奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為。
    ×不特定の客に対し歌うことを推奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為。
    ×不特定の客からカラオケの準備の依頼や歌の伴奏のための演奏する行為。
  • ダンス
    特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為。客の身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と踊る行為。
    ×ダンスの先生がダンスを教授する行為
  • 遊戯等
    特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
    ×客一人又は客同士で遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
  • その他
    客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為。客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為。
    ×単に飲食物の運搬、片付け、荷物、コートを預かる行為。

ここでポイントとなるのは、相手方を特定しているか否かということです。
お客さんやグループを特定した上で通常の接客行為を超えたサービスを積極的に行うことが接待行為です。

接待行為の主体

接待行為の主体とは、誰が接待行為を行うかということです。
通常、営業者やお店のキャストが該当することが多いと思います。
また、派遣コンパニオンなど営業者との契約などに基づいて接待する場合も含まれます。
女給、仲居などの名称は問われません。(解釈運用基準第4-2)
最近摘発された事例もありましが、客を装ったサクラも主体となり得ます。
本来、客同士であれば接待行為が成立することはありません。
しかし、あらかじめ営業者との申し合わせがあるサクラの場合は接待行為の主体として該当します。
また、同性か異性かは問われません。
そのため、ゲイバーやマッスルバーなどでも接待行為に該当するケースがあります。

カウンター越しなら接待行為に当たらない?

結論として接待に該当するか否かは、接客する場所で判断されることはありません。
つまり、ガールズバーはカウンター越しだから大丈夫ということはありません。
ただし、接待行為はお客さんを特定する必要があります。
カウンターからの接客は相手方を特定している状況になりづらいとはいえます。
逆にボックス席などは相手方を特定しやすいため、接待行為に該当するケースが増えます。
カウンター越しであろうと相手を特定して上記の例示のような接客を行えば接待行為に該当します。

設備を設けて

上記の通り、接待行為を行う場所について問われることはありません。
しかし、接待行為を行うための設備を設けている必要があります。
典型的なものとしてホール、踊り場、テーブル、いす、カウンターなどが設備に当たります。
その他、通路であっても接待行為を行うために通常より広く設計していれば設備として認められる余地はあります。
つまり、接待行為を行うに足りると客観的に判断できれば「設備を設けて」に当たるとされます。

飲食させる

店内で接待行為が行われていても客に飲食物を提供しなければ風俗営業許可を受ける必要はありません。
仮に調理設備がなく、ウーバーイーツなどを利用する場合も含まれます。
ただし、飲食店という業態である必要はあるので、たまたま飲食物を取り寄せる場合は該当しません。
風俗営業1号許可ではありませんが、ネットカフェの個室で飲食物を提供しないことがあります。
これは、飲食物を提供しないことで風営法の許可(区画席飲食店)を不要にしているということです。

営業の継続性

一般的に「業」とするには営利性と反復継続性が求められます。
特定遊興飲食店営業においては、営利性と継続性がないものは許可が必要ないとされています。
例えば一夜限りのイベントや、結婚式の二次会などは許可が必要ありません。
ただし、2晩以上にわたって行われる場合は反復継続する行為として継続性が認められます。
風俗営業においても継続性及び営利性のないものは許可が不要と考えられます。

最後に

風俗営業許可を受けると営業時間や18歳未満の入場など、多くの規制が絡んできます。
売上にも影響する部分なので許可を受けるか否かは慎重な判断を要します。
しかし、適切な許可を受けずに営業すると大きなペナルティを受けてしまいます。
キャバクラ、ガールズバー、コンカフェなど、名称で判断せずに営業の実態で判断しましょう。
弊所では適切な許可を受けるためのアドバイスも行っております。
申請のサポートまで迅速に対応しますのでお気軽にご相談ください。

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