弊所のある浅草橋~秋葉原は、深夜までお酒を提供しているお店が数多くあります。
特に秋葉原はガールズバーやコンカフェという形態で営業しているお店が目立ちます。
こういったお店の多くは「深夜酒類提供飲食店」として営業しています。
深夜酒類提供飲食店営業の届出は風俗営業許可と比較して営業までのハードルが低めです。
ただし、風営法のルールが一部準用されるため、決して簡単な手続きとは言えません。
もちろんご自身で届出書類を作成して届出を行うことが不可能なものではありません。
しかし、膨大な時間と手間がかかってしまいます。
そこで深夜酒類提供飲食店営業の届出に関するポイントをまとめてみたい思います。
もし、ご自身で届出を行うか専門家に任せるか悩んでいる場合は判断材料の一つとなると幸いです。
深夜酒類提供飲食店営業とは
まずは飲食店なので保健所の飲食店営業許可を受けている必要があります。
その上で、深夜にお酒を提供しているお店に対しては風営法の規制が及びます。
風営法では午前0時から6時までの時間を「深夜」としています。
つまり、午前0時以降にお酒を提供していれば深夜酒類提供飲食店となります。
ただし、ファミレスやラーメン屋といった主食を提供するお店は除かれます。
(深夜酒類提供飲食店の概要は下記のリンクで詳しく解説しています)
今回は深夜酒類提供飲食店でも、ガールズバーやコンカフェ、バーといった営業で実際に届出を行うポイントを解説したいと思います。
深夜酒類提供飲食店営業で出来ないこと
下記の事項に該当すると風俗営業許可が必要となり、深夜酒類提供飲食店営業の届出はできません。
また、風俗営業許可を受けると深夜に営業することができなくなります。
- キャストによる接待行為
風俗営業1号許可(社交飲食店) キャバクラやホストクラブなど - 店内の照度を10ルクス以下にする
風俗営業2号許可(低照度飲食店) - 他から見通すことが困難な5㎡以下の客席を設ける
風俗営業3号許可(区画席飲食店) 一部のネットカフェなど - 遊技機を設置する
風俗営業5号許可(射幸心をそそる遊技場) ゲームセンター、アミューズメントカジノなど
接待行為
ガールズバーやコンカフェなどは特に注意が必要です。
接待行為は、風俗営業1号許可を受けたお店でしかできません。
もし、接待行為に該当して摘発されてしまうと無許可営業の罪に問われます。
店内の照度を10ルクス以下にする
店内の明るさを10ルクス以下にして営業することはできません。
10ルクスとは一般的に上映前の映画館の明るさといわれます。
バーなどは薄暗い照明を使用すると雰囲気が出ますが、10ルクス以下となってしまうと風俗営業2号許可が必要となります。
他から見通すことが困難な5㎡以下の客席を設ける
店内で内部を見通すことができない5㎡以下の個室を設置することはできません。
上記のような個室を設置するには風俗営業3号許可が必要です。
遊技機を設置する
スロットマシンやテレビゲームといった遊技機を設置することはできません。
遊技機の設置面積によっては可能なケースもありますが、少し複雑なルールがあります。
遊技機を設置する場合は風俗営業5号許可が必要となります。
深夜酒類提供飲食店ができない場所
東京都では深夜酒類提供飲食店営業ができない場所を条例で指定しています。
東京都の場合、下記の用途地域では深夜酒類提供飲食店営業の届出をしても受理されません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
用途地域は、役所の担当部署に確認すれば教えてくれます。
例えば千代田区では都市計画課都市計画係で確認が可能です。
営業禁止地域は各都道府県の条例で指定されます。
関東地方(東京、千葉、神奈川、埼玉)の場合は、上記の住居系地域では深夜酒類提供飲食店営業はできないと思っておけば問題ありません。
ただし、風俗営業とは違い、保全対象施設からの距離制限はありません。
深夜酒類提供飲食店営業ができない設備
深夜酒類提供飲食店営業は風俗営業ではありませんが、風営法により一定の制限がかかります。
国家公安委員会規則という法令でお店の構造・設備に関して下記の基準が定められています。
風俗営業のように営業開始前の検査はありませんが、下記の基準を満たしておく必要があります。
- 客室の面積は9.5㎡以上とする
- 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない
- 清浄な風俗環境を害する写真や広告を設けない
- 客室の出入り口に施錠設備を設けない
- 営業所の照度が20ルクス以下とならない設備
- 騒音・振動の数値が条例で定められた数値を超えない設備
深夜酒類提供飲食店営業の届出
届出先は、営業所のある地域を管轄する警察署になります。
例えば秋葉原周辺でガールズバーやコンカフェが多く集まる地域を管轄しているのは万世橋警察署です。
担当は生活安全課風俗営業係になります。
この届出は営業を開始する10日前までに行う必要があります。
担当者は多忙なことが多いため、届出の際は事前に予約が必要です。
深夜酒類提供飲食店営業は「届出」となるので書類が受理されれば10日後から営業が可能です。
風俗営業の場合は標準処理期間が55日(東京都)ですので圧倒的に早く営業を開始することが可能です。
届出に必要な書類
下記の書類が風営法(府令)に規定される法定書類となります。
ただし、東京都では法定書類だけで届出が受理されることはありません。
- 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書(別記様式第47号)
- 営業の方法を記載した書類(別記様式第48号)
- 各種図面
- 住民票(本籍記載のもの。外国人にあっては国籍記載のもの)の写し
- 法人の場合は、定款・法人登記事項証明書及び役員全員の住民票
- 営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
- その他必要となる書類(誓約書等)
深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
別記様式第47号として警視庁のHPからダウンロード可能です。
記載例を参考に住民票や登記事項証明書の表示通りに記載します。
営業の方法を記載した書類
別記様式第48号として警視庁のHPからダウンロード可能です。
こちらも記載例を参考に作成しましょう。
各種図面
この届出において、専門家に任せることになる主な要因は図面です。
営業所の平面図だけではなく、下記のような様々な図面が必要となることがあります。
事前に管轄の警察署に確認しておきましょう。
- 営業所周辺の略図
- 建物概略図
- 営業所の平面図
- 配置図
- 求積図
- 照明・音響設備図
営業所や客室の面積を記載する必要がありますが、求積方法は警察署独自のものなので建築図面などの流用ができません。
そのため、上記の図面を自作する必要があります。
手書きでも作成は可能ですが、手間や正確性を考えるとCADソフトなどを使用するほうがベターです。
住民票
住民票は本籍記載のものを取得しましょう。
また、法人の場合は役員全員分の住民票が必要です。
役員の中に外国人がいる場合は在留カードの写しも必要となります。
もちろん、永住者等、適切な在留資格を有していなければなりません。
登記事項証明書・定款
法人で申請する場合は登記事項証明書と会社の定款が必要です。
法務局であればどこでも誰でも取得可能です。
また、今はオンライン申請が可能で手数料も安く、発行の待ち時間もないのでおすすめです。
登記・供託オンライン申請システム
定款は現行定款を提出します。
営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
営業所の使用について権原を有することを疎明する書類とは、所有権や賃借権といった営業所を正当に使用する権限を有していることを証明する書類のことです。
実は法定書類ではないのですが、東京都では提出するように強く求められています。
物件が自己所有であれば当然に権限を有していますが、賃貸の場合はそうもいきません。
例えばビルの1室を賃貸した場合、ビルの所有者から「深夜酒類提供飲食店営業を行ってもよい」という承諾が必要となります。
なぜなら、ビルの所有者が自分のビルで深夜営業が行われているということを知らずに賃貸した場合、トラブルとなることが予想されるからです。
そのため、賃貸の場合は下記の書類を準備して届出を行います。
賃貸借契約書
事務所を賃貸する場合は通常、賃貸借契約書を締結します。
まずは賃貸借契約書で賃貸人と賃借人を確認します。
賃借人が申請者であれば賃借権が確認できるので問題はありません。
しかし、よくあるケースで契約書上の賃借人が申請者と異なることがあります。
例えば申請者が個人で契約している場合や又貸しをしているなどのケースです。
使用承諾書
使用承諾書とは、事務所の使用権原を持つ者から「深夜酒類提供飲食店営業をしてもよい」という承諾があることを証する書類です。
風俗営業において使用承諾書は、建物の登記上の所有者→営業者(賃借人)に対してとなります。
また、所有者が複数いる場合はすべての所有者から使用承諾書をもらう必要があります。
しかし、深夜酒類提供飲食店営業は風俗営業ではありません。
そのため、賃貸借契約書に基づいて建物の使用権原を疎明します。
賃貸借契約書の賃借人が申請者であれば、賃貸人からの使用承諾書で問題ありません。
しかし、賃借人が申請者と異なるケースでは、権利関係を整理して使用承諾書をもらう必要があります。
例えば賃借人から又貸しで借りている場合があります。
その場合、契約書上の賃貸人と賃借人の両方から使用承諾書があれば届出は受理されます。
ただし、管轄の警察署によって解釈が異なることもあるので事前に確認が必要です。
その他必要となる書類
その他、管轄の警察署によってはメニュー表や誓約書などを求められるケースがあります。
誓約書の内容は、警察署独自のものから任意のものまで様々です。
さらに自著による誓約書や申請者の出頭など、警察署によって運用が異なります。
また、飲食店営業許可証も法定書類ではありませんが、求められます。
当然ですが、飲食店営業許可を受けた者と申請者は同一である必要があります。
無用なトラブルを避けるためにも事前に警察に確認しておきましょう。
また、一部の警察署では営業者に対する面接が必要なこともあります。
お店を開店するまで
深夜酒類提供飲食店を始める場合、申請手続き完了までの目安となる期間はどのくらいでしょうか。
まずは飲食店営業許可を取得する必要があります。
施設完成後、保健所に申請するための書類の作成から許可が下りるまではだいたい2週間程度でしょう。
並行して深夜酒類提供飲食店営業届出の準備ができれば保健所の許可から10日後には営業可能です。
しかし、必要書類の収集から各種図面の作成などは思いのほか手間がかかるものです。
テナントを借りている場合は使用承諾書など権利関係の確認も必要です。
また、営業所の構造によっては消防署との協議が必要となるケースもあります。
そうすると開店日はどんどん後ろにずれこんでしまいます。
施設完成から開店まで2カ月以上を要することはよくあることです。
最後に
深夜酒類提供飲食店営業の届出は風俗営業許可申請と比べるとハードルは下がります。
立地制限や申請者の要件も風俗営業ほど厳しくはありません。
しかし、時間の短縮や確実な届出をご希望でしたら弊所までご相談ください。
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