「雰囲気のあるお店」というのは店内の照明が効果的に使われていることが多く、風俗営業においても店内の明るさ(暗さ)は集客にも影響する大事な要素だと思います。
明るくする分には問題ありませんが、「雰囲気」を出すために店内を暗めにしたい場合は、その最低ラインがあります。風俗営業では下記のように店内の照度の基準が定められており、許可を受けるためにはこの基準以上の明るさを保つ必要があります。
照度の規制
風俗営業を行う者の遵守事項として、店内を一定の明るさに保つ必要があります。
薄暗い店内だと、客同士や従業員との間で風俗を害する行為が行われがちだからです。
風営法では、風俗営業者の遵守事項の一つとして規定されています。
(照度の規制)
第十四条 風俗営業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を、風俗営業の種別に応じて国家公安委員会規則で定める数値以下としてその営業を営んではならない。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第14条
営業所の種別に応じた照度の基準
風営法の委任を受けて、国家公安委員会規則で定められた基準が以下の表です。(風俗関連営業含む)
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ルクスとは?
明るさの基準としてルーメン(lm)という単位もありますが、ルーメンが光源の強度を示すのに対してルクス(lux)というのは照度を示す単位です。これはライト自体の明るさではなく、照らされている場所の明るさのことです。(ちなみに、上映前の映画館の明るさが「10ルクス」といわれています。)
照度の測定方法
照度の測定場所は、国家公安委員会規則で厳格に定められています。
(風俗営業に係る営業所内の照度の測定方法)
第三十条 法第十四条の営業所内の照度は、次の表の上欄に掲げる営業の種別の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める営業所の部分における水平面について計るものとする。
国家公安委員会規則第30条
接待飲食等営業
接待飲食等営業とは、風俗営業1~3号営業のことです。
キャバクラやホストクラブなどの接待を伴う社交飲食店がメインとなります。
- 客席に食卓その他の飲食物を置く設備がある営業所については、当該設備の上面及び当該上面の高さにおける客の通常利用する部分
- 前号に掲げる営業所以外の営業所にあっては、次に掲げる客席の区分に応じ、それぞれ次に定める客席の部分
イ 椅子がある客席 椅子の座面及び当該座面の高さにおける客が通常利用する部分
ロ 椅子がない客席 客の通常利用する場所における床面(畳又はこれに準ずるものが敷かれている場合にあっては、その表面)
食卓か飲食物を置く設備の上面及び通常利用する部分なので、飲食店であればほとんどのお店でテーブルの水平面で測定されることになります。
その中でも一番暗い場所を測定することもあるので、全ての客席で照度を確保しておく必要があります。
遊技場営業
遊技場営業とは、風俗営業4号と5号営業のパチンコ店やゲームセンター等のことです。
飲食店ではないので、設置する遊技機を基準に測定する規定となっています。
- 営業所に設置する遊技設備の前面又は上面
- 次に掲げる客席の区分に応じて定める客席の部分
イ 椅子がある客席 遊技設備に対応する椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分
ロ 椅子がない客席 客の通常利用する部分の床面 - パチンコ屋等は、賞品の提供が行われる場所(賞品カウンター)
パチンコ台やゲームセンターの遊技機は、照明効果の高いものが多いので10ルクス以下になることは考えにくいのですが、パチンコ店の場合は賞品カウンターも対象となるので注意が必要です。
特定遊興飲食店の照度の測定方法
特定遊興飲食店として営業するナイトクラブやショーパブなどは、営業形態上、照度の基準を満たすことが困難です。
そのため特定遊興飲食店営業に対しては、原則としてダンスフロアやステージの照度は測定対象外となり、測定場所は客席に限られます。
また、客室のみにおいて遊興をさせる営業形態では、深夜の時間帯の半分以上で10ルクスが保たれていれば違反とはなりません。
(特定遊興飲食店営業に係る営業所内の照度の測定方法)
第九十五条 法第三十一条の二十三において準用する法第十四条の営業所内の照度は、次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ当該各号に定める営業所の部分における水平面について計るものとする。
一 客席に食卓その他の飲食物を置く設備がある場合 当該設備の上面及び当該上面の高さにおける客の通常利用する部分
二 前号に掲げる場合以外の場合
イ 椅子がある客席にあつては、椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分
ロ 椅子がない客席にあつては、客の通常利用する場所における床面(畳又はこれに準ずるものが敷かれている場合にあつては、その表面)
国家公安委員会規則95条
スライダックについて
照明器具にはスライダックという、照度を調整できるものがあります。
これを使えば検査の時は明るく、営業時には暗く…とできそうですが、実際は照度の基準値以下まで暗くできてしまうものは許可が受けられませんので注意しましょう。
ただし、スライダックスの設置が直ちにNGとなるわけではありません。
警察との協議は必要ですが、規定値以下にならないような構造にするといった方法はあります。
是非ご相談ください。
低照度飲食店営業の判断基準
風俗営業2号許可として、低照度飲食店営業という種別があります。
客に飲食をさせる営業で、営業所内の照度を10ルクス以下にして営業を行ってしまうと風俗営業として規制されてしまいます。
国家公安委員会規則では2条と30条で照度の測定方法を規定しています。上記の30条は、既に営業をしている風俗営業者に対しての遵守事項の基準ですが、規則2条で規定されている測定方法は、営業するお店が低照度飲食店に該当するかを判別するための測定方法となります。
(営業所内の照度の測定方法)
第二条 法第二条第一項第二号の営業所内の照度は、次の各号に掲げる客室の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める客室の部分における水平面について計るものとする。
一 客席(客に飲食をさせるために設けられた食卓、椅子その他の設備及び当該設備を使用する客が通常利用する客室の部分をいう。以下この条、第三十条の表法第二条第一項第一号から第三号までに掲げる営業の項及び第九十五条において同じ。)以外の客室の部分において客に遊興をさせるための客室(当該客室内の客席の面積の合計が当該客室の面積の五分の一以下であるものに限る。) 次のイ及びロに掲げる客室の部分
イ 次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定める客席の部分
(1) 客席に食卓その他の飲食物を置く設備がある場合 当該設備の上面及び当該上面の高さにおける客の通常利用する部分
(2) (1)に掲げる場合以外の場合
(i) 椅子がある客席にあつては、椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分
(ii) 椅子がない客席にあつては、客の通常利用する場所における床面(畳又はこれに準ずるものが敷かれている場合にあつては、その表面)
ロ 客に遊興をさせるための客室の部分
二 前号に掲げる客室以外の客室 前号イに掲げる客室の部分
国家公安委員会規則2条
低照度飲食店の判断をするにあたり、以下の3つの業態が想定されています。
- 遊興を行わない (単に低照度のバーや喫茶店等)
- 客席のみで遊興をさせる (低照度のライブハウス等)
- 客が客席以外(ダンスフロアやステージ等)で遊興をする (低照度のクラブ等)
基本的にはすべての業態で客席部分が測定されます。
②の業態のような客席のみで遊興をさせる業態は、個々の営業時間の半分以上の時間で10ルクスが確保できていれば低照度飲食店には該当しないという配慮があります。(解釈運用基準第2-3)
また、③の業態では客席を極端に小さくして、その部分のみの測定となると規制の意味がなくなってしまいます。そこで③の業態では、客席部分の面積が客室の1/5以下だった場合は、遊興させる部分も測定の対象となります。
ナイトクラブなどで特定遊興飲食店営業を行いたい場合は、この点に注意をする必要があります。
他の種別の営業との関係
キャバクラやホストクラブといった風俗1号営業では、そもそも客席では照度を暗くして営業することが想定されているので、10ルクス以下で営業しても2号営業には該当しません。(5ルクスが下限)
また、パチンコ店やゲームセンターなどの遊技場は、そもそも飲食店ではないので風営法14条の規定を遵守していれば2号営業の無許可営業とはなりません。
最後に
照度は、風俗営業許可を受けるためには守らなければならないルールですので、ご自分が営業をしようとするお店がどこの基準に該当するか確認しておきましょう。
照明を上手に使用すれば集客にとても効果的です。弊所でも照明に関する注意点や活用方法のアドバイスを行なっておりますので、お気軽にご相談ください。
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