風俗営業における営業所とは実際に営業を行うお店のことですが、営業所の範囲や概念を正しく理解していないと思わぬ事態になることがあります。
風俗営業許可を受けるための要件で、非常に気を使うポイントとして保全対象施設からの距離制限というものがあります。
これは簡単に言うと風俗営業の営業所は、学校や病院といった保全対象施設から一定の距離をとりなさいという規制です。しかし、営業所のどこを基準に距離を計測する必要があるのでしょうか。
例えば建物全体を使用して営業していればその外壁や敷地からの距離になりますが、雑居ビルのテナントとして入居していたり、駐車場があったり、倉庫や庭があった場合はどこまでが営業所の範囲とされるのでしょうか。
また、旅館の一角などで風俗営業を行う場合や、船や電車でも風俗営業が営まれることもあります。
営業所の増改築を行った場合の取り扱いなど、風俗営業における「営業所」とはどのような概念なのかということを解説します。

営業所の範囲

保全対象施設の調査を行う際、まずは風俗営業所の範囲がどこまでかということを確定させておく必要があります。
営業所の範囲と申請時に提出する平面図で算定した床面積は別の概念となります。
警察に提出している平面図に記載するのは床面積であり、営業所内の客室面積が要件(1号営業であれば16.5㎡など)に合致しているかの確認であり、営業所の範囲を示しているわけではありません。
風営法では営業所の範囲に関して具体的な基準はありませんが、解釈運用基準において下記のように解釈されています。

「営業所」とは客室のほか、専ら当該営業の用に供する調理室、クローク、廊下、洗面所、従業者の更衣室等を構成する建物その他の施設のことをいい、駐車場、庭等であっても、社会通念上当該建物と一体とみられ、専ら当該営業の用に供される施設であれば、「営業所」に含まれるものと解釈する。

解釈運用基準 第12の2 営業所の意義

ある施設について「社会通念上の一体性」と「専ら当該営業の用に供されていること」が認められれば「営業所」に含まれます。
例えば店舗専用の駐車場であったり、営業に不可欠な倉庫などがある場合は建物と一体として解釈され、営業所に含まれるでしょう。

専らとは?

この通達で使われている「専ら」という文言があります。
営業所と一体とみられるためには専ら営業の用に供される必要があります。
専らとは、解釈運用基準によると、おおむね7割ないし8割程度以上のことをいいます。
つまり対象施設が7~8割以上当該営業のために使用されていれば「専ら」に該当するといえるでしょう。
ちなみにこの専らという概念は、風営法ではしばしば出てきますが全てこの理解で問題ありません。
アダルトショップや個室ビデオ店などは、この専らの解釈で商品の割合を調整して営業が許されている側面もあったりします。

測量の基点について

実際に保全対象施設から営業所までの距離を測定する場合、どこを基点としたらよいのでしょうか。
保全対象施設からの距離というのは、上記の営業所の範囲と保全対象施設の範囲で一番近い直線距離となるのですが、どこを基点にするかによって結果は違ってきます。
例えば雑居ビルにテナントとして入居していたら、ビルの外壁を基点とするのか、実際に風俗営業をおこなっている部分の外周から測定するのかという問題があります。
これに関しては裁判例もありますが、風俗営業で使用している部分とそれ以外の部分の面積比や構造を考慮して雑居ビルと同視できなければ、直接風俗営業の用に供されている部分を基点にするのが一般的です。
例えばフロアを間仕切りなどで区画していても独立した営業所とみなされれば、間仕切りを基点として距離が計測されます。保全対象施設自体も雑居ビルの一角にあれば、同様の基準で基点が決まります。

風俗営業所の測量の基点

法の趣旨として、保全対象施設に対して正常な風俗環境を保持するのが目的で、雑居ビルの風俗環境を保持するものではないので当然といえば当然です。

営業所の敷地

駐車場を例にとると、〇〇店専用駐車場などとなっていれば社会通念上の一体性と専らという基準に該当すると思いますが、複合施設など共用の場合は専らの基準に照らし合わせることが困難です。
この解釈をめぐっては問題になることも多いのですが、判例もでています。
判例では施設の目的や構造、実際の利用客数、客層など様々な要素を考慮して判断しているようです。
また、営業所だけではなく保全対象施設自体も駐車場などがあればその施設の敷地として考えることが必要です。

移動風俗営業

風営法には移動風俗営業(フェリー、バス、列車等常態として移動する施設において営まれる風俗営業)という概念があります。
この場合は、フェリーであれば船内の一室を特定して、列車ならば風俗営業を行う一車両が営業所とされます。(解釈運用基準第12-4)
保全対象施設との距離をどのように計測するのかという疑問がありますが、距離制限の対象外とされることが多いようです。(各都道府県の条例を要確認)
旅館などで風俗営業許可を受ける際も、実際に風俗営業を行う場所を営業所として特定します。

営業所の同一性

長く営業していると営業所の改築や増築が必要となることがあります。
しかし、増築や改築を行ったことで営業所の同一性が失われたと判断されてしまうと、新たに許可を受ける必要があります。万が一、事後的に立地制限に抵触している場合は既得権が失われますので営業を継続することができなくなってしまいます。

増改築等における同一性の判断基準

同一性の判断基準に関しては、解釈運用基準で下記のように示されています。

風俗営業の営業所の同一性の基準(解釈運用基準第12-3)

風俗営業については、次のような行為が行われたときに営業所の同一性が失われるものとし、この場合には新規の許可を要する。

  1. 営業所の建物の新築又は移築
  2. 営業所の建物の床面積が従前の2倍を超えることとなる増築
  3. 営業所の建物の客の用に供する部分の改築
  • 「新築」とは、建築物の存しない土地(既存の建物の全てを除去し、又はその全てが災害等によって滅失した後の土地を含む。)に建物を造ること。
  • 「移築」とは、建築物の存在する場所を移転することをいう。
  • 「増築」とは、一つの敷地内の既存の建築物の延べ床面積を増加させることをいう。
  • 「改築」とは、建築物の一部(当該部分の主要構造部の全て)を除却し、又はこれらの部分が災害等によって消滅した後、これと用途、規模、構造の著しく異ならないものを造ることをいう。
    「主要構造部」とは、壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいう。ただし、間仕切り、最下階の床、屋外階段等は含まない。

最後に

風俗営業における営業所について概念を理解していれば、営業所の増改築や申請の際の不慮のケースなどでも対応できると思います。
実際に保全対象施設からの距離が微妙な場合は、営業所の範囲がどこまでかということで結果が180度変わってしまうこともあります。
際どい測量が必要なケースや、営業所の範囲の判断に迷うことがありましたら、提携している専門家と調査することも可能ですので弊所までお気軽にご相談ください。