風俗営業店や飲食店に対して立入り調査による摘発が増えています。
最近、未成年が絡む事件が多いことや無許可営業が後を絶たないことが関係しているようです。
しかし、健全に営業をしていれば立入り調査が入ったとしても恐れることはありません。
そうはいっても、警察の職員がお店に来ると必要以上に緊張してしまうものです。
年度末や年末にかけて立入り調査の機会は増えてきます。
立入りが入った時にあわてないためにも、あらかじめどのような規定があるか理解しておくと安心です。
どんなものかということがわかっていれば落ち着いて対応することが可能になるからです。
【2023年11月24日追記】
警察庁の通達で取締りが強化されることが明示されました。
ホストクラブ等の売掛金等に起因する各種事件捜査等の推進について

報告等及び立入りとは

一口に立ち入り調査といっても自由にできるわけではありません。
法令に基づいて、しかるべき職員が実施します。
風俗営業店や深夜に営業する飲食店などには風営法に基づいて実施されることが多くあります。

風営法における規定

風営法では報告等及び立入りについて、限度や手続きについて規定されています。
「報告又は資料の提出」と「立入り」に分けて規制されています。
「立入り」は営業者に対する負担が大きいため、まずは「報告又は資料の提出」によって是正を図るという趣旨です。
つまり、営業者は、立入りの前に「報告又は資料の提出」を求めることができるといえます。

(報告及び立入り)

第三十七条 公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、風俗営業者、性風俗関連特殊営業を営む者、特定遊興飲食店営業者、第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者、深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者又は接客業務受託営業を営む者に対し、その業務に関し報告又は資料の提出を求めることができる。

 警察職員は、この法律の施行に必要な限度において、次に掲げる場所に立ち入ることができる。ただし、第一号、第二号又は第四号から第七号までに掲げる営業所に設けられている個室その他これに類する施設で客が在室するものについては、この限りでない。

 風俗営業の営業所

 店舗型性風俗特殊営業の営業所

 第二条第七項第一号の営業の事務所、受付所又は待機所

 店舗型電話異性紹介営業の営業所

 特定遊興飲食店営業の営業所

 第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業の営業所

 前各号に掲げるもののほか、設備を設けて客に飲食をさせる営業の営業所(深夜において営業しているものに限る。)

 前項の規定により警察職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第37条

報告等及び立入りの限界

風営法37条では「この法律の施行に必要な限度において」とあります。
つまり、犯罪捜査の目的や他の行政目的のために行うことはできません。
また、解釈運用基準では下記のように指針が定められています。

立入り等の行使は、法の施行に必要な限度で行い得るものであり、行政上の指導、監督のため必要な場合に、法の目的の範囲内で必要最小限度で行わなければならない。したがって、犯罪捜査の目的や他の行政目的のために行うことはできない。例えば、経営状態の把握のために会計帳簿や経理書類等の提出を求めたり、保健衛生上の見地から調理場の検査を行うこと等は、認められない。また、立入り等の行使に当たっては、いやしくも職権を濫用し、又は正当に営業している者に対して無用な負担をかけるようなことがあってはならない。(解釈運用基準第36-1(1))

保健衛生上の調理場の検査や帳簿、経理書類等の提出は断ることができます。
逆にお店の構造設備や接待行為の有無などの遵守事項に関することは調査対象となります。

報告及び資料の提出

報告及び資料要求の対象となる営業者は下記の通りです。

  • 風俗営業者
  • 性風俗関連特殊営業を営む者
  • 特定遊興飲食店営業者
  • 深夜における酒類提供飲食店営業を営む者
  • 深夜に営業する飲食店
  • 接客業務受託営業を営む者

風俗営業者とは許可を受けて営業している者をいいます。
つまり、無許可営業者については報告及び資料の提出は必要ありません。
(無許可営業はそもそも違法です)
それに対し、性風俗関連特殊営業は届出の有無にかかわらず対象となります。

報告又は資料の提出の手続き

解釈運用基準によると、文書で要求する必要があるとされています。
営業に関連した報告又は資料のみが対象となります。
兼業などがある場合は、その営業に関しては応じる必要はありません。
また、要求回数は原則として1回です。
必要以上の提出要求に応える必要はありません。
提出した資料は返還を求めることもできます。
可能であれば、状況などを書面で残しておくと後々のトラブルを防止できます。

立入り

「立入り」とは実際に行政職員が営業所などに入り、視察検査を行うことです。
営業者には立入りを受任する義務があるため、拒むことはできません。
ただし、鍵を破壊するなどの強制的な立入りまで認められるものではありません。

立入りの方法

立入りができる場所は下記の7つのみです。
これ以外の場所に立入りがある場合は断りましょう。

  • 風俗営業の営業所
  • 店舗型性風俗特殊営業の営業所
  • 第二条第七項第一号の営業(デリヘルなど)の事務所、受付所又は待機所
  • 店舗型電話異性紹介営業の営業所
  • 特定遊興飲食店営業の営業所
  • 深夜における酒類提供飲食店営業の営業所
  • 深夜に営業する飲食店の営業所

映像送信型性風俗特殊営業は客の出入りもなく、構造要件もないので立入りの対象にはなっていません。
また、立入りに関しては、許可と届出の有無は問われません。
無許可営業を行っていても立入りが入ることがあります。
ただし、営業所といっても客が在室する個室には立ち入ることはできません。

立入り時間

立入りの時間帯に関して制約はありません。
営業時間中でも可能ですが、営業の妨げとならない必要があります。
もし、営業妨害となるようであれば立入りは断るという判断も可能です。

お客への質問

調査の必要上行う質問に関しては、営業者側に行うことが原則です。
よほどのことがない限り、お客さんへの質問は断りましょう。

身分証明書の確認

立入りを実施する職員は、身分を示す証明書を携帯して提示する義務があります。
これは警察手帳のことではありません。
風営法施行規則で定められた証明書を携帯して提示する必要があります。
この証明書は営業者の求めがなくても携帯・提示義務があります。
もし、不携帯や不提示があれば立入りを拒否することができます。
立入りがあった場合は証明書を確認して、しっかりと内容を記録しておきましょう。

報告及び立入りに関する違反

正当な報告等の要求や立入りに対して違反した場合は下記の罰則があります。

報告要求等を拒否した場合
性風俗関連特殊営業・・・20日以上4カ月以下の営業停止命令(指示処分前置なし)
性風俗特殊営業以外・・・10日以上80日以下の営業停止命令(指示処分前置あり)
罰則・・・100万以下の罰金

立入り検査を拒否した場合
性風俗関連特殊営業・・・20日以上4カ月以下の営業停止命令(指示処分前置なし)
性風俗特殊営業以外・・・10日以上80日以下の営業停止命令(指示処分前置あり)
罰則・・・100万以下の罰金

立入りがあってもあわてないために

法令を遵守した営業を行っていれば立入り検査があってもあわてる必要はありません。
警察職員も取締るために立入りを行っているのではなく、巡回という意味合いもあります。
まずは下記の点を日頃から確認しておきましょう。

従業者名簿の管理

立入りが入った時に真っ先に確認されるのは従業者名簿です。
接待行為の判断などと比較して、誰の目にも明らかな違反となるからです。
年齢の確認や外国人の雇用に関してしっかりと確認しておくことが重要です。

お店の構造

風俗営業許可を受けるためにはお店の構造に関して基準が決められています。
店内の照度が基準値以下であったり、18歳未満入場禁止のプレートなどがないなどは明らかな違反となってしまいます。
許可を受けてから時間が経過すると、知らずに構造基準に違反している可能性があります。

今一度、店内が構造的基準を満たしているか確認しておきましょう。

最後に

風俗営業の監督官庁は警察庁のため、立入りがあると構えてしまうことはしょうがないことです。
警察は、許可権限を持つと同時に取締を行う行政機関だからです。
だからこそ、日頃から立入り検査が入ることを想定しておくことが重要です。
指摘されやすい事項や警察が確認するポイントはおおむね決まっています。
まずは、上記の点やすぐにできることから始めましょう。
それでも指示処分や呼び出し要請を受けるケースはあります。
弊所では、そのような事態となった場合の解決策を一緒に考えてサポートしています。
許認可取得で終わりではなく、アフターサポートも重視しているからです。
お困りごとがありましたら是非ご相談ください。

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