旅館業を営んでいる場合でも風俗営業の許可が必要になるケースがあります。
旅館と風俗、一見関係がないように思えます。
しかし、知らずのうちに無許可営業に該当する行為を行ってしまっているかもしれません。
今回は、通常の風俗営業許可との違いや警察との事前相談で気を付ける点などをまとめていきたいと思います。

旅館業における接待と接客

旅館業で風俗営業許可が必要なケースというのは、どのような場合でしょうか。
わかりやすい例として、コンパニオンさんを思い浮かべてみましょう。
バンケットクラブ(コンパニオン派遣業者のようなもの)から派遣を受けて宴会などに来られる女性たちです。
少しきわどい服装で、お酌をしてくれたり、デュエットをしたりしてくれます。これはもちろん風営法における接待行為にあたります。

もう一つの例としては、旅館施設内にバーやスナックなどの店舗を設けている場合。そのような店内で接待行為を行うのであれば風俗営業許可を受ける必要があります。その場合、他の客室との区別など条件が付されることもああります。
その他、女将さんや従業員などがおもてなしやサービスの一環でお客さんへのお酌や談笑をするのはさほど違和感のない光景ですが、これも接待行為とみなされる可能性が0ではありません。
接客と接待の線引きは管轄の警察によって判断はまちまちのようです。

観光地における風俗営業許可

風俗営業の制限は、都道府県の実情にあわせて条例で定められています。

例えば静岡県は、熱海や伊豆といった著名な観光地を抱えています。静岡県ではこのような地域は条例と規則で「旅館業施設内の風俗営業制限除外地域」として、下記のように規定されています。

旅館業(旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第1項に規定する旅館業をいう。以下同じ。)の施設その他の公安委員会規則で定める施設内に設けられた公安委員会規則で定める風俗営業の種類の営業所であつて、当該風俗営業の種類、態様その他の事情に応じて公安委員会規則で定める地域内にあるもの

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第2条第2項第3号

2 条例第2条第2項第3号の規則で定める風俗営業の種類は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「法」という。)第2条第1項第1号及び第4号とする。
3 条例第2条第2項第3号の規則で定める地域は、別表第4に掲げる地域で、条例第2条第1項第3号に掲げる施設の敷地(当該施設の用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲25メートルの区域内の地域を除く地域とする。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する規則(静岡県)

4号営業というのはよくあるパチンコ店ではなく、温泉街のスマートボールや射的場などが想定されているのではないかと思います。
別表第4に掲げる地域として、下田市、伊豆市、熱海市などの観光地が指定されています。
この地域では保全対象施設からの距離制限が25mとなり、用途地域の制限もないので商業地域よりも緩い規制となっています。
群馬県や神奈川県、大分県といった有名な温泉街を抱える自治体でも、同じような趣旨の規定がおかれています。

構造的要件

風俗営業許可を受ける上で人的要件、構造的要件、場所的要件があります。
人的要件は通常と変わらず、場所的要件は前述の通りです。
注意したいのは構造的要件になります。解釈運用基準によると、旅館業を営む者が風俗営業許可を受ける場合は「接待飲食をする場所を特定して必要に応じて条件を付するなどして行うことができる」とあります。
例えば宴会場のみで許可を受ける場合は、他の客室と明確に区分された構造とすることを条件とすることができるといったことが例示されています。つまり旅館全体が風営法の規制を受けるわけではありません。
明確に区分された構造とは?という点については、管轄の警察と相談しておいたほうがよいでしょう。
その他はいつも通り客室面積や照明、見通しを妨げる設備に注意する必要があります。

風俗営業許可を受けると

風俗営業許可を受けると必然的に18歳未満の者は入場ができなくなります。旅館で18歳未満の方を迎えられないとなると大ごとですが、上記のように場所を特定して許可を受けるので、当然ながらそれ以外の客室などは何歳の方でも使用可能です。解釈運用基準によれば、許可を受けた客室も接待行為がなければ使用可能です。ただし接待が行われている時は18歳未満入場不可のプレートの掲示と、外部から中が見通せるないようになっている必要があります。営業時間についても、接待を伴う営業は0時までとなります。

まとめ

旅館で風俗営業許可を取得する場合は、まず条例を確認する必要があります。保全対象施設との距離制限と用途地域による制限は、都道府県の実情にあわせてまちまちだからです。
他の客室との区別も、事前に警察と打ち合わせておいたほうがスムーズでしょう。
「接客」と「接待」の境界線を意識しつつ、ご自分の旅館に必要な許可が何かを明確にしましょう。
もちろん判断に迷うことがあれば弊所までお気軽にご相談ください。

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