キャバクラ、ガールズバー、コンカフェの境界が曖昧になっています。
実はキャバクラ、ガールズバー、コンカフェといった名称で区別することに大した意味はありません。
しかし、実際に営業しているお店がどのような営業形態なのかということを把握しておく必要があります。
最近ではお店の数の増加に伴って風営法違反や違法な客引き行為で摘発といったニュースが増えています。
そこで、当サイトでも何度か取り上げていますが、改めてリスクとなるポイントを解説します。

営業形態

キャバクラ、ガールズバー、コンカフェが該当する可能性のある営業形態は概ね下記の3つになります。
「風俗営業1号許可」、「深夜における酒類提供飲食店営業」、「飲食店営業」のいずれかに該当するのではと思います。

飲食店営業

キャバクラ、ガールズ-バー、コンカフェはいずれも飲食店が前提となることがほとんどです。
つまり、飲食店営業許可はどのような業態でも必要となります。

「飲食店営業」とは、「設備を設けて客に飲食させる営業で食品衛生法52条1項の許可を受けて営むもの」(風営法解釈運用基準第11-6)とされています。
ここでいう設備とは、客に飲食させるためのもので、テーブルや椅子が該当します。
つまり、屋台などで立食させる場合は飲食店営業には含まれません。(別途許可はあります)

深夜における酒類提供飲食店

深夜(午前0時~6時)に酒類をメインで提供する場合は、深夜における酒類提供飲食店営業として警察に届出が必要となります。
ただし、深夜酒類提供飲食店営業の届出を行うと接待行為はできません。

風営法1号営業

風営法1号営業は下記の通り定義されています。
店内で「接待行為」を行いたい場合は、公安委員会から風俗営業1号許可を受ける必要があります。

第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条1項1号

ここでいう設備とは、接待を行うための設備のことで、ホールやカウンターなどが該当します。
つまり、接待行為が行われやすいボックス席などを設置する際には注意が必要です。
風俗営業許可を受けていないガールズバーやコンカフェの場合は疑義を生じてしまうからです。

接待行為の有無

摘発されるか否かで重要なポイントは接待行為の有無です。
営業時間の違反などは誰の目でも明らかな違反とわかりますが、接待行為の定義は曖昧だからです。

接待行為とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう」とされます。(風営法2条3項)
ちょっとよくわからない概念ですが、下記の通り例示されています。

具体的な接待行為の例示(風営法解釈運用基準第4-3)
  • 談笑・お酌等
    特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供する行為。
  • ショー等
    特定少数の客に対して、専ら客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為。
  • 歌唱等
    特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを推奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為。
  • ダンス
    特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為。客の身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と踊る行為。
  • 遊戯等
    特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
  • その他
    客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為。客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為。

例えば、最近では「地下アイドル」や「チェキ」が何かと話題になります。
上記の基準に照らせば、地下アイドルとの接触やチェキは接待行為に当たる可能性は高いといえます。
しかし、風俗1号営業には「設備を設けて」という要件があります。
コンカフェの店内やライブハウスなどで行っていれば設備を設けて業として営んでいるといえます。
しかし、野外コンサートや公園などでは設備を設けているといえるかは判断に迷います。
弊所としては、店内で特定のお客さんに対し、通常の接客行為を超え、下心を刺激するような接客は「接待行為」に当たると考えています。
飲食目的ではなく、キャストと会うことが目的となっていると考えられるからです。
そのため、指名制度やキャストドリンクなど、特定のキャストに接客してもらうようなシステムがある場合は「接待行為」に当たる可能性が高いといえます。
したがって、そのような営業を行う予定の方には風俗営業1号許可を受けることをおすすめします。

カウンター越しは接待行為に当たらない?

お客さんの隣に座らずカウンター越しの接客なら接待行為ではないとよく言われています。
しかし、この理屈は警察にはまったく通用しません。
なぜなら「設備を設けて」接待行為をしていれば風俗営業1号許可の対象となるからです。
もし、露店や屋台などで接待行為を行っても設備を設けていないので規制対象にはなりません。
しかし、カウンターは接待行為を行うための設備に含まれます。
接待行為は、実態を見て判断されるということを肝に銘じておきましょう。

風営法の無許可営業

もし、風俗営業1号許可を受けずに上記のような接待行為を行ってしまうと非常に重い罰則があります。
風営法の無許可営業となり、2年以下の懲役又は200万以下の罰金若しくは併科となります。
さらに処分を受けてから5年間は風俗営業を行うことができません。
また、経営者との共謀が認められれば従業員も罪に問われることがあります。

雇用できるキャスト

年少者や外国人を雇用するときは注意が必要です。
風営法違反だけではなく、労働基準法や出入国管理及び難民認定法(入管法)違反となるケースがあります。

年少者の雇用

労働基準法で18歳未満の者は22時以降の労働が禁止されています。
また、風俗営業許可を受けている場合は、18歳未満の者の雇用は風営法によって禁止されています。
18歳でも高校生は校則で禁止されているケースもあります。

ただし、飲食をメインとしたコンカフェであれば18歳未満の者が働ける可能性はあります。
一方ガールズバーは、お酒を扱い深夜まで営業しているお店が多くあります。
そうすると22時までは18歳未満の者でも働けるのではないかと考えるのが自然です。
しかし、労働基準法62条で危険有害業務の就業制限が設けられています。

 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。

労働基準法第62条②

福祉に有害な場所における業務として「酒席に侍する業務」と規定されています。(年少者労働基準規則第8条)
「侍する」とは、酒席での接客行為で「接待行為」に近い概念のことです。
もし、風俗営業許可を受けずに接待行為を行っていて、年少者を雇用していると風営法だけでなく労働基準法にも違反することになります。
また、青少年健全育成条例などが制定されている都道府県もあります。
そのため、ガールズバーで年少者を雇用することは大きなリスクが伴います。
年齢確認は顔写真付きの身分証明書と住民票などで念入りに行いましょう。

外国人の雇用

外国人は日本での就労に制限があることがあります。
下記の在留資格で日本に滞在していない限り、風俗営業許可が必要なお店で働くことはできません。
・永住者・特別永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
・経営・管理(お店の経営を行う場合のみ)
ただし、外国人パブなどのダンサーは「興行」の在留資格を有していれば就労可能です。
また、資格外活動許可の有無や労働時間の制限にも注意しなければなりません。
風俗営業許可の必要のないガールズバーやコンカフェであれば資格外活動で外国人が働くことは可能です。
しかし、ガールズバーやコンカフェで接待行為があった場合は風俗営業扱いとなります。
その場合、無許可営業に加えて入管法にも違反してしまうことになります。

適正な営業許可・届出

繰り返しになりますが、摘発の現場ではキャバクラ、ガールズバー、コンカフェといった名称はあまり重要ではありません。
なぜならお店の実態に合わせて法令に適合しているか判断しているからです。

飲食店営業許可のみの営業

特定の世界観をコンセプトとしたコンカフェなど、主に飲食を目的としたカフェのになります・
過剰な接客を行わず、あくまで世界観を重視した飲食店として営業していれば飲食店営業許可だけで問題ありません。

深夜における酒類提供飲食店営業

ガールズバーはこの形態で営業しているケースが多くあります。
しかし、ガールズバーという名称で営業してカウンター越しの接客だからといっても安心はできません。
上記の接待行為が認められれば無許可営業として罰則の対象となります。

風俗営業1号許可

キャバクラは通常であれば風俗営業1号許可を受けて営業します。
ただし、ガールズバーやコンカフェであっても接待行為が伴えば風俗営業許可は必要です。
つまりお店で接待行為を行う唯一の方法は風俗営業許可を受けることです。

許可申請と届出

営業を開始するための手続きは下記の通りです。

飲食店営業許可・・・・・営業所の所在地を管轄する保健所
深夜酒類提供飲食店営業の届出・・・・・営業所の所在地を管轄する警察署
風俗営業1号許可・・・・・営業所の所在地を管轄する警察署

営業開始までの手間は、風俗営業許可>深夜における酒類提供飲食店>飲食店営業になります。
特に風俗営業許可の場合は事前調査も必要であり、申請してから営業開始までも3ヵ月程度かかることにも注意が必要です。
しかし、手間だからといって必要な許可の取得を怠ると後々苦労してしまいます。
場合によっては飲食店営業から風俗営業への切換えという選択肢もあります。

営業ごとの制限

営業ごとにかかる制限をまとめると下記の通りとなります。
(キャバクラ、ガールズバー、コンカフェの営業を前提としたケースです)

キャバクラやガールズバーなどの制限

最後に

上記の境界を無視してしまったため、摘発されたというニュースは本当に多く聞きます。
必要な手続きは何かということと、摘発されやすいポイントをご理解いただければ幸いです。
申請の手続きや必要な許可でご不安のある方はお気軽にご相談ください。

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