令和5年4月1日に足立区で「足立区客引き行為等の防止に関する条例」が施行されました。
客引き行為等に関しては、つきまといや強引な勧誘など、街の治安悪化やイメージダウンが心配されることから厳しく規制されています。
風営法でも禁止事項として客引き行為等が規定されていますが、条例で重ねて規制する自治体が多くあります。
現行の法令でも対応可能である客引き行為をここまで規制をするということには意味があります。
客引き行為の定義や風営法以外で規制される違反行為を把握しておけば、法令違反を犯すリスクを下げることができます。

風営法における客引き行為等

風営法22条では「客引きをすること」「客引きをするための立ちふさがりとつきまとい」が客引き行為等とされ、禁止事項となっています。

客引き行為等を行った場合は、指示処分等の前置なしで40日以上6月以上の営業停止命令に加えて罰則として6月以下の懲役又は100万以下の罰金です。
また、両罰規定があるため、客引き行為等を行った者だけではなく営業者も同様に罰せられます。
令和3年度に警視庁の管轄内で客引きやスカウト等で検挙された人は400人以上で、前年度よりも増加傾向となっています。

客引きスカウトの検挙状況
警視庁HP 客引き・スカウトの検挙状況と検挙事例から引用

客引きをすること(風営法22条1項1号)

「客引きとは、相手方を特定して営業所の客となるように勧誘すること」(解釈運用基準第17-9)とされています。
「客引き行為」となるポイントは以下の通りです。

  • 営業所の客となるよう勧誘する
  • 営業者の側から行為を行う
  • 相手を特定する(不特定にチラシ配布や看板を掲出するなどは可)
  • 相手方の人数を問わず現実に客にならなくても該当する
  • ナンパ等を装っても客引きにあたる可能性がある
  • 単に店舗の前で立っているだけなら客引きにあたらない

客引きをするための立ちふさがりとつきまとい(風営法22条1項2号)

「客引きをする目的をもって、公共の場所で人の身辺に立ちふさがったりつきまとうこと」も禁止事項とされています。
公共の場所とは、道路などは当然ですが、駅構内や雑居ビル内も含まれるのが一般的です。
スカウトやナンパと偽ってもビラを所持しているなど、客観的に見て客引きをする目的だと認められれば「客引きをする目的をもって」という要件に該当します。

風営法の規制の限界

風営法で客引きの目的として対象となる業種は、風俗営業を営む店や深夜に酒類を提供する飲食店、店舗型性風俗店などに限定されます。
しかし、昨今では上記の解釈では対応できないような客引き行為や、様々な業種のお店を対象とした客引き行為が行われているという実態があります。

条例への委任

風営法だけでは対処しきれない客引き行為に関して、都道府県によっては条例を制定して規制しています。
東京都の例になりますが「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不当行為等の防止に関する条例」(略称:迷惑防止条例)を制定し、その中で不当な客引き行為等をしてはならないと規定しています。

(不当な客引行為等の禁止)

第七条 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 わいせつな見せ物、物品若しくは行為又はこれらを仮装したものの観覧、販売又は提供について、客引きをし、又は人に呼び掛け、若しくはビラその他の文書図画を配布し、若しくは提示して客を誘引すること。

二 売春類似行為をするため、公衆の目に触れるような方法で、客引きをし、又は客待ちをすること。

三 異性による接待(風適法第二条第三項に規定する接待をいう。以下同じ。)をして酒類を伴う飲食をさせる行為又はこれを仮装したものの提供について、客引きをし、又は人に呼び掛け、若しくはビラその他の文書図画を配布し、若しくは提示して客を誘引すること(客の誘引にあつては、当該誘引に係る異性による接待が性的好奇心をそそるために人の通常衣服で隠されている下着又は身体に接触し、又は接触させる卑わいな接待である場合に限る。)。

四 前三号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ちふさがり、身辺につきまとう等執ように客引きをすること。

五 次のいずれかに該当する役務に従事するように勧誘すること。

イ 人の性的好奇心に応じて人に接する役務(性的好奇心をそそるために人の通常衣服で隠されている下着又は身体に接触し、又は接触させる卑わいな役務を含む。以下同じ。)

ロ 専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる役務(に該当するものを除く。)

六 性交若しくは性交類似行為又は自己若しくは他人の性器等(性器、こう門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせる行為に係る人の姿態であつて性欲を興奮させ、又は刺激するものをビデオカメラその他の機器を用いて撮影するための被写体となるように勧誘すること。

七 前二号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ちふさがり、身辺につきまとう等執ように役務に従事するように勧誘すること。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不当行為等の防止に関する条例

客引き行為等の態様が風営法と比較して具体的に例示され、「公共の場所」「何人も」「不特定の者に対し」という文言が追加されており、規制範囲が拡張されています。

東京23区で客引き行為等を規制する条例

こちらも東京都の例になりますが、迷惑防止条例があるにもかかわらず、違反行為が後を絶たないということで特別区独自で条例を制定しています。
対象業種や刑罰の有無等、各区によって若干相違点がありますが、23区のうち13区で客引き行為等を規制する条例が制定されています。
たいていの自治体では、以下のような行為を具体的に例示して規制しています。

  • 客引き行為
  • 勧誘行為(スカウト)
  • 客待ち行為
  • 受け入れ行為
  • ビラやチラシの掲示、配布行為
対象業種を限定する条例(東京23区)

区によっては、客引き行為等を行わないことを誓約する書類を提出した飲食店等に対して、ステッカーを交付して公表するといった取り組みをしています。
荒川区、千代田区、渋谷区以外の特別区では、指導、警告、勧告や公表などを経ても改善されない場合は過料が科されます。

最後に

悪質な客引き行為でぼったくり店に誘導したり、有害業務へのスカウト行為に対しては厳しい規制がされるのは当然のことです。いわゆるフリーの客引き業者などは反社会的勢力とのつながりも懸念されます。
一方で適切な営業活動の一環として行う客引き行為等まで規制してしまうことは「営業の自由」との兼ね合いや、街の活気を奪うという側面がないわけではありません。
現状のルールを把握した上で適切な営業を行っていくことが大事です。

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