新宿や渋谷といった繁華街でよく見かける、派手な装飾を施したり、キャッチーなメロディを発しながら走行する大型トラック。このような広告宣伝車(以下、アドトラック)に対して、東京都は規制を強化する方針だという報道がなされました。
ホストクラブやキャバクラなどの風俗営業は、アドトラックを使用して広告活動を行うことが多くあります。
しかし、風俗営業においては、広告又は宣伝を行う際には、一定の制約を受けます。
アドトラックと風営法とのかかわり、他の法令の規制について確認してみましょう。

アドトラックが受ける規制

東京都でアドトラックを使用して広告又は宣伝を行う場合は、風営法の他、様々な法令の規制に対応する必要があります。

風営法における広告又は宣伝の規制

ホストクラブやキャバクラなどの風俗営業において、アドトラックを使用して広告又は宣伝を行う場合は、風営法の規定を確認する必要があります。
風営法では風俗営業と性風俗特殊営業を明確に分けて規制しています。
風俗営業と比較して性風俗特殊営業は、風俗環境を害する程度が大きいこと、青少年に悪影響を及ぼすおそれがあることから厳しい規制となっています。

風俗営業の広告又は宣伝の規制

風俗営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第16条

広告主が風俗営業者である場合は、営業所周辺で清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝を行わなければ、それ以外は特に規制がありません。
ホストクラブやキャバクラなどがアドトラックを使用して広告宣伝する場合は、卑猥な表現を使用したり、大音量で走行するなどしなければ、この規定には該当しないでしょう。

パチンコ営業に対しては、上記に加えて過度に射幸心をそそらないようにとの通達が出ています。
出玉のアピールやパチンコ台やパチスロの設定示唆などは射幸心をそそるおそれがあります。

パチンコ店に対する広告宣伝に関しては、昨年末に新たな解釈の通達が出されています。→パチンコ営業における広告及び宣伝の取扱いについて
これを受けて業界団体もガイドラインを作成して、自粛していた出玉ランキングなどを発表しているお店もあります。

性風俗特殊営業の広告又は宣伝の規制

ファッションヘルスやデリヘルといった性風俗特殊営業の場合は、広告又は宣伝の規制が厳しくなります。
下記の風営法27条の2は、店舗型性風俗営業に対する規定となりますが、無店舗型性風俗特殊営業(デリヘル等)に対しても同様の規定があります。
性風俗特殊営業者は、警察に届出をしている営業以外の広告又は宣伝を行うことは認められません。
求人広告であっても広告又は宣伝に当たるとされます。


新聞や雑誌、案内所や風俗広告サイトなどに広告を出す際に、届出確認書を求められるのはそのためです。
広告業者には風営法の規定は及びませんが、広告主が無届と知った上で広告を行うと、共犯とされることがあります。

前条第一項の届出書を提出した者(同条第四項ただし書の規定により同項の書面の交付がされなかつた者を除く。)は、当該店舗型性風俗特殊営業以外の店舗型性風俗特殊営業を営む目的をもつて、広告又は宣伝をしてはならない。

 前項に規定する者以外の者は、店舗型性風俗特殊営業を営む目的をもつて、広告又は宣伝をしてはならない

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第27条の2

さらに広告又は宣伝を行ってはいけない制限地域と広告の方法に関する規制が風営法28条で規定されています。
こちらの規定も無店舗型性風俗営業に対して準用されています。

店舗型性風俗特殊営業を営む者は、前条に規定するもののほか、その営業につき、次に掲げる方法で広告又は宣伝をしてはならない。

 次に掲げる区域又は地域(第三号において「広告制限区域等」という。)において、広告物(常時又は一定の期間継続して公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。以下同じ。)を表示すること。

 第一項に規定する敷地(同項に規定する施設の用に供するものと決定した土地を除く。)の周囲二百メートルの区域

 第二項の規定に基づく条例で定める地域のうち当該店舗型性風俗特殊営業の広告又は宣伝を制限すべき地域として条例で定める地域

 人の住居にビラ等(ビラ、パンフレット又はこれらに類する広告若しくは宣伝の用に供される文書図画をいう。以下同じ。)を配り、又は差し入れること。

 前号に掲げるもののほか、広告制限区域等においてビラ等を頒布し、又は広告制限区域等以外の地域において十八歳未満の者に対してビラ等を頒布すること。
 前条及び第五項に規定するもののほか、店舗型性風俗特殊営業を営む者は、その営業につき、清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第28条第5項、8項

この規定により、アドトラックは「広告物」とされており、広告制限地域では広告又は宣伝を行うことはできません。広告制限地域は、東京都の条例で広範囲に指定されていますので、性風俗特殊営業においてはアドトラックを使用しての広告又は宣伝は、ほぼ不可能といっても過言ではありません。

拡声器に対する規制

アドトラックは、スピーカー等を使用して大きな音量を発して走行しています。
東京都では都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)において屋外での拡声器使用を禁止しています。
アドトラックでスピーカー等を使用する場合は、この条例の対象となりますが、商業宣伝を目的として下記の制限事項・遵守事項を守って使用すれば適用除外となります。

商業宣伝を目的とする拡声器使用の制限事項
  • 第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域 並びに その周囲30m以内(遵守事項を守り、自動車その他の方法により移動しながら使用する場合を除く)
  • 学校または病院の敷地の 周囲30m以内
  • 航空機から機外に向けて使用してはならない
商業宣伝を目的とする拡声器使用の遵守事項
  • 午後7時から翌日午前8時までの間は使用しない
  • 使用時間は1回10分以内とし、1回につき15分以上の休止時間をおく(同一の場所で使用する場合に限る)
  • 幅員5m未満の道路において使用しない
  • 間隔は50m以上とする(携帯用の拡声機を除く)
  • 地上10m以上の位置で使用しない
  • 地上5m以上の位置で使用するときは、道路方向に平行にし、かつ、水平方向から下方30度から45度までの角度で使用する(携帯用の拡声機を除く)
  • 拡声機から発する音量は、別表に掲げる音量(規制基準) の範囲内とする

道路使用許可

アドトラックは道路を使用して広告を行うため、通常の道路使用とは異なる使用方法といえます。
そのような場合は管轄の警察署で道路使用許可を受ける必要があります。

次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない。

 道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人

 道路に石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者

 場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者

 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者

道路交通法第77条

アドトラックによる広告宣伝は、道路交通法77条4号に該当するので運行するエリアを管轄する警察署に道路使用許可申請を行う必要があります。
管轄の警察署によって変わりますが、申請してから許可となるまで2~7日程度かかり、申請手数料として2,500円前後必要になります。

東京都屋外広告物条例

東京都では東京都屋外広告物条例により、広告宣伝車(アドトラック等)を運行する際に、使用する広告デザインの審査を受ける必要があります。この審査は、公益社団法人東京屋外広告協会に委託されており、公序良俗に反しない等の審査基準に則って審査されます。→広告宣伝車の審査基準
審査期間の目安は7日間で、デザイン1点につき10,000円の審査料が必要となりますが、準備等も含めて1カ月程度はみておいたほうがよいでしょう。
しかし、この審査を受ける必要がある広告宣伝車は、東京都内でナンバー登録を受けている車両のみとなります。東京都外でナンバー登録を受けている車両は審査の対象外なので、デザイン審査を受ける必要がありません。そのため、都内で走行しているアドトラックは、ほぼ全てが他県ナンバーといわれています。
これではわざわざ審査を課している意味がありません。
冒頭の規制強化とは、他県ナンバーの車両についてもデザイン審査の対象とするといった動きのことです。求人サイトに関しては風営法の規制には抵触しませんが、デザイン審査は受ける必要があります。
審査基準を確認する限り、ホストクラブやキャバクラ、求人サイトの広告がこの審査をパスできるかのかというと、かなり未知数です。
今後、他県ナンバーの車両までデザイン審査の対象となった場合は、現状のままでは東京都でアドトラックを見ることがなくなるかもしれません。

※2024年7月1日より他県ナンバーの車両についても規制対象となる見込みです。

最後に

以上のようにアドトラックを使用して広告又は宣伝を行う場合、風営法だけではなく様々な法令の規制を受けることになります。もちろん費用もそれなりにかかります。(ホストクラブなどでは費用負担者の問題もあるようですが…)
今後はどのようになっていくのか、規制の推移に注目していきたいと思います。

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