接待行為と似たような概念で“遊興行為”というものがあります。
営業者側の積極的行為によって客に遊び興じさせる』と警察庁の「解釈運用基準」に書いてありますが、接待行為同様、いまいちわかりづらい概念です。
しかし、許可を受けずに遊興行為を行ってしまうと摘発の対象となることがあります。
営業形態ごとの遊興行為の概念、遊興行為を行ってはいけないケースを解説します。

風俗営業における遊興

風営法において「遊興」は、キャバクラなどの社交飲食店(風俗営業1号許可)と特定遊興飲食店営業の許可を受ける際に出てくる概念です。
営業形態によって「遊興」の概念のニュアンスが変わりますので確認しましょう。

社交飲食店の場合

風俗営業1号許可(社交飲食店)とは風営法において下記のように定義しています。

キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食させる営業

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条1項1号

キャバクラなどの社交飲食店における遊興とは、「男女間における享楽的雰囲気を楽しむこと」とされています。接待の概念は「歓楽的雰囲気を醸成する方法のよるもてなし」ということですが、遊興は接待することにより、お客さんを遊ばせ、享楽的雰囲気を享受させるということになります。
風俗営業1号許可における遊興は、あくまで接待行為が存在した上で、結果的に「男女間における享楽的雰囲気を楽しむこと」ということが遊興とされます。

特定遊興飲食店営業の場合

特定遊興飲食店営業とは平成27年の改正で新たに設けられた営業で、以下のように定義されています。

この法律において「特定遊興飲食店営業」とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前6時後翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものをのぞく)

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条11項

簡単にいうと深夜に酒類を提供して客に遊興させるナイトクラブやショーパブのようなお店です。
特定遊興飲食店営業における遊興とは、「営業者側の積極的な行為によってお客さんを遊び興じさせること」とされています。
風俗営業1号許可と違い、特定遊興飲食店営業では接待行為はできませんので主に以下のような鑑賞型サービスと参加型サービスが遊興行為となります。

参加型サービスと鑑賞型サービス

鑑賞型サービス・・・ショーや演奏の類を客に見聴きさせるサービス

ショー等を鑑賞するように客に勧める行為、実演者が客の反応に対応し得る状態で演奏・演技を行う行為等は積極的な行為に当たる。
これに対して、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような場合は積極的な行為には当たらないい。

参加型サービス・・・客に遊戯、ゲーム等を行わせるサービス

遊戯等を行うよう客に勧める行為、遊戯等を盛り上げるための言動や演出を行う行為は積極的な行為に当たる。
これに対して、客が自ら遊戯を希望した場合に限ってこれを行わせるとともに、客の遊戯に対して営業者側が何らの反応も行わないような場合は、積極的な行為に当たらない。

具体的には次のような行為が『客に遊興させること』に当たるとされています。

遊興行為にあたる行為
  1. 不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為
  2. 特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
  3. 客にダンスさせる場所を設けると共に、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
  4. のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
  5. カラオケの装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為
  6. バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為

これに対し、以下の行為で上記1~6の行為に該当しないものは、『客に遊興させる』にあたらないとされます。

遊興行為に当たらない行為
  1. いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を使用させる行為
  2. カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクや歌詞カードを手渡し、又はカラオケ装置を作動させる行為
  3. いわゆるガールズバー、メイドカフェ等で、客にショーを見せたりゲーム大会に客を参加させたりせずに、単に飲食物の提供のみを行う行為
  4. ボーリングやビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に自由に使用させる行為
  5. バー等でスポーツ選手の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を行う場合を含む)

遊興行為の線引き

店側からの不特定の客に対する積極的な行為がなければ“遊興行為”には当たりません。
例えば、スポーツバーなどで海外のサッカーの試合のTV中継を流すだけなら問題ありませんが、お店側が不特定のお客さんに対して応援を促したり、盛り上げたりしてしまえば、該当する可能性が高いでしょう。

必要な許可を受けましょう

遊興行為に関しては、申請書に遊興をさせる場合はその内容と時間帯を記載する必要があることからも、遊興をさせる時間帯に気を付ける必要があります。
深夜に遊興行為をさせるためには、特定遊興飲食店営業許可を受けていないと無許可営業となってしまいます。
また、接待行為を伴った上で遊興行為をさせる場合は、風俗営業1号許可を受けていなければなりません。
営業するお店でどの許可を受ける必要があるのか迷うことがあればぜひご相談ください。