キャバクラやガールズバーでは、店員さんからお酌のサービスを受けることは少なくありません。
ですがこの行為、お店が該当する許可(風俗営業1号)を得ていなければ、“接待行為”として摘発される可能性があるのです。
隣に座ったらダメだけどカウンター越しならOK、というような判断基準が広まっていますが、これは正確ではありません。
世の中では接待行為に関して様々な説があふれていますので、法律の根拠や具体的な例を交えて解説したいと思います。

風営法における接待行為とは?

接待行為に関しては、風営法第2条で規定されています。

この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条3項

歓楽的雰囲気を醸し出す方法といわれても全くピンときませんね。
そこで警察庁から公表されている「解釈運用基準」という通達を見てみると、具体的な説明があります。
解釈運用基準はこちら
解釈運用基準では、定義として『慰安や歓楽を期待して来店する客に対して営業者側の積極的な行為として特定の相手にサービスする』こととされています。

具体的な接待行為

解釈運用基準では、以下の6つの行為を具体的に接待行為として例示しています。

具体的な接待行為の例示(解釈運用基準第4-3)
  1. 談笑・お酌等
    特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供する行為。
  2. ショー等
    特定少数の客に対して、専ら客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為。
  3. 歌唱等
    特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを推奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為。
  4. ダンス
    特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為。客の身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と踊る行為。
  5. 遊戯等
    特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
  6. その他
    客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為。客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為。

接待行為の判断基準

ある行為が接待行為に当たるかという判断基準は、「特定の客に対して、継続して上記に例示したような行為をしていて、その行為が通常のサービスを超えているか否か」と考えられます。
通常のサービスを超えるとは、お客の下心を刺激するサービスで、飲食目的以外での来店を促すような行為は接待行為に該当すると思っていただければよいと思います。
例えばキャストを指名できる場合、指名を受ければ特定の客に対してサービスを行うことになり、キャストの指名と飲食は目的が異なりますので、風俗営業1号許可を受けていないお店で指名制があれば警察は疑義を抱くでしょう。
また、ガールズバーはカウンター越しの接客だから接待行為ではない、という理屈を聞きますが、昭和39年改正以前は条文で「客席で客の接待」とされていたところ、この改正で「客席で」の文言が削除されました。
このことからもカウンター越しだから接待ではないという解釈は通用しないと思っていたほうがよいでしょう。

接待行為の主体

接待行為の主体とは、誰が接待行為を行うかということです。
通常は営業者や雇用しているキャストということになりますが、パートや派遣などの雇用形態にかかわらず、営業者との契約等の下、店内で接待行為を行う者は全て接待行為の主体となります。同性、異性も問われませんのでゲイバーなどでも無許可営業のリスクはあります。
最近ではSNS等で客を呼び出し、お店に客を装って来店する行為でも店の営業者との結託が認められれば無許可で接待行為を行ったとされた事例があります。

摘発されないために

もし風俗営業1号の許可を受けておらず、警察に“接待行為”と判断されてしまった場合は「無許可営業」ということになります。
「無許可営業」は風営法で最も重い罰則である、200万以下の罰金若しくは2年以下の懲役又は併科が科せられます。さらに、5年間は新たに風営法の許可を取得することはできません。
警察は営業の実態を見て判断しています。カウンター越しだとしても、横に座っていないとしても、取り締まる側が判断したら“接待行為”です。この際の警察への釈明は通用せず、問答無用で処分が下されます。
もしご自分のお店でキャストが上に挙げた類の“接待行為”を行っていると思われましたら、常態化する前に防止するか、接待行為が可能な許可を受ける必要があります。
“接待行為”の基準は法令や解釈を見ても非常に曖昧ですが、警察が“接待行為”を疑うポイントはある程度決まっています。ポイントを押さえておけば摘発のリスクはかなり減らすことができます。

弊所では適切な許可取得のアドバイスも行っています。お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。