風俗営業では賞品の提供に関して様々な規定があります。
よく耳にするニュースで、パチンコ店での「自社買い」と呼ばれるものや、アミューズメントカジノでの換金行為です。
最近では都内のパチンコ店への営業停止命令、大阪でも賭博罪でポーカーバーが摘発されて話題になっています。
知らずに違法行為を行っていたとならないよう、商品提供について解説したいと思います。

風営法の規定

風営法では賞品の提供に関するルールが定められています。

第二条第一項第四号の営業を営む風俗営業者は、国家公安委員会規則で定める遊技料金、賞品の提供方法及び賞品の価格の最高限度(まあじやん屋を営む風俗営業者にあつては、遊技料金)に関する基準に従い、その営業を営まなければならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第19条

4号営業とよばれるパチンコ店に関しては、国家公安委員会規則に従っていれば賞品の提供が認められています。(景品と呼ばれることが多いのですが、風営法の規定にあわせて賞品と記載しています)

風営法でパチンコ店等が規制される前から慣習として賞品が提供されていたこと、市場規模が大きいのでパチンコに関しては規制が難しいという事情があります。

賞品の提供ができない営業

パチンコ店等に対して、雀荘やゲームセンターなどの5号営業には下記の規制があります。

第二条第一項第四号のまあじやん屋又は同項第五号の営業を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第23条2項

つまり、遊技の結果に応じて賞品を提供してもよいとされる営業はパチンコ店等だけです。
同じ4号営業の雀荘、5号営業のゲームセンターやアミューズメントカジノなどでは賞品の提供は禁止されています。

クレーンゲーム

ゲームセンターのクレーンゲームでは賞品を獲得することができます。
これは遊技の結果に応じて賞品を提供しているのではないかと思うでしょう。
しかし、警察庁が発出している風営法の解釈運用基準では適法と解釈されています。

遊技の結果が物品により表示される遊技の用に供するクレーン式遊技機等の遊技設備により客に遊技をさせる営業を営む者は、その営業に関し、クレーンで釣り上げるなどした物品で小売価格がおおむね1,000円以下のものを提供する場合については法第23条第2項に規定する「遊技の結果に応じて賞品を提供」することには当たらないものとして取り扱うこととする。
(解釈運用基準第17-10(3))

つまりクレーンゲームでは、1,000円以内の賞品提供であればお目こぼしをするという解釈です。

ただし、これはクレーンゲームに限定された解釈であるという点に注意が必要です。

違法となり得るケース

風営法による商品提供のルールは上記の通りですが、どのような場合に違法となるのでしょうか。
パチンコ店とゲームセンターなどの5号営業のケースに分けて解説します。

パチンコ店

パチンコ店には、風俗営業者の禁止事項に加えて個別の禁止事項が規定されています。

第二条第一項第四号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。

 現金又は有価証券を賞品として提供すること。

 客に提供した賞品を買い取ること。

 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。
 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第23条

上記の行為を行ってしまうと風営法違反や、場合によっては賭博罪となる可能性があります。

現金又は有価証券

現金とは紙幣と硬貨のことです。
また、有価証券とは小切手や商品券、宝くじや馬券なども該当します。
現金や有価証券を賞品として提供することは当然に違法となります。
ただし、金地金は有価証券ではないので賞品として提供可能とされています。

賞品の買い取り

買い取りとは、提供した賞品を現金か有価証券と交換することとされています。
提供した賞品を現金で買い取ってしまえば、現金を提供したことと変わりませんので違法となります。
ただし、営業者と無関係の第三者が買い取ることまでは禁止されていません。
パチンコ店では、賞品を現金で買い取ってもらえる場所があることは誰もが知っています。
いわゆる「3店方式」という運用がなされています。
3店方式が適法という司法判断は出ていませんが、行政の解釈としては認められているとされます。

自社買い

パチンコ店で自社買いとして摘発されるケースは風営法23条2項違反を指しています。
つまり、提供した賞品を自ら買い取ったということです。
買い取り金額は数千万円ということもありますが、多くの場合が数千円から数万円です。
買い取り金額の多寡は問われません。
数千円の買い取りでも前置処分なしで、いきなり営業停止命令です。
自社買いをしてしまう理由は様々ですが、「3店方式」から外れた運用を行うと直ちに違法とされます。

ゲームセンターやカジノバー

ゲームセンターやカジノバーといった5号営業では、そもそも遊技の結果に応じて賞品を提供できません。
つまり、ゲームセンターやカジノバーでメダルやチップを賞品や現金と交換する行為は違法です。
賞品の金額は関係ないので、ドリンク券などでも商品の提供に当たります。
ただし、あくまで遊技の結果に応じての賞品提供がNGなので、無償提供やドリンク券の販売はOKです。

トーナメント

ゲーム大会やアミューズメントカジノなどのトーナメントでの賞金提供はどうでしょうか。
例えば参加費を徴収して優勝した人が賞金として総取りといった運用は賭博に当たる可能性があります。
賭博とは、「勝敗が偶然の事情で決まる事項について金銭やその他財産の得喪を争うこと」と定義されます。
ゲームやポーカーなど、技量によって勝敗が左右される要素は多分にあります。
しかし、運による偶然の要素が少しでもあれば偶然の事情に当たるとされています。
つまり、参加費を原資とした賞金を争うトーナメントは、賭博に当たる可能性が高いといえます。
賭博に当たる場合、参加者はもちろん、お店も賭博を行う場所を提供したとして罪に問われる可能性があります。

第三者の賞品提供

トーナメントを行う場合でも賞金や賞品がスポンサーなどの第三者が提供しているケースがあります。
この場合は賭博の定義を考慮すると、賭博行為に該当する可能性は低いでしょう。
また、ポーカーバーなどは、獲得したチップをお店に預けて、チップを管理する第三者機関から還元されるといった運用をしているお店もあります。
ポーカーなどは海外でも人気なので世界的な大会が開催されます。
そのような大会のサポート費といった名目で提供されることもあるようです。
こういった運用は賞品の提供や賭博行為に該当するかという判断は非常に難しいものです。
お店の事情にあわせて専門家や関係機関との慎重な協議の下、行うべきでしょう。

最後に

風俗営業におけるゲームセンターやアミューズメントカジノにおいて、賞品の提供は最も気を使うところです。
風営法違反だけではなく、刑法の賭博罪などにも該当する可能性があります。
知らなかったとう言い訳は通用しません。
賞品の提供に関して判断に迷うことがあればご相談ください。

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