風俗営業を行っている際に、外国人を雇用する場合は注意が必要です。
なぜなら、風営法だけではなく様々な法令に気を使わなければならないからです。
また、既に外国人を雇用していて、新たに風俗営業を始める場合も気を付けましょう。
適切な在留資格で働いている従業員が不法就労となってしまうことがあります。
日本で働く外国人は令和4年の統計で約182万人です。
今後も外国人労働者の増加が見込まれています。
風俗営業を行う際の外国人雇用はリスクを伴うことが少なくありません。
外国人の雇用に関してどんな点に注意すればよいか解説します。
入管法による規制
外国人の方は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)で定められている在留資格の範囲内でのみ、活動が認められています。
入管法では29種類の在留資格が定められていますが、風俗営業に従事可能なものは限られます。
例えば興行ビザという在留資格は、外国人パブなどの風俗営業とかかわりが深いものです。
しかし、この場合はあくまで「ダンサー」としての活動が認められているにすぎません。
また、週28時間以内であれば在留資格の範囲外でも包括的な就労が認められる資格外活動があります。
しかし、風俗営業等は資格外活動として働くことは認められていません。
(4) 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないこと。
イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動
風俗営業等に従事できる外国人
風俗営業等に従事できる外国人は、下記の在留資格を有している者だけです。
- 永住者(特別永住者)
- 定住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
いわゆる「身分系」と呼ばれる在留資格で、日本人同様に就労が可能です。
つまり、原則的にはどんな仕事にも就くことが可能です。
もちろん、風俗営業許可の申請者や管理者となることも可能です。
風俗営業許可申請ができる外国人
外国人が風俗営業の申請者となる場合はどうでしょうか。
風俗営業許可を受けるためには人的要件が定められています。
欠格事由に外国人だからというものはありません。
しかし、日本で滞在するための適切な在留資格を有している必要があります。
そのため、下記の身分系の在留資格か一部の就労系資格を有していなければ申請者にはなれません。
- 永住者(特別永住者)
- 定住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 経営・管理ビザを有する者(管理者になることや接客業務はNG)
法人で申請する場合は、すべての役員について上記の該当性が問われます。
入管法における風俗営業等とは
外国人が風俗営業に従事するには、上記の身分系資格を有していなければなりません。
キャバクラのキャストなどだけでなく、バックヤードの従業員も含まれます。
つまり、エンジニアや通訳など、直接的な業務を行っていなくても該当することに注意が必要です。
資格外活動として認められない風俗営業等に含まれる具体的な営業は下記の通りです。
風俗営業許可
風俗営業1号許可 | キャバクラやホストクラブなど接待を伴う飲食店 |
風俗営業2号許可 | 営業所の照度を10ルクス以下で営む飲食店 |
風俗営業3号許可 | 5㎡以下の客席を設けて営む飲食店 |
風俗営業4号許可 | パチンコ店、雀荘など射幸心をそそるおそれのある遊技場 |
風俗営業5号許可 | ゲームセンター、アミューズメントカジノなどの遊技場 |
パチンコ店やゲームセンターも風俗営業です。
性風俗関連特殊営業
店舗型性風俗特殊営業 | ソープランド、ファッションヘルス、ラブホテルなど |
無店舗型性風俗特殊営業 | デリヘル、アダルトショップなど |
映像送信型性風俗特殊営業 | アダルト映像を販売、配信する営業 |
店舗型電話異性紹介営業 | テレクラなど |
無店舗型電話異性紹介事業 | マッチングアプリなどを営む営業 |
アダルトショップやマッチングアプリなどの営業は、直接的な業務に従事しないケースが多くあります。
しかし、在留資格で認められた就労業務であっても風俗営業等に従事していることになります。
特定遊興飲食店営業
特定遊興飲食店営業とは、深夜に酒類を提供して遊興させる営業です。
具体的にはナイトクラブやショーパブなどが該当します。
特定遊興飲食店営業は「風俗営業」にカテゴライズされる営業ではありません。
しかし、入管法では風俗営業等に含まれるとされます。
そのため、特定遊興飲食店営業においても外国人の雇用が制限されます。
深夜における酒類提供飲食店営業
深夜における酒類提供飲食店営業も「風俗営業」ではありません。
しかし、こちらは特定遊興飲食店営業と違い外国人の雇用はOKです。
ただし、ガールズバーやコンカフェなどは注意が必要です。
風俗営業1号許可を受けずに実質的に接待を伴う営業をしているケースが多くあるからです。
もし、接待を伴う飲食店と判断された場合、後述する不法就労助長罪に問われることになります。
さらに風営法の無許可営業にも該当するので非常に重い罪に問われます。
ガールズバーやコンカフェなどでは営業の実態をしっかり把握した上で雇用を検討しましょう。
違法に外国人を雇用した場合
上記の規定を守らずに外国人を雇用してしまうと「不法就労助長罪」に問われてしまいます。
これは、本来従事してはいけない外国人を雇用したり斡旋することで、入管法に規定されています。
不法就労助長罪の罰則は、3年以下の懲役若しくは300万以下の罰金又は併科です。
雇用者だけでなく、外国人の在留資格の更新ができなくなり、退去強制の対象になることもあります。
外国人を雇用する場合は、在留カード、パスポートの提示を求め、雇用しても良いかということを必ず確認する必要があります。
また、風営法でも接待行為に従事させる場合は国籍確認が義務となっています。
日本国籍でない者を雇用するときは在留資格、在留期間、資格外活動の有無を確認しなければなりません。
さらに確認した記録を作成・保存することまで求められています。
最後に
風俗営業において外国人の雇用はリスクを伴うことがあります。
風営法だけでなく、入管法の規定まで把握しておかなければなりません。
入管法は風営法と比較しても非常に厳しい法律です。
一歩間違えるとたちまち違反行為となってしまう可能性があります。
しかし、外国人ならではの魅力や人出不足もあり、外国人の雇用にはメリットもあります。
適切に外国人を雇用したい場合は弊所までご相談ください。
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