水銀廃棄物の産業廃棄物許可の表記に関する経過措置が、2022(令和4)年9月30日をもって終了しました。
それまでは、既に実績があれば変更届や申出書を出すことで水銀廃棄物の取り扱いが可能でしたが、10月1日からは変更許可申請を経ないと水銀廃棄物を収集運搬することができません(自治体により取り扱いが異なることがあります)。
変更許可申請になると、提出する書類や申請にかかる費用が大幅に変わってきます。
水銀廃棄物を取り扱う予定のある方は、ここでもう一度どんな手続きが必要か確認してみましょう。
水銀廃棄物の経緯
水銀はその優れた性質から、体温計や蛍光灯など、様々な工業製品で使用されていました。日本でも昔は、水銀は廃棄物ではなく、回収して輸出する有価物という考え方が主流でした。
しかし、水銀には毒性があり環境破壊や健康被害を引き起こすことが知られ、懸念されるようになります。それにより世界的規模で水銀の排出規制や代替品の製造などが求められるようになっていきました。
このような流れは石綿やPCBとかなり似通っています。
水俣条約
「水俣病」。社会科の授業やニュースを通してみなさんご存知かと思いますが、メチル水銀化合物の魚介類汚染によって身体障がいを引き起こした日本の代表的な公害病です。この水俣病を経験した日本が主導し、2013年に採択されたものが「水銀に関する水俣条約」です。この条約では、地球規模で水銀製品の製造や輸出入を制限して環境破壊を防止していくことを定め、巨大排出国である中国やアメリカなども合意して、2017年に発効されました。
廃棄物処理法での扱い
この水俣条約の発効に伴い、水銀廃棄物の増加が見込まれることから廃棄物処理法施行令が改正されました。
この中で、水銀廃棄物として定義されたものが「水銀使用製品産業廃棄物」「水銀含有ばいじん等」「廃水銀等」の3つです。
・水銀使用製品産業廃棄物(普通産廃)
蛍光灯や温度計、ボタン電池など水銀を使用した製品が廃棄物になったもの
・水銀含有ばいじん等(普通産廃)
一定の数値の水銀やその化合物で汚染された燃え殻、鉱さい、ばいじん、汚泥、廃酸、廃アルカリ
(特定施設から排出され、一定の数値を超える場合は特別管理産業廃棄物)
・廃水銀等(特別管理産業廃棄物)
水銀使用製品を製造する施設などの特定施設において生じた廃水銀又は廃水銀化合物
定義に関しては、環境省が公表しているこちらの資料が大変わかりやすいです。→環境省資料
許可を受ける際の注意点
上記のように3つの定義がなされた水銀廃棄物ですが、新たに産業廃棄物の品目として追加されたのは、特別管理産業廃棄物としての「廃水銀等」です。
産業廃棄物の法規分類には、「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」という許可品目はありません。この2つは許可品目ではなく、許可を受ける際の条件のようなものになります。
例えば、蛍光灯を収集運搬したいときはどのような許可品目が必要になるのでしょうか。
まずは蛍光灯を構成している部品を考えてみましょう。一般的な蛍光灯はガラスと金属の混合物ですので、必要な許可品目は「金属くず」と「ガラス・コンクリート・陶磁器くず」です。その上で「水銀使用製品産業廃棄物」を含むという条件を加える必要があります。この条件を加えるためには、破損防止や他の物と区分するような措置を講じている必要があります。具体的には、蛍光管を緩衝材で梱包し、専用の容器を用意して収集運搬を行う体制が整っていれば問題ありません。
最後に
以前の記事で書いたアスベストも、当初はその有用性から社会で重用されましたが、健康被害がわかってからは有害な産業廃棄物として厳格な基準のもとで廃棄されています。
今後は、多数が耐用年数を迎える太陽光パネルの廃棄も問題となってくるでしょう。
今回紹介した水銀廃棄物をはじめ、有害な産業廃棄物に必要な許認可についてはお気軽にご相談ください。
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