以前から問題になっていましたが、最近また報道で「違法ヤード問題」を目にする機会が増えてきました。
一部の心無い業者によってイメージが悪化していますが、ほとんどの業者は適切に営業しています。
違法ヤードにおける問題点を解決して適切にヤードを営業するためには、どのような行政手続きが必要となるのかを解説します。

ヤードとは?

一口にヤードといっても様々な種類のヤードがあります。
警察白書で確認すると、「ヤードとは、周囲を鉄壁等で囲まれた作業所等であって、海外への輸出等を目的として、自動車等の解体、コンテナ詰め等の作業に使用していると認められる施設のこと」と定義されています。
不適切なヤードは、盗難自動車の解体、違法に輸出するための作業場となっていたり、不法滞在の外国人が多く集まるなど犯罪の温床とされています。
その他、自動車等に限らず、電化製品や金属スクラップ全般を集めているようなヤードもあります。

ヤードによる問題

ヤードによって引き起こされる可能性のある問題はいくつかあります。
通常、ヤードの多くは矢板と呼ばれる背の高い板状の杭で覆われているため、内部の確認ができずに問題が発覚しにくいことが多くあります。
しかし、不適切なヤードが作られると以下のような悪影響が及び街の価値が下落し、地価の低下などにもつながります。

周囲への悪影響

不適切なヤードは周囲の環境に対して様々な悪影響を与えます。
特に住宅地にヤードが建設されると甚大な被害が出る可能性があります。

騒音・振動

ヤードには自動車やスクラップなどが搬入されるため、大型車が使われることが多くあります。
車の走行音はもちろん、道路を走行した際の振動も乗用車と比較して非常に大きくなります。
また、ヤード内には通常、解体を行うための重機がありますので、重機による解体音や振動も発生します。
法律によって数値で規制されていますが、不適切なヤード業者が適切な騒音・振動対策をしているケースは多くありません。

環境への悪影響

自動車や家電製品を解体した場合、有害な物質が流出する可能性があります。
自動車には油やガソリン、電化製品にはフロンやヒ素などが使われいることがあります。ガソリンなどの油が地下に浸透したり、大気中にフロンが放出されれば悪臭や大気汚染等、周辺環境は一気に悪化します。

火災や爆発

自動車に使用される油類、リチウム電池やリチウムイオン電池などは、発火原因となる物質を多く含んでいます。もし、スプレー缶などが混入していれば爆発の可能性もあります。
違法に高く積み上げられたスクラップなどに発火した場合、大きな被害が出る可能性があります。

治安の悪化

盗難自動車の解体など不適切な営業をしているヤードの場合、国際犯罪組織などが関与している可能性もあります。街の中に犯罪者がいると思うと安心して生活することができません。

ヤードに関係する法令

ヤードを運営するにあたり、関連する法令は多数あります。
違法ヤードとならないためにも以下の法令を確認して、該当するものがあれば遵守する必要があります。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

スクラップや廃棄物といえば、まずは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、廃掃法)を確認しましょう。
ただし、廃掃法は廃棄物を規制する法律なので、ヤードに持ち込まれる物が廃棄物である必要があります。廃掃法では廃棄物に関して下記のように定義しています。

この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条

廃棄物に当たるかの判断については、総合判断説という考え方が示された環境省の通知があります。
環境省からの通知

総合判断説における5つの要素(要約)
  1. 物の性状
    ・利用用途に合った品質か
    ・飛散、流出、悪臭等がないか
  2. 排出の状況
    ・計画的に排出しているか
    ・適切な保管、品質管理がなされているか
  3. 通常の取扱い形態
    ・製品としての市場があるか
  4. 取引価値の有無
    ・取引の相手方に有償譲渡されているか
  5. 占有者の意思
    ・占有者の意志として適切に利用、又は他人に有償譲渡する意志が認められること

上記の要素を総合的に勘案して廃棄物か否かの判断がされます。ヤードへの搬入物に関しては、基本的には有価物に該当するケースが多いと思いますが、脱法的に有価物扱いしているとされれば廃棄物であるという判断もありえます。
この結果、廃棄物と判断されれば排出者に応じて、一般廃棄物又は産業廃棄物処理業の許可を受ける必要があります。

有害使用済機器保管等制度

有害物質を含む使用済み電子機器等(エアコンや冷蔵庫など指定された32の機器)がスクラップとして搬入され、適切に管理されなかったためにヤード等で火災などが相次いだため、廃掃法が改正され、平成30年に施行された「有害使用済機器保管等制度」というものがあります。

使用を終了し、収集された機器(廃棄物を除く。)のうち、その一部が原材料として相当程度の価値を有し、かつ、適正でない保管又は処分が行われた場合に人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるもの(以下この条及び第三十条第六号において「有害使用済機器」という。)の保管又は処分を業として行おうとする者(適正な有害使用済機器の保管を行うことができるものとして環境省令で定める者を除く。次項において「有害使用済機器保管等業者」という。)は、あらかじめ、環境省令で定めるところにより、その旨を当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。その届け出た事項を変更しようとするときも、同様とする。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律第17条の2

適用除外者や有害使用済機器の詳細は下記のガイドラインをご確認ください。
有害使用済機器の保管等に関するガイドライン(環境省)
これにより、廃棄物に該当しないエアコンなどの電気機器を保管や処分する場合は、保管高さの遵守や掲示板、囲いの設置などが課され、都道府県への届出が義務化されています。

廃掃法の限界

廃掃法は廃棄物を対象としいるため、廃棄物に該当しなかった有価物に対しては規制ができません。
自動車部品や金属スクラップは有価物だと主張されると行政も深くは関与できません。
有害使用済機器についても、対象が32種類に限定されているため加工などを施してしまうと対象外となってしまいます。

古物営業法

自動車や電機機器を仕入れ、業として他人に売買を行う場合は、古物商の自動車や機械工具類の許可が必要となります。
つまり、有価物として仕入れた自動車や電気機器を販売したいということであれば、営業所を管轄する警察署に古物商の許可を受ける必要があります。

古物営業法の限界

古物営業法では、自動車そのものは帳簿の記載対象ですが、自動車部品は対象外です。
盗難品が部品に分解された場合は、帳簿の記載は必要ないため、判断が難しくなります。

金属くず商

古物営業法における「古物」とは、簡単にいうと中古品のことですが、金属スクラップは原則的に「古物」には該当しないため、古物商の許可は不要です。
しかし、都道府県によっては、スクラップや仕入れた自動車、電機機器に加工を施して部品として売買する場合は、金属くず商の届出を営業所を管轄する警察署に提出する必要があります。(営業所がない場合は金属くず行商)
ただし、すべての都道府県で必要というわけではなく、条例が制定されている下記の道府県のみです。

エリア道府県
北海道北海道
関東地方茨城県
中部地方福井県 長野県 岐阜県 静岡県
近畿地方滋賀県 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
四国地方徳島県
中国地方島根県 岡山県 広島県 山口県
金属くず商の届出が必要な道府県

自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)

使用済自動車や解体自動車の解体フロン回収などを行う場合は、都道府県知事から登録・許可を受ける必要があります。
登録・許可を受けるためには床面の舗装、油水分離施設の設置や屋根、覆いの設備が必要となります。
また、産業廃棄物の処理基準が適用されます。

自動車リサイクル法の限界

自動車解体を行う者以外の者が解体した物の搬入に関しては規制が及びません。
既に解体されたもの(ハーフカット車等)は規制対象外など、違法なヤード業者の抜け道となっている側面もあります。

条例の制定

以上のような法令で規制されているヤードですが、法令の対応の限界に乗じて脱法行為を行うといった業者は少なくありません。
行政も根拠法令がなければ、立入り検査などを行えないことから、独自に条例を制定する動きがあります。
違法ヤードが多いとされる地域を中心に現在(2023年5月)、都道府県では5つ、市町村では2つの自動車に関するヤード条例が制定され、ヤードそのものを規制しています。

千葉県千葉県特定自動車部品のヤード内保管等の適正化に関する条例
茨城県茨城県ヤードにおける自動車の適正な取扱いの確保に関する条例
埼玉県ヤードにおける盗難自動車の解体の防止に関する条例
愛知県埼玉県ヤードにおける自動車等の適正な取扱いの確保に関する条例
三重県盗難自動車の解体及び輸出の防止等に関する条例
都道府県
茨城県坂東市坂東市特定自動車部品のヤード内保管等の適正化に関する条例
兵庫県三木市三木市におけるヤード内保管等の適正化に関する条例
市町村

その他、スクラップヤードや資材置き場に対して、規制する条例を制定している自治体もあります。

最後に

不適切にヤードを営むことは許されることではありませんが、すべてのヤードが違法というわけではありません。
近年、最終処分場の容量不足や処分費用の高騰もあり、ヤードは限られた資源を有効活用してリサイクルに寄与することができる施設です。
適法にヤードを営むことができれば、社会的にも必要とされます。
廃掃法関連の届出や警察への許可申請は、弊所でも得意としている分野です。
お悩み事がありましたらお気軽にご相談ください。

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