先日、最高裁の建設石綿訴訟において国とメーカーに賠償責任が認められました。
アスベストは建築資材としては非常に優れていたため、1970年~1990年くらいまでの間に断熱や耐火の用途として大量に使用されていました。現在では使用不可となっていますが、そのころに建築された建築物や工作物の耐用年数の関係から2028年頃をピークに解体ラッシュになるだろうといわれています。
つまり処理しなけらばならないアスベストも大量に発生することになります。
そのために産業廃棄物処理業者や建設業者は、様々な準備をしておく必要がありますが、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)や関係法令においても少々複雑な運用となっており、知っているようでよく知らないアスベストについて解説します。

アスベストとは

まず、アスベストとは「石綿」や「いしわた」、「せきめん」などといったりします。
アスベストは極めて細い天然繊維で耐熱性、絶縁性などに優れていたため、主に建築資材として使わていました。
具体的には建築物の屋根材や外装材、内装材として使われています。

アスベストに対する規制

建築資材として非常に優れた特性を持っていたため、広く普及したアスベストですが、徐々に健康被害の実態が顕在化します。
日本では1975年に吹き付けアスベストの使用が禁止され、2004年に石綿を1%以上含む製品の出荷が禁止されています。(2006年に0.1%以上に改定)
被害者に対する救済制度としては石綿健康被害救済法が平成18年に制定されています。

アスベストの分類

一口にアスベストといっても、その用途に応じて様々な性状で使用されており、廃棄物となった際に除去作業や処理方法が異なってきます。
また、アスベストの飛散の危険度に応じて各種法令で分類されています。

飛散性アスベストと非飛散性アスベスト

飛散性アスベストとは大気中に飛び散りやすいアスベストのことで吹き付けアスベストやけいそう土保温材、パーライト保温材などのことをいいます。
非飛散性アスベストとは成形板などが解体工事などで撤去されて廃棄物になったものをいいます。
通常は飛散のおそれはありませんが、破壊や破砕によって飛散のおそれのあるアスベストのことです。

法令上の扱い

アスベストは飛散の危険度で便宜的にレベル1から3までに分類されています。
廃掃法ではレベル1と2を飛散性アスベストとして特別管理産業廃棄物の廃石綿等と規定しています。
そしてレベル3を非飛散性アスベストとして普通産廃の石綿含有産業廃棄物としています。

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アスベストを含む産業廃棄物許可

アスベストの収集運搬許可を取得する場合は石綿含有産業廃棄物と廃石綿のどちらか、又は両方の許可を取得するのかをあらかじめ決めておいたほうがベターです。
いざ石綿含有産業廃棄物の許可を取得しようと思っても法令で定められた20種類の産業廃棄物に分類されているわけではありません。
ではどの許可を取得すればよいのでしょうか。
まず、石綿含有産業廃遺物ですが、普通産廃の「がれき類」、「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」、「廃プラスチック類」、「汚泥」の許可を取得する際の条件のようなものと思ってください。
(令和3年の大気汚染法改正にあわせて石綿含有仕上塗材として汚泥も追加されました)
対して廃石綿等は特別産業廃棄物として法令で規定されており、危険性が高いものとして許可を取得する際にも容器や処分先の確保など難易度が高くなっています。

収集運搬の方法

許可取得にあたっては安全な収集運搬が可能かということをチェックされます。
アスベストが飛散して流出しないような運搬容器、車両が必要になり、収集運搬時の安全対策や飛散時の対応策を講じておく必要があります。
他の廃棄物と混載は、仕切りで区切らない限り認められていません。

アスベストを処分できる処分場

申請にあたり、アスベストの持ち込み先(処分先)を決めておきましょう。
アスベストは最終処分か溶融、無害化処理といった処分が一般的なので、適正に処分できる処分場は全国的にも限られております。
行政担当者から確認が入る場合があるので、申請前に搬入予定先や搬入先の都道府県の許可の有無などを確認しておきましょう。

アスベスト処理の今後

初めにいったように環境省の試算では2028年をピークとして建築物の解体工事は年々増加する傾向とのことです。
さらに先日の大気汚染防止法の改正で今後、レベル3のアスベストまで調査や計画書の提出などが義務化され、段階的に範囲が広がっていきます。
今後、アスベストの適正な処理のニーズは増大すると思われます。
行政への報告や調査も増えることにより、解体工事を行う建設業者の方もアスベストの正しい知識はとても重要となっています。必要な資格を保持した人材も必要となってきます。
アスベストに関して必要な許認可でお困りの際は、弊所までお気軽にご相談ください。