東京都港区は、東京タワーや六本木などにアクセスが良く人気のエリアです。
不動産価格も相応となりますが、開業が可能であればメリットの大きい地域です。
しかし、東京23区における旅館業許可申請に関する運用は、区によって大きく異なります。
港区で旅館業許可を受けるためのポイントを解説します。
旅館業とは
旅館業とは、宿泊料をもらい、人を宿泊させる営業です。
「宿泊」とは、寝具を使用して旅館業の施設を利用することをいいます。
ネットカフェなどが旅館業に該当しない場合は、この要件を満たしていないからとされます。
第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
旅館業法第2条
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
法的に「旅館・ホテル営業」・「簡易宿所営業」・「下宿営業」に分かれますが、ここでは旅館・ホテル営業と関宿所営業を主に解説します。
旅館・ホテル営業
旅館・ホテル営業とは、一般的なホテルを想像してもらえばわかりやすいです。
フロントがあり、客室が多数あるビジネスホテルや旅館のような施設になります。
(フロントについては後述の緩和措置あり)
以前は、旅館とホテルで要件が違っていましたが、現在は同一となっています。
また、建築基準法の緩和等もあり、マンションの1室などでも営業が可能なケースもあります。
簡易宿所営業
簡易宿所営業とは、カプセルホテルなどをイメージしてください。
1つの施設を多数人で共用する施設となります。
原則としては、複数グループの宿泊を前提とした営業となります。
どちらを取得するかは予定している営業形態に応じて選択する必要があります。
許可要件に大きな差はありませんが、ご不明な場合はご相談ください。
許可申請の手続き
旅館業許可は、都道府県知事の許可となります。
ただし、港区をはじめ、東京23区ではそれぞれ保健所が設置されています。
その場合、各保健所の許可となります。
また、港区の場合、旅館業に関する要綱・要領が制定されています。
つまり、旅館業法に加え、こちらも確認しておく必要があります。
港区旅館業に係る計画及び管理運営に関する要綱・要領
旅館業が可能な地域
旅館業施設の場所ですが、そもそも旅館業ができない地域が存在します。
都市計画法で定められた用途地域では下記の制限があります。
| 用途地域 | 旅館業許可の要否 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | × |
| 第二種低層住居専用地域 | × |
| 第一種中高層住居専用地域 | × |
| 第二種中高層住居専用地域 | × |
| 第一種住居地域 | 3,000㎡以下なら〇 |
| 第二種住居地域 | 〇 |
| 準住居地域 | 〇 |
| 田園住居地域 | × |
| 近隣商業地域 | 〇 |
| 商業地域 | 〇 |
| 準工業地域 | 〇 |
| 工業地域 | × |
| 工業専用地域 | × |
まずは、旅館業許可が受けられる地域か確認しましょう。
都市計画課という部署かインターネット上で確認ができます。
港区街づくり支援部都市計画課都市計画係
旅館業許可に必要な主な構造
旅館・ホテル営業の場合
- ベッドを置く1客室の床面積は9㎡以上
- 教育関係機関から内部を見通せない構造(110m以内に教育関係機関がある場合)
- 原則、フロント(玄関帳場)設置
簡易宿所営業の場合
- 客室の床面積は33㎡以上(宿泊者の数が10人以下の場合は、3.3㎡×宿泊者数以上の面積)
その他、浴室(シャワー室)、トイレ、洗面設備の設置は必須となります。
また、窓の面積は有効面積の10分の1が目安となります。
(有効面積とは、宿泊者が睡眠、休憩等ができるスペース)
上記の構造がクリアできれば、マンションの1室などでも旅館業が可能です。
ただし、区によっては居住者と宿泊者の動線を区別する必要があるケースもあります。
関係部署への事前相談
用途地域が確認できたら関係する役所に事前相談を行うことがベターです。
必須ではありませんが、運用が変更されていたりするので相談をしておけば間違いありません。
保健所、消防、建築審査課への相談が基本となります。
保健所
まずは、許可申請を行う保健所に相談を行います。
建物の図面や地図を持参して構造の確認や申請の手順を確認します。
浴室やトイレなどの構造が港区の要綱に合致しているかなどの確認ができます。
また、港区では申請書類の事前チェックが入るケースもあります。
消防
旅館業の施設は、消防法に規定された設備が設置してある必要があります。
自動火災報知設備、誘導灯、消火器は必須となります。
また、建物の規模や用途によっては、追加で避難器具等の設置、建物全体への設備の設置などが必要なケースがあります。
旅館業許可の申請があった場合、保健所から消防へ照会が入るので、必要な設備を設置しておく必要があります。(安全上の観点から必ず消防法は遵守しなければなりません)
建築審査課
旅館業の施設は、建築基準法に適合した施設である必要があります。
建物の規模によっては改修工事が必要なことがあります。
その他、用途変更の確認申請の有無、非常用照明の設置、接道要件の確認を行います。
東京都では、建築基準法上の道路に4m以上接道していなければ旅館営業はできません。(東京都建築安全条例)
「建築確認検査済証」という書類があれば適法性は担保できます。
ただし、紛失していたり、そもそもないといったケースも多々あります。
港区では建築確認検査済証の提出までは求められておりませんが、違法建築物での旅館業営業はできません。
近隣住民に対する事前周知
旅館業許可申請を行う前に近隣住民への事前周知を行います。
港区の要綱では、申請を行う20日前までに周知を行う必要があります。
また、あわせて建物に計画内容を記した標識も設置しなければなりません。
事前周知範囲は、施設の周辺概ね10m以内の居住者が対象となります。
周知方法は、対面までは求められていないので、ポスティングで問題ありません。
ただし、周辺住民から求めがあった場合は、協議、説明会などを開催する必要があります。
標識を設置した後は、設置届の提出が必要となり、標識は許可まで設置していなければなりません。
フロント(玄関帳場)について
旅館業許可取得にあたり、障壁となるものがフロントの設置です。
旅館業法では、フロント設置義務は撤廃されました。
ただし、区によってはフロント設置が義務となっており、戸建ての場合などは、ほぼ不可能というケースもあります。
幸い港区は、フロントに代わる代替設備が認めてもらえます。
旅館業法では、客室の鍵の適切な受け渡し及び宿泊者等の出入りを確認する設備が求められます。
- 緊急時の駆け付け体制
24時間体制で駆け付け場所から施設までおおむね10分以内に到着できる体制
車、バイク、自転車でも可だが駐車場、駐輪場が必要 - 宿泊者の本人確認
タブレット端末、ドアカメラなどで鮮明な画像が確認できること - 宿泊者の出入り確認
ビデオカメラなどで24時間、常時鮮明な画像で確認できる体制
外部委託する場合は、従事者数などで証明 - 宿泊者名簿の記載方法
予約システム等に登録を行い、内容に変更があった場合に修正できる体制 - 鍵の受渡し
電子錠の場合は本人確認後に暗証番号発行(キーボックス可)
保健所に許可申請
近隣への周知から20日以上経過後、保健所への申請が可能となります。
- 許可申請書(細則第1号様式)
- 構造設備の概要
- 構造設備の概要の別紙(フロントを設けない場合)
- 定款、法人登記事項証明書(申請者が法人の場合)
- 申告書(法人の場合は役員全員分)
- 周辺の見取図(半径300m)
- 各種図面(配置図、平面図、立面図)
- 配管図(ガス設備を設ける場合)
- 換気、給排水系統図
- 求積表、窓面積表(必要な場合)
- 事前周知結果報告書(要綱第1号様式)
- 申請施設の敷地から半径20m以上が判別できる住宅地図
- 事前周知に使用した書面
様式が用意されているものは様式を使用し、ないものは自分で作成する必要があります。
特に図面関係は残っていないことも多いので注意が必要です。(ない場合は自作するか専門家に依頼)
保健所による検査
申請が受理されると保健所の職員による実地検査となります。
- 施設内の確認
・図面通りとなっているか
・リネン庫に予備のリネンがあるか
・適正な照度が確保されているか - チェックイン方法の確認
・本人確認が鮮明な画像で確認できるか
・宿泊者の出入り確認がしっかりとできるか
・宿泊者名簿の記載確認
・鍵の受渡し(電子錠の場合は暗証番号発行)の確認 - 駆け付け拠点の確認
・実際に10分以内で駆け付けができるか
・移動手段の確認(自動車、自転車等)
・駐車場、駐輪場の確認(使用する場合)
上記のポイントが適正に運用できていることが確認できれば問題ありません。
検査終了後、15営業日を目安に許可書が交付されます。
ただし、施設の周辺に学校等がある場合は、施設の管理者に照会をかけるため、審査期間が伸びます。(概ね1ヶ月~1カ月半)
最後に
港区で旅館業許可を受けるためのポイントをまとめました。
東京23区における旅館業許可は、区によって規制や申請手順が大きく異なります。
港区の場合、近隣への周知、管理体制の厳格化、駆け付け要件などを考慮するとハードルは高めです。
弊所では、単に申請を代行するだけではなく、最適な運用方法のご提案、関連業者との連携など、トータルでサポートしております。
港区で旅館業をお考えの場合は是非ご相談ください。
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