風俗営業を行っていく上で風営法や関係法令を守った上で営業をしなければなりません。
風営法では、違反事項に応じて罰則が定められており、違反行為をしてしまうと行政処分や刑事罰の対象となります。
しかし、違反行為を行ったからといって、すぐに営業停止命令などの重い処分を受けるとは限りません。
違反行為をした場合、すぐに罰則を受けるケースと行政指導や指示処分が前置されるケースとはどのようなものでしょうか。
直接罰と間接罰
法律違反があったときに下される処罰として、直接罰と間接罰というものがあります。
直接罰の場合、違反行為に対して直ちに罰則が下りますが、間接罰の場合、まずは行政指導や指示を行い自主的な改善を促した上で、その指導や指示に違反があった場合に罰則を下すというものです。
風営法では、あらかじめ『遵守事項』と『禁止事項』というものを規定しておき、前者に対しては間接罰、後者に対しては直接罰を下すということが原則となっています。
遵守事項
昭和59年に風営法が改正されるまで、違反行為はすべて直接罰の対象でした。
改正後は、「日常的な営業活動に伴って生じるような違反」として下記の事項が遵守事項と規定されました。
これらの事項に対する違反行為は、まず行政指導や指示処分によって営業者の自主的な改善を促します。
ただし、あくまで原則となるので悪質であったり、早急な是正が必要な場合と判断されれば行政処分や指示処分を経由しないでいきなり営業停止命令などを行うことがあります。
- 構造及び設備の維持(風営法12条)
- 営業時間の制限(風営法13条)
- 照度の規制(風営法14条)
- 騒音及び振動の規制(風営法15条)
- 広告及び宣伝の規制(風営法16条)
- 料金の表示(風営法17条)
- 年少者の立入禁止の表示(風営法18条)
- 接客従業者に対する拘束的行為の規制(風営法18条の2)
- 遊技料金等の規制(風営法19条)
- 遊技機の規制(風営法20条)
条例への委任
上記の遵守事項のほか、風営法21条で都道府県の実情にあわせて条例で必要な制限を定める権限を委任しています。都道府県独自に風俗営業者の遵守事項を定めることができます。
第十二条から第十九条まで、前条第一項及び次条第二項に定めるもののほか、都道府県は、条例により、風俗営業者の行為について、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要な制限を定めることができる。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第21条
東京都の例になりますが、条例で風俗営業者の遵守事項として下記の通り定めています。
- 営業所で卑猥な行為その他善良な風俗を害する行為をし、又はさせないこと。
- 客の求めない飲食物を提供しないこと。
- 法第17条の規定により表示する料金以外の料金を客に請求しないこと。
- 営業所において客を宿泊させ、若しくは仮眠させ、又は寝具その他これに類するものを客に使用させないこと。
- 営業中において、営業所の出入口、客室等に施錠をし、又はさせないこと。
- 営業所において、店舗型性風俗特殊営業、受付型営業、又は店舗型電話異性紹介営業を営み、又は他の者に営ませないこと。
- とばくその他著しく射幸心をそそるような行為をし、又はさせないこと。
- 営業所周辺において客が投棄したと認められるごみ又は排せつ若しくは吐しゃしたと認められる物を放置したままにしないこと。
- 客相互の行う遊技の結果に対して賞品を提供しないこと。
- 客に提供した賞品を買い取らせないこと。
- 営業所(雀荘、アミューズメントカジノなどを除く)において、客に飲酒をさせないこと。
営業所周辺のごみの放置に関する事項は東京都独自のものですが、おおむね他の都道府県でも似たような規制となっています。
禁止行為
風俗営業を営む者の禁止行為に関しては風営法22条と23条で規定されています。
客引きに関するものと未成年の保護に関するものが禁止行為とされています。
遊技場営業者(パチンコ店やゲームセンターなど)は22条に加えて23条の規定も遵守しなければなりません。
下記の禁止行為を行った場合は、指示処分などの前置なしで直ちに刑事罰を受けることがあります。
- 当該営業に関し客引きを行うこと。
- 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
- 営業所で18歳未満の者に客の接待をさせること。
- 営業所で午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させること。
- 18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること。(ゲームセンターでは条例の規制あり)
- 営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。
行政処分及び罰則
警察庁が定めている処分基準に応じて行政処分や罰則が下ります。
量定区分とは処分を下す際の量定の判断基準のことでA~Hの8種類に分類されています。
→風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基準
1.2号の事項に違反した場合 (客引き等をした場合)
行政処分:量定区分B 40日以上の6月以下の営業停止命令を基本として加重軽減
罰則:6月以下の懲役又は100万以下の罰金
3.4号に事項に違反した場合 (年少者に接待、夜間接客業務をさせた場合)
行政処分:量定区分A 原則として許可取消し
罰則:1年以下の懲役又は100万以下の罰金
5.6号の事項に違反した場合 (年少者の立ち入らせ、年少者に酒・たばこの提供をした場合)
行政処分:量定区分B 40日以上6月以下の営業停止命令を基本として加重軽減
罰則:1年以下の懲役又は100万以下の罰金
- 現金または有価証券を賞品として提供すること。
- 客に提供した賞品を買い取ること。
- 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物を客に営業所外に持ち出させること。
- 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。
- 雀荘、風俗営業5号の営業を営む者は、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。
1.2号の事項に違反した場合 (賞品に関する違反をした場合)
行政処分:量定区分B 40日以上6月以下の営業停止命令を基本として加重軽減
罰則:6月以下の懲役又は100万以下の罰金
3.4号の事項に違反した場合 (遊技球等に関する違反をした場合)
行政処分:量定区分E 5日以上40日以下の営業停止命令を基本として加重軽減
罰則:50万以下の罰金
5号の事項に違反した場合 (雀荘、ゲームセンターが賞品を提供した場合)
行政処分:量定区分C 20日以上6月以下の営業停止命令を基本として加重軽減
罰則:6月以下の懲役又は100万以下の罰金
名義貸しの禁止
名義貸しに関しては、風営法11条で禁止行為として規定されています。
第3条第1項の許可を受けた者は、自己の名義をもって、他人に風俗営業を営ませてはならない。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第11条
風俗営業許可を受けた人が、自ら風俗営業を行わず、実質は他人に営業をさせて自らは営業の主体とならない場合が名義貸しに該当します。
この場合は名義を貸した人が名義貸し違反となり、実質的に経営している人が無許可営業として処罰の対象になります。
名義貸し行為は風俗営業許可制度を根底から覆すことになりかねません。
原則として前置処分なしで営業許可の取消しとなり、罰則として2年以下の懲役又は200万以下の罰金という風営法において最も重い処分となります。
最後に
風営法違反で摘発され、行政処分や罰金刑などの刑事罰を受けてしまうと、お店を立て直すことが非常に困難となります。
罰則がないからといって違反事項を放置していると後々、大きな違反行為につながることが多々あります。
ご自分のお店を守る意味でも遵守事項と禁止行為に関しては、しっかりと把握しておきましょう。
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