風俗営業許可を受けるには、営業所の場所を「保全対象施設」と呼ばれる施設から一定の距離をとる必要があります。
「保全対象施設」に指定されるのは主に学校や病院などですが、その中で最もややこしいのが「保育施設」です。
なぜならひとくちに「保育施設」といっても、認可保育所・認証保育所・認定こども園・認可外保育所・託児所…などといろいろなものがあり、名称だけでは判断もしづらいのです。
多くの都道府県の条例では、保全対象施設となる「保育施設」は『児童福祉法7条』に規定のある施設だけとなっていますが、一体どの施設が対象なのでしょうか。

保全対象施設となる保育施設

結論から言うと、各都道府県の条例で「保育施設」として「保全対象施設」となりえるのは、『児童福祉法7条』を根拠に持つ施設である「認可保育所」「幼保連携型認定こども園」となることが大半です。
(都道府県によって異なるケースがあるので必ず条例を確認しましょう)

この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。

児童福祉法第7条

しかし、どの施設が「認可保育所」「幼保連携型認定こども園」なのかの判断は非常に迷うところです。
まずは「認可保育所」「幼保連携型認定こども園」がどんな施設なのか確認してみましょう。

認可保育所

保全対象施設とされる「認可保育所」とは、保育士の数や施設の面積、設備などが厚生労働省の定める基準をクリアした施設です。
公立や私立を問わず、上記の基準をクリアして都道府県知事の認可を受けた施設が「認可保育所」となります。
東京都の場合は園庭の確保が難しいケースが多かったのですが、待機児童問題もあって規制緩和が進み、保育所に隣接していなくても近くの公園などが園庭として認められる場合があり、ビルの一角にある保育所でも「認可保育所」として認可されているケースもあるので注意が必要です。

幼保連携型認定こども園

簡単にいうと、幼稚園と保育所のメリットを“良いとこどり”したハイブリットな施設です。
保護者が働いているか否かで判断しないなど、より昨今の事情に考慮した施設といえます。
認定こども園」に関してはいくつかのタイプがあるのですが、『児童福祉法7条』には「幼保連携型認定こども園」と規定されています。

保全対象施設とならない保育施設

保全対象施設とならない保育施設とは、上記の「認可保育所」と「認定こども園」以外のすべての保育施設ということになります。(都道府県によって異なるケースがあるので必ず条例を確認しましょう)
行政機関に確認しないと確定できないことも多いのですが、下記の「認可外保育所」「小規模保育委事業」の施設は、風俗営業を始めようとする際に細心の注意が必要です。

認可外保育所

「認可外保育施設」とは、都道府県知事などの児童福祉法に基づく認可を受けていない施設のことです。
「認可保育所」とは異なり「認可外保育所」は国が定める基準を満たしていません。もちろん、基準を満たしていないからといってダメというわけではなく、保育の多様なニーズに応えている施設です。
実態としては、〇〇保育所、キッズルーム〇〇、〇〇託児所など、名称から認可施設か認可外かは判断がつかないケースが多いため、迷ったら問い合わせをしたり自分で調べるしかありません。
東京都には東京都独自の基準による「認証保育所」という施設もあり、さらに判断しづらいケースが増えています。また、最近では企業主導型保育事業で企業が保育所を設置したりと、保育所数も増えてきているため調査が少々大変です。

小規模保育事業

2015年にスタートした小規模保育事業というものがあります。『児童福祉法』に基づき市町村が認可する事業です。
『児童福祉法』に基づいているのだから、保全対象施設…と思いがちですが、「認可保育所」とは認可基準が違っており、『児童福祉法7条』に基づく施設ではないため、保全対象施設に該当しないケースがほとんどです。
外見や名称から判別するのはなかなか難しいので、各行政の担当に確認したほうがよいでしょう。
都道府県によっては条例で追加されていることもあるようですし、保全対象施設に含めるという動きが今後出てくる可能性はあります。

最後に

施設の名称は、こども園だけどそれが名称に入っていなかったり、認証保育所であっても認可保育所と名乗っていたりと、かなり曖昧です。さらに、認定こども園幼保連携型認定こども園は幼稚園と保育所のハイブリッド施設のような施設であり、東京都では問題ありませんが、学校と児童福祉施設で距離制限が違う自治体はどうなるのか悩みどころです。(幼稚園は学校、保育所は児童福祉施設)
いずれにしろ各自治体のHPで確認したり、または直接問い合わせるか、実際に行って調べることが確実です。意外な近所に該当施設があるのを知らず、そのために申請が通らなかった…となると大変です。
少しでも不安があれば専門家に調査を依頼しましょう。弊所でもご相談を承っております。