よくあるお問合せで「風俗営業許可を誰かに譲渡したい」や「個人許可を法人許可にしたい」というご相談があります。原則的には風俗営業許可に譲渡という概念はありません。したがって風俗営業許可を誰かに譲渡したり、個人許可から法人許可にしたいと思ったら、新たに許可を受ける必要があります。
しかし、例外的なケースや事前に承認を得たり、相談することによって実現できることもあります。

風営法上の扱い

まず風俗営業許可において原則的に名義変更という概念はありません。
なぜなら風俗営業許可というものは人(法人)、設備、場所に対して許可を与えているため、人(法人)が変われば再度、要件を確認しないといけないからです。
ただし、個人で許可を受けていた人に相続が発生した場合は、営業を引き継ぐことが可能です。被相続人の死亡後、60日以内に公安委員会に申請して承認を受ければ相続可能です。
これに対し、性風俗特殊営業の場合は相続による承継も認められず、一代限りの許可となります。
ちなみに弊所で取り扱いのある建設業、産業廃棄物ですが、建設業許可は先の改正で承継が可能になり、事前に申請して承認を受ければ以前のようなタイムラグは生じなくなりました。
産業廃棄物許可は許可の承継は認められず、もともと許可を受けていなければ新規で許可を受ける必要があります。

個人許可と法人許可

個人許可で取得するのと法人許可で取得するのはどっちがいいの?という質問もよくあります。
この質問に対しては一概にどっちが良いとは言い切れません。
しかし、法人許可の場合は、事業承継によって実質的に許可を譲渡することが可能になるケースがあります。

法人許可

メリットとしては個人よりは法人のほうが信用度が高いので社会的信用が得られますし、税制上も優遇されていることが多いです。
デメリットとしては申請時の手間とコストがかかることです。
会社を設立するにも費用はかかりますし、申請時には登記事項証明書や約款などの書類が追加で必要となります。また、人的要件には役員全員が該当しますので一人でも欠格要件に該当してしまうと許可は下りません。

個人許可

個人許可のメリットは申請時の手続きが法人で申請する場合と比較して手間がかかりません。法人許可と比較して申請時の書類が簡素化されているため、コストと手間を減らすことが可能です。一代限りでしかやらないとか、事業承継を考えていなければ個人許可で問題ないともいえます。
もし、事業が拡大して必要に迫られても、後から法人成りという方法もあります。
ただし、この場合はいったん既存の許可を廃止して新規許可となってしまうので、営業所周辺の立地状況によっては、許可がおりない可能性があることと、営業のタイムラグが発生する可能性があることに注意が必要です。営業のタイムラグに関しては、管轄の警察署の解釈によっては回避することも可能なのでご相談ください。

許可の承継

法人の場合は会社法で定められている合併や分割を行うことによって、風俗営業許可を承継させることが可能です。
例えば営業開始後に保全対象施設ができてしまっている場合では、新規許可は取得できませんのでこれは大変なメリットとなります。
飲食店ではよほど規模が大きかったりしないとあまり行われませんが、パチンコ店や既得権が重要な性風俗特殊営業では比較的よく使われます。特に既得権が重要な性風俗特殊営業などは事業を売却するとなった場合もこういった案件は非常に高額な取引となっているようです。
合併、分割については専門ではないので簡単な説明になってしまいますが、風俗営業許可の事業承継の際によくあるケースを2つ紹介します。

吸収合併

A社がB社の事業を全て承継し、B社は消滅する
存続会社Aが消滅会社Bの権利義務を合併後に全て承継する手法です。
合併後はA社が債権なども含めて全て承継してB社は消滅します。

吸収分割

A社がB社の一事業を承継し、A社のものとなりB社は存続する
B社が一部の事業を分割してA社がその事業を引き継ぎ、A社もB社も存続します。
パチンコ店などでチェーン店のみ買収したいというときや不採算部門を売却してスリム化を図る際によく使われる手法です。

申請時の注意点

合併や分割の登記を行う前に公安委員会に承認を受ける必要があります。
事前に承認を受けずに登記が完了してしまうと許可は失効してしまいます。
許可を承継する会社が欠格事項に該当していないことが求められるからです。
また、この承認申請はA社、B社の連名によって行わなければならないと定められています。

最後に

以上のように風俗営業許可を相続したり承継させることは、しっかりとした手続きを踏めば可能です。
いずれにしろ営業する店舗の規模や長期的なビジョンを持つことが重要と考えます。
特に許認可が絡む事業承継を行う場合は、許可の失効など取り返しのつかないことが起こりえる可能性があります。専門家に相談して事前に不安な点を確認をしておくことをおすすめします。