キャバクラやスナックなどでは、カラオケが設置されているお店が多数あります。
お酒が入るとカラオケを歌いたいという人は多いですし、店内も盛り上がるので集客や売上アップにも貢献してくれるものです。
風営法では営業者の遵守事項というものが定められており、この遵守事項の中で「騒音及び振動の規制」という項目があります。

風俗営業のお店や飲食店から発生する騒音・振動は主に「カラオケ」やお客さんが店を出た後の「路上での話し声」が多いでしょう。
また、ナイトクラブなどでは営業上、夜間に大きな騒音や振動が発生しやすいといえます。
このような騒音や振動が外部に漏れてしまうと周囲から苦情がきますし、何度も繰り返すようであれば営業停止処分などの重大な問題となることがあります。
騒音・振動の規制と主な要因となる店内にカラオケを設置する際の注意点について確認しましょう。

風営法の規定

騒音及び振動の規制は、風俗営業者の遵守事項として風営法第15条で定められています。

(騒音及び振動の規制)
風俗営業者は、営業所周辺において、政令で定めるところにより、都道府県の条例で定める数値以上の騒音又は振動(人声その他その営業活動に伴う騒音又は振動に限る。)が生じないように、その営業を営まなければならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第15条

『法第15条は、風俗営業に係る騒音及び振動について、現下のカラオケ騒音の問題等に鑑み、数値による規制することとしている。』(解釈運用基準第17-4)
風俗営業や飲食店営業においては、カラオケ絡みの騒音問題が多いため、数値の基準が定められています。
具体的な数値や計測の方法は、下位法令と条例に委任されています。

政令の基準

風営法施行令(政令)11条で条例で定める数値の上限が規定されています。

風営法施行令11条騒音基準

一般的に「うるさい」と感じる目安が60デシベル程度で、洗濯機や掃除機などの音といわれます。
振動に関する数値は55デシベルを超えない範囲内で条例を定めるとしています。(施行令11条2項)

騒音・振動の測定方法

測定方法は、国家公安委員会規則で規定されています。
この方法以外で測定しても、騒音及び振動の数値は信頼性に欠けてしまいます。

(騒音及び振動の測定方法)

第三十二条 令第十一条第三項(令第二十五条第三項及び令第二十六条第三項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の騒音の測定に係る国家公安委員会規則で定める方法は、営業所の境界線の外側で測定可能な直近の位置について、計量法(平成四年法律第五十一号)第七十一条の条件に合格した騒音計を用いて行う日本産業規格Z八七三一に定める騒音レベルの測定方法とする。この場合において、聴感覚補正回路はA特性を、動特性は速い動特性を用いることとし、騒音レベルは、五秒以内の一定時間間隔及び五十個以上の測定値の五パーセント時間率騒音レベルとする。

 令第十一条第三項の振動の測定に係る国家公安委員会規則で定める方法は、営業所の境界線の外側で測定可能な直近の床又は地面(緩衝物がなく、表面が水平であり、かつ、堅い床又は地面に限る。)について、計量法第七十一条の条件に合格した振動レベル計を用いて行う日本産業規格Z八七三五に定める振動レベルの測定方法とする。この場合において、振動感覚補正回路は鉛直振動特性を、動特性は日本産業規格C一五一〇に定める動特性を用いることとし、振動レベルは、五秒間隔及び百個の測定値又はこれに準ずる間隔及び個数の測定値の八十パーセントレンジの上端値とする。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則第32条

営業所の境界線で計量法で認められる計量器を用いて測定するということですが、専門的な用語が多いため、条文を読んでもいまいちピンとこないのが本音です。
実際に営業所の境界線で測定してみて、基準値を超えるような数値が出るのであれば対策を考えましょう。

違反した場合

風営法15条の規定は、風俗営業者の遵守事項なので原則は指示処分前置となります。
その上で改善されないようでしたら、10日以上80日以下の営業停止命令となります。(罰則なし)

東京都の騒音・振動の規制

具体的な騒音・振動の数値は、各都道府県の条例で定められますが、ここでは東京都を例にします。

条例で定める騒音の数値
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(東京都)第6条

条例で定める振動の数値は、時間帯にかかわらず東京都内全域で55デシベルです。

環境確保条例による騒音規制

東京都では「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(以下、環境確保条例)でも騒音が規制されています。

(規制基準の遵守等)

第百三十六条 何人も、第六十八条第一項第八十条及び第百二十九条から前条までの規定に定めるもののほか、別表第十三に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては、人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超えるばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の発生をさせてはならない。

環境確保条例第136条

原則として、すべての地域で音量基準を超える騒音を発生させることは禁止されています。
ただし、用途地域と時間帯によって基準値が変わります。
風俗営業や深夜営業のお店が多い第三種地域では下記の通りです。

東京都環境確保条例における騒音規制

つまり、東京都では風営法と環境確保条令の両方の基準をクリアする必要があります。

条例に違反した場合

条例に違反して騒音基準を超えて営業した場合は、行政処分の対象となります。
行政処分は、勧告や施設の改善命令から営業停止命令まであります。
さらに改善がなければ、1年以下の懲役又は50万以下の罰則となる場合もあります。

カラオケ機器を使用する場合

騒音の主な要因となるのは店内から漏れるカラオケの音です。
飲食店において集客と売上に貢献するカラオケですが、無制限に使用できるわけではありません。
東京都では環境確保条例により、飲食店では午後11時から翌日午前6時までの間は音響機器(カラオケ)は使用できません。
しかし、深夜に営業しているスナックなどではカラオケが使用されている光景をよく見かけます。
違法行為は論外ですが、これには理由があります。

適用除外の要件

環境確保条例では、下記の要件を満たせば規制されている時間帯でも音響機器が使用できる例外を規定しています。

規制の適用が除外される要件
  1. 外部に音が漏れないよう、防音対策が施されている場合
  2. 次の場所で、条例別表第13に定める騒音の基準を超えない音量で音響機器を使用し、または使用させる場合
    ・住宅・病院・診療所から50m以上 (商業地域にある場合は20m以上)離れた場所
    ・消防法に規定される地下街

防音対策としては、窓やドアの隙間をパッキンでうめる、スピーカーの位置を工夫したり壁や天井の防音効果の高い素材を使用するなどが考えられます。
消防法に規定される地下街とは、八重洲の地下街や新宿サブナードなど、繁華街にある地下街が指定されています。

消防法に規定される地下街

区役所によっては、騒音計の貸し出しを行っているところもあります。何か不明点があれば区役所の環境課などに相談してみることも有効です。

最後に

風俗営業や飲食店を営んでいる場合、近隣との関係は重要です。
特に風俗営業に対しては、ごく一部ですが偏見を持たれている方もいるので、日頃から遵守事項を守って良好な関係を維持しておく必要があります。
騒音・振動に対しては上記の規定を理解して対策をしておきましょう。

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