某・俳優/歌舞伎役者の方が、高級クラブでわいせつ行為を行ったというニュースが世間を賑わせています。
今回の件、一歩間違えば、被害側のはずのお店も【禁止地域営業】の罪に問われてしまう可能性があるのです。
また、この件について某・論破王の方が発言した中には風営法に関する極端な見解があり、物議を醸しています。
風営法の間違った解釈が世の中に広がってしまうと、業界が不当な評価にさらされるかもしれません。
風俗営業とは、正確にはどんなものか。今回のニュースの内容を織り交ぜながら、改めてここでまとめてみたいと思います。
風俗営業と性風俗特殊営業
まずは、一番誤解が多いと思われる、「風俗営業」と「性風俗特殊営業」の区別です。
風俗と聞いてまず思い浮かべるのが性風俗、いわゆる〈デリヘル〉や〈ソープランド〉と呼ばれる営業ではないかと思います。どちらも風営法に規定されている営業ですが、正式には「性風俗特殊営業」に分類されます。
この区別と分類を、下の表で確認してみましょう。
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このように、「風俗営業」と「性風俗特殊営業」は法律上で明確に分かれています。
〈キャバクラ〉や〈パチンコ店〉〈ゲームセンター〉などは、法律上では「風俗営業」になります。
以前は〈ソープランド〉や〈ファッションヘルス〉も「風俗関連営業」とされていたのですが、1999年の風営法改正で性風俗特殊営業として区別されることとなりました。
ですがその名残もあってか、今もやはり風俗といえば性風俗、いわゆる“ピンク系”のお店をイメージする人は多いでしょう。
どんな場所で営業できるか
「風俗営業」も「性風俗特殊営業」も、どんな場所でも営業ができるわけではありません。
原則的に各都道府県の条例で規制されています。
詳しくは下のリンク先をご覧ください。
特に「性風俗特殊営業」の分類にある『店舗型性風俗特殊営業』は、ほとんどの都道府県の条例で、事実上新規出店はほぼ不可能と言っても過言ではありません。
ここ最近〈メンズエステ〉の摘発が目立っていますが、これは『店舗型性風俗店』の要件に該当してしまったために【禁止地域営業】の罪に問われた、というパターンが非常に多いからです。
『店舗型性風俗特殊営業』と比較すると「風俗営業」は厳しい規制はあれど出店の難易度はかなり異なります。
今回の問題点
冒頭で書いたニュースの話に戻ります。
記事に書かれている内容が事実であるという前提で、風営法の規定に当てはめて問題点を検証してみます。
場所は銀座の高級クラブということですから、おそらく〔風俗営業1号許可〕を受けている店舗だと思われます。
〔風俗営業1号許可〕は、接待を伴う飲食店です。特定の客に侍り、通常の接客行為を超えるようなサービスを提供することが可能です。ただし、東京都の風営法に関する条例7条①の規定では、風俗営業者の遵守事項として「営業所で卑猥な行為その他善良の風俗を害する行為をし、又はさせないこと」とあります。
これは、お客さんが卑猥な行為をしてはいけないのは当然として、お店側にもそういった行為をさせてはいけないということが求められているのです。
では卑猥な行為とは何か、という明確な基準までは明示されていないのですが、記事を読む限りでは今回の騒動は東京都の条例に違反しているといえるでしょう。内情や関係性があるにしろ、法令遵守の視点から見れば、お店もそういった行為を止めなくてはならなかったのです。
「店舗型性風俗特殊営業」との境界線
(引き続き、記事に書かれていることが事実という前提のもとに記載していきます。)
加害者の俳優は、キャストの下着をはぎ取り匂いを嗅いだうえにSNS等で拡散。さらにキャストにキスまで迫ったそうです。
とある元人気キャストの方がSNSで「セクハラも仕事のうち」という発言をしていました。正直、実態としてはそういった部分もあるのでしょうが、規程からすると間違いなく接待の範疇を超えています。しかも東京一等地の高級店でこのような行為が起こったということが、非常にインパクトのある問題です。
今回のケースが『店舗型性風俗特殊営業』の基準である「異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」に該当してしまえば、『性風俗特殊営業』の届出を行わずに営業していたことになってしまいます。ほとんどのお客さんがそういう行為していなくても、一部の客によるトラブルが起こってしまった際、警察の解釈によっては条例違反の判断が下される可能性は十分にあるのではないかと思います。
そうなった場合、【禁止地域営業】として2年以下の懲役若しくは200万以下の罰金、又は併科という最も重い罪に問わてしまいます。
最後に
上記のような加害行為は、決して許されることではありません。
お店側も止めなくてはいけない、と書きましたが、実際の接客中に細かく法令に当てはめて杓子定規で対応していくなどということは難しいでしょう。何といってもお酒が入る場ですから、時に場がエスカレートしてしまうことは致し方ないのも事実です。
だからこそ、いかに品位を保ちつつ楽しむか・楽しんでいただくかという意識が、お客さんとお店側双方に求められるのではないかと思います。
まずはお店側が、お店とキャストが被害にあわないために法令の解釈や店内のルール設定などの備えをしておきましょう。(これにより、お客さんを加害者にさせることもなくなるはずです。)
対策に関しては弊所でもご協力を承っております。