風俗営業許可の申請を行う前に必ず実施するのもので、保全対象施設の調査があります。
なぜなら、その場所が風俗営業を行うことが可能かということを確認する必要があるからです。
しかし、最近は保育施設において保全対象施設に該当するか判断に迷う施設が増えています。
その中でも特に保育所については、判断に困るケースが多々あります。
待機児童の問題もあり、日本の保育施設は非常に多くの種類があります。
そこで保育施設に焦点をあて、あらためて解説します。
保全対象施設
風俗営業許可を受けるためには保全対象施設から一定の距離をとる必要があります。
保全対象施設については、風営法施行令で規定されています。
ロ その他の地域のうち、学校、病院その他の施設でその利用者の構成その他のその特性に鑑み特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある施設として都道府県の条例で定めるもの(以下「保全対象施設」という。)の周辺の地域
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令第6条1項ロ
風俗営業許可を受けるお店の近くに学校や病院などがあると、良好な風俗環境に悪影響がでる可能性があります。
そこで各都道府県の実情に合わせ、条例で保全対象施設を指定することができます。
東京都の場合
弊所のある東京都では条例で下記のように規定されています。
(風俗営業の営業所の設置を特に制限する地域)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第3条1項2号
第3条風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「法」という。)第4条第2項第2号の条例で定める地域は、次の地域とする。
(2)学校、図書館、児童福祉施設、病院及び診療所の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲100メートル以内の地域。ただし、近隣商業地域及び商業地域のうち、規則で定める地域に該当する部分を除く。
学校、病院などに加えて児童福祉施設が指定されています。
保育所や認定こども園のような保育施設は、児童福祉施設に含まれます。
つまり、東京都では保育施設の周辺で風俗営業許可を受けることができません。
他のほとんどの都道府県でも児童福祉施設は保全対象施設として指定されています。
児童福祉施設
児童福祉施設とは、児童福祉法7条1項に規定される施設のことをいいます。
第七条 この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。
児童福祉法第7条1項
保育所と幼保連携型認定こども園は、児童福祉法7条1項に規定されているので保全対象施設となります。
保全対象施設となる保育施設
保全対象施設となる保育施設は児童福祉法7条1項に規定のあるものだけです。
つまり、すべての保育所と認定こども園が保全対象施設となるわけではありません。
保育施設は大きく分けると3種類あります。
- 認可施設・・・国が定めた設置基準をクリアして認可された施設
- 認証施設・・・都道府県独自の基準をクリアして認証された施設
- 認可外施設・・・上記以下外の認可を受けていない施設
さらに認可等を受けて運営する施設は、認可保育所、認定こども園、地域型保育事業に分類されます。
この中で保全対象施設となるのは認可保育所と幼保連携型認定こども園です。
地域型保育事業
地域型保育事業は2015年に始まった比較的新しい制度です。
4つの類型がありますが、原則として少人数単位で0~2歳児を保育する事業です。
この中で保全対象施設と混同しやすいものは、小規模保育事業と事業所内保育事業です。
どちらも認可保育所と比較して、設置基準にそこまで大きな差はありません。
市町村の認可を受けた施設のため、認可保育所と混同しがちです。
さらに今年から3歳以上の子どもの受け入れについて規制が緩和されました。
保育事業においては良い傾向ですが、ますます保全対象施設かどうかの判断に迷う施設となりそうです。
認証保育所
認証保育所とは、東京都独自の設置基準を満たした保育施設です。
施設の規模と保育する児童の年齢と期間に応じてA型、B型とあります。
風営法における保全対象施設ではありません。
神奈川県や千葉県の一部など、他の自治体でも認定や認証する制度があります。
認定こども園
教育と保育を一体的に行うことができるハイブリットな施設が認定こども園です。
そして認定こども園には4つの種類があります。
- 幼保連携型・・・幼稚園と保育所の機能を併せ持っており、認定こども園として独立
- 幼稚園型・・・幼稚園をベースに保育所の機能を追加
- 保育所型・・・保育所をベースに幼稚園の機能を追加
- 地方裁量型・・・認可外保育施設に認定こども園の機能を追加
このうち、保全対象施設となるのは幼保連携型だけなのですが、少し語弊があります。
なぜなら、幼稚園型はそもそも認可幼稚園であり、保育所型は認可保育所だからです。
この二つはすでに風営法における保全対象施設として規制を受けています。
(幼稚園は学校教育法上の1条校です)
地方裁量型は、ベースが認可外保育施設なので保全対象施設ではありません。
保全対象施設となる保育施設の調べ方
まずは、各都道府県の条例でどのような施設が対象かを確認しなければなりません。
条例や行政機関の解釈次第で、上記の赤枠以外の施設が保全対象施設に該当する可能性はあります。
また、条例は比較的頻繁に改正されるものです。
そのため、常に最新のものを確認するようにしましょう。
外観や名称で判断しない
保育施設の外観や名称から判断することは非常に困難でリスクも伴います。
小規模保育事業の施設でも認可保育所の文言が入る施設はたくさんあります。
そのため、東京都であれば東京都福祉局や区役所の担当部署に確認しなければなりません。
また、設置予定の段階でも保全対象施設とされることがあります。
判例によれば、必要な許認可がなされていると保全対象施設とされたものがあります。
行政に確認する際には、今後の設置予定まで確認しておく必要があります。
もちろん、最終的には自分の目と足で確認することで見落としのリスクを最小限に抑えることが大事です。
最後に
保全対象施設の調査は風俗営業許可において非常に大切なことです。
特に多様化している保育施設については、より深い理解が求められます。
テナントなどを借りる際に不動産屋から大丈夫と言われても鵜呑みにすることは危険です。
必ずご自身で確認するか、専門家にご相談ください。
弊所でも迅速な調査で確認が可能ですのでお気軽にご相談ください。
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