お店を開業した後に店内の改装や店名の変更などを行おうと考えたことはないでしょうか。
また、営業者の住所やお店の管理者が変更となることもあります。
しかし、キャバクラなどの風俗営業では勝手に一定の事項の変更を行うと違法となることがあります。
電球の交換といった簡単な変更から大規模な改装までお店に変更を加えるには一定のルールが存在します。
そこで営業開始後の変更に関して、手続きと必要な書類に重点を置いて解説します。

変更に応じた申請

風俗営業許可は、申請時に公安委員会から厳しい審査を経てなされたものです。
つまり、勝手にお店の構造と設備に変更を加えてしまうとその審査が無駄になってしまいます。
お店に扉を1枚追加しただけでも、あらかじめ承認を受けなければ違法となってしまう場合もあります。
そのため、風営法第9条で下記の規定がおかれています。

(構造及び設備の変更等)

第九条 風俗営業者は、増築、改築その他の行為による営業所の構造又は設備の変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。第五項において同じ。)をしようとするときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ公安委員会の承認を受けなければならない。

 公安委員会は、前項の承認の申請に係る営業所の構造及び設備が第四条第二項第一号の技術上の基準及び第三条第二項の規定により公安委員会が付した条件に適合していると認めるときは、前項の承認をしなければならない。

 風俗営業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、公安委員会に、内閣府令で定める事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。

 第五条第一項各号(第三号及び第四号を除く。)に掲げる事項(同項第二号に掲げる事項にあつては、営業所の名称に限る。)に変更があつたとき。

 営業所の構造又は設備につき第一項の軽微な変更をしたとき。

 前項第一号の規定により届出書を提出する場合において、当該届出書に係る事項が許可証の記載事項に該当するときは、その書換えを受けなければならない。

 第一項の規定は、第十条の二第一項の認定を受けた風俗営業者が営業所の構造又は設備の変更をしようとする場合については、適用しない。この場合において、当該風俗営業者は、当該変更をしたときは、公安委員会に、内閣府令で定める事項を記載した届出書を内閣府令で定める添付書類とともに提出しなければならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第9条

変更の原則は、あらかじめ公安員会の承認を受けるということです。
「変更承認申請」と呼ばれ、あらためて公安委員会の審査を受けなければなりません。
ただし、例外として3つのパターンがあります。

  • 軽微な変更等は事後の届出で足りる
  • きわめて軽微な変更は届出不要
  • 特例風俗営業者の特例

変更承認申請

まずは原則である変更承認申請になります。
変更承認申請が必要となる変更は「内閣府令」という法律に規定されています。

(風俗営業の営業所の構造及び設備の軽微な変更)

第二条 法第九条第一項の内閣府令で定める軽微な変更は、営業所の構造及び設備に係る変更のうち、次に掲げる変更以外の変更とする。

 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第十四号に規定する大規模の修繕又は同条第十五号に規定する大規模の模様替に該当する変更

 客室の位置、数又は床面積の変更

 壁、ふすまその他営業所の内部を仕切るための設備の変更

 営業の方法の変更に係る構造又は設備の変更

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令第2条

上記の4つの変更を行う場合は、あらかじめ公安委員会の承認が必要なとなります。
承認を受けずに変更して営業すると営業許可の取消となることもあります。

変更承認申請に必要な書類

変更承認申請を行う場合は、変更承認申請書とあわせて以下の書類を添付します。
添付書類は変更しようとする事項に応じて揃える必要があります。

変更承認申請の添付書類
  • 営業の方法を記載した書類(別記様式第2号)
  • 営業所の使用について権原を有することを疎明する書類(賃貸借契約書や使用承諾書など)
  • 営業所の平面図及び営業所の周囲の略図(変更前、変更後)

あらためて検査となるので申請から2週間程度はかかると思っていたほうが良いでしょう。
その間、変更する箇所の営業はできません。
また、東京都の場合は警察への手数料として9,900円かかります。
(パチンコ店の遊技機の場合は5,200円+検定機の台数×40円)

軽微な変更等

軽微な変更等の場合は事後手続きである変更届でよいという例外規定です。
下記の2つのケースがあります。

  • 風営法第5条1項各号に定める事項の変更(9条3項1号)
  • 構造設備の軽微な変更(9条3項2号)

変更届を作成する際には、どちらに該当しているかを記載する欄があります。
これから行う変更がどちらに該当するか確認しておきましょう。(両方該当もあり)

風営法第5条1項各号に定める事項の変更(9条3項1号)

風営法第5条1項に定める事項とは下記のことです。
こちらの変更の場合は、変更があった日から10日以内に変更届を提出する必要があります。
(法人の場合は20日以内)

風営法第5条1項各号に定める内容
  1. 営業者の氏名又は名称及び住所、法人の代表者の氏名
  2. 営業所の名称
  3. 管理者の氏名及び住所
  4. 法人の役員の氏名及び住所

このうち、1と2は営業許可証に記載されている事項です。
そのため、許可証書換え申請書もあわせて提出する必要があります。
変更届には手数料はかかりませんが、許可証書換え申請には1,500円の手数料がかかります。
なお、管理者が欠けた場合はその日から14日以内に新たな管理者を選任しなければなりません。

風営法第5条1項各号に定める事項の変更に必要な添付書類

添付書類は変更しようとする事項に応じて下記の書類が必要となりなす。

風営法第5条1項各号に定める事項の変更に必要な添付書類
  • 現在の営業許可証(返納)
  • 新しい管理者、役員の住民票
  • 新しい管理者、役員の身分証明書
  • 新しい管理者の証明写真2枚(3cm×2.4㎝)
  • 新しい管理者、役員の誓約書
  • 以前の管理者の管理者証(返納)

管理者や役員の変更の場合は、身分証明書の取得など時間がかかる可能性があります。
万が一、期日に間に合わない場合は理由書の提出が必要です。

構造設備の軽微な変更(9条3項2号)

構造設備の軽微な変更も事後の届出でよいとされています。
軽微な変更の具体的な内容は解釈運用基準で例示されています。

軽微な変更
法第9条第3項第2号の規定による届出を要する構造又は設備の変更は、営業所の小規模の修繕又は模様替、食器棚その他の家具(作り付けのものを除く。)、飲食物の自動販売機その他これに類する設備の設置又は入替え、照明設備、音響設備又は防音設備の変更、遊技設備(ぱちんこ屋及び令第8条に規定する営業に係る遊技機を除く。以下1において同じ。)の増設又は交替(遊技設備の区分(施行規則別記様式第1号の許可申請書その2(B)又はその2(C)の遊技設備の区分)ごとの数の変更がある場合に限る。)等である。

解釈運用基準第17-1(2)

上記の通り、お店のちょっとした模様替え、設備の増設などは事前の承認は必要ありません。
ただし、パチンコ店の遊技機の増設や入替に関しては遊技機規則が優先されるため、変更承認申請の対象となります。
微妙なケースの場合は管轄の警察署に事前相談を行っておいたほうが無難です。

軽微な変更に必要な書類

変更届は変更があった日から1カ月以内に変更届を提出する必要があります。
(変更箇所が照明、音響、防音設備の場合は10日以内)
また、添付書類は変更しようとする事項に応じて下記の書類が必要となりなす。

軽微な変更による変更届の添付書類
  • 営業の方法を記載した書類(別記様式第2号)
  • 営業所の使用について権原を有することを疎明する書類(賃貸借契約書や使用承諾書など)
  • 営業所の平面図及び営業所の周囲の略図(変更前、変更後)

きわめて軽微な変更

変更の中でも下記の5つはきわめて軽微な変更として届出も不要です。
ただし、管轄の警察署によっては変更した旨の報告が必要となることがあります。

承認も届出も不要となる変更
  1. 軽微な破損個所の原状回復
    割れたガラスの入替や壁紙の貼り替えなど
  2. 同一規格・性能の照明、音響設備の更新
    切れた電球の交換、故障したスピーカーの更新など
    ただし、ワット数や音響のパワーが変わる場合は変更届が必要
  3. ゲームセンターなどのソフトウェアの交換
    筐体は変わらずに基盤の交換など
  4. 遊技設備の位置の変更
    ゲーム機の設置場所の変更など
  5. 軽微な椅子、テーブル等の配置変更
    見通しを妨げる(1m 以上の高さ)ようは配置変更はNG
    買い替えは届出が必要

特例風俗営業者の例外

特例風俗営業者とは、一定の要件をクリアして認定された優良営業者のことです。

認定の要件
  • 風俗営業の許可、承認を受けてから10年を経過している
  • 過去10年以内に風営法に基づく処分を受けていない
  • 国家公安委員会規則に定める基準に適合している

特例風俗営業者は、本来変更承認申請が必要な変更でも変更届でよいとされます。
非常にメリットのある制度ですが、認定の要件が厳しくあまり浸透していません。

変更手続きのまとめ

まとめると、風俗営業で何らかのの変更が生じたときは下記の申請書を提出します。
(特定遊興飲食店営業は風俗営業ではありませんが、準用されているため同様の手続きが必要です)
その上で必要な添付書類を添付しなければなりません。

申請の種類変更内容申請書様式事前の承認
変更承認申請大規模な模様替えや客室面積の変更など別記様式第10号
変更届軽微な構造変更や店名、管理者変更など別記様式第11号不要
許可証書換え申請許可証記載事項の変更別記様式第9号不要

最後に

営業を開始してから変更をするケースは思ったより多くあります。
これくらいなら申請はしなくてもよいかという考えは危険です。
例えば変更承認申請をせずに変更をすると営業許可の取消まであり得ます。
弊所では許可取得後も継続的なサポートを実施しています。
お客様には営業に集中していただき、その他の煩雑な手続きを代行しています。
営業を開始した後でも何かご不安な点がありましたらご相談ください。

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