2023年8月1日から「興行」の在留資格(以下、興行ビザ)で来日するための要件が緩和されます。
これは、上陸基準を定めた省令と入管法施行規則の一部が改正されたためです。
飲食店などで興行ビザは、外国人のダンサーやタレントを招へいする際に必要なものです。
かつて日本ではフィリピンパブをはじめとした外国人パブが流行しました。
しかし、現在はかつてのような賑わいはありません。
今回の緩和措置によって外国人タレントの招へいに影響はあるのでしょうか。
また、風俗営業や飲食店を営業する場合に外国人の招へいは慎重に行う必要があります。
そこで、現状の制度とあわせて改正点について解説します。
興行ビザとは
興行ビザとは、演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動を行うための在留資格です。
さらに、外国人が日本で行おうとする活動によって4つのカテゴリーに分類されます。
- 基準省令1号 小規模な店舗で演劇、歌謡など又は演奏の興行に係る活動を行おうとする場合
- 基準省令2号 学校や大規模施設で演劇、歌謡など又は演奏の興行に係る活動を行おうとする場合
- 基準省令3号 プロスポーツ選手などが大会等に係る活動を行おうとする場合
- 基準省令4号 映画の宣伝や撮影などに係る活動を行おうとする場合
在留期間は3年、1年、6カ月、3カ月又は15日です。
基準省令1号(2023年7月31日まで)
興行ビザ基準省令1号は、キャバクラやクラブなどで外国人を招へいするケースが想定されます。
その中でも定員が100人未満の比較的小さい施設で活動する場合に該当します。
取得要件
4つのカテゴリーの中では一番厳しい要件が課されています。
なぜなら、過去に興行ビザによる不法就労や人身取引が問題となった経緯があるからです。
申請人の学歴・経験
学歴・経験については、招へいされる外国人が下記のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 外国の教育機関で当該活動に係る科目を2年以上専攻
- 2年以上の外国での当該活動の実務経験
ただし、1日の報酬額が500万円を超える場合、この要件は適用されません。
1日で500万円以上の報酬を得られる能力があれば学歴や経験は問われないからです。
招へい機関(外国人を呼ぶ興行主)の要件
招へい機関とは、興行主のことになります。
下記のすべての要件を満たしている必要があります。
- 外国人に対して20万円以上の報酬を支払う
- 外国人の興行に対する業務に3年以上の経験を有する経営者・管理者がいる
- 5名以上の常勤の職員がいる
- 経営者又は常勤の職員が欠格要件に該当していない
人身取引等を行っていない、売春防止法等で刑に処せられた、暴力団員など。 - 過去3年間で外国人に対して報酬をすべて支払っている
例外として主に外国の民族料理を提供するお店で活動する場合は、上記の基準は適用されません。
ただし、「技能」の在留資格を有する調理師がいることが一つの条件となっています。
施設の要件
施設とは外国人が実際に活動する飲食店やホールで、下記のすべてを満たしている必要があります。
- 不特定多数の客に対して外国人の興行を行う施設であること
- 風俗営業1号許可を受けているお店(キャバクラなど)の場合は下記の要件を満たすこと
専ら接待行為を行う従業員が5名以上いること
興行ビザで従事する外国人が接待行為を行うおそれのないこと - 13㎡以上の舞台があること
- 9㎡以上の控室があること(外国人が5名を超えるときは1名につき1.6㎡加算)
- 施設の従業員が5名以上いること
- 施設を運営する経営者又は常勤の職員が人身取引等を行っていなく、反社会的組織に在籍していない
特に風俗営業許可を受けているときは注意が必要です。
風俗営業許可の構造的要件に加えて上記の基準が適用されます。
また、興行ビザでは接待行為を行うことはできません。
あくまで、エンターテイナーなのでホステスのような活動はできません。
「接待行為を行うおそれのないこと」とは、控室が直接ステージに通じている構造といった配慮が必要です。
基準省令2号(2023年7月31日まで)
基準省令2号は、比較的大規模の興行や、国や地方公共団体が主催する興行が対象となります。
活動の内容自体は1号とほぼ変わりません。
公共性や興行の規模などが1号との相違点となります。
また、2号の基準に該当した場合は1号の規定は免除となります。
基準省令2号の要件
下記のいずれかの要件に該当していれば省令基準2号の興行ビザが取得できます。
- 国や地方公共団体が主催する興行、学校で行われる興行(2号イ)
- 国や地方公共団体が援助して設立された団体が主催する興行(2号ロ)
- 敷地面積100,000㎡以上の施設(テーマパーク等)で行われる興行(2号ハ)
- 100以上の客席があり、有償で飲食物を提供しない興行(2号二)
- 報酬額が50万円以上で活動期間が15日以内の興行(2号ホ)
2023年8月1日からの興行ビザ
2023年8月1日からは、興行ビザの演劇等に係る活動の上陸許可基準が変わります。
4種類あったカテゴリーは下記の3つとなります。
在留期間も3年、1年、6カ月、3カ月、30日に変更されました。
改正の概要(出入国在留管理庁のHPより)
- 基準省令1号 演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏の興行に係る活動を行おうとする場合
- 基準省令2号 プロスポーツ選手などが大会等に係る活動を行おうとする場合
- 基準省令3号 映画の宣伝や撮影などに係る活動を行おうとする場合
今回の改正で大きな変更があったのは基準省令1号です。
旧1号と2号が統合され、制限が緩和されています。
基準省令1号は、興行が行われる施設や主催者によってイ、ロ、ハの3種類に分類されます。
基準省令1号「イ」の要件
前提として風俗営業1号~3号許可を受けているお店で行われるものは対象外です。
つまり、キャバクラやホストクラブ、低照度飲食店などでの活動は「イ」の要件に該当しません。
興行にかかる業務について適正に実施している実績があれば該当する内容となっています。
外国人を受け入れる招へい機関が下記の要件をすべて満たしていれば該当します。
申請人が次のいずれにも該当する本邦の公私の機関との契約に基づいて、風営法第二条第一項第一号から第三号までに規定する営業を営む施設以外の施設において行われるものであること。
- 外国人の興行に係る業務について通算して三年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること。
- 当該機関の経営者又は常勤の職員が次のいずれにも該当しないこと。・人身取引を行っていないこと、売春防止法等の罪により刑に処せられていないこと、暴力団員でないこと等
- 過去三年間に締結した申請人と本邦の機関との契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払い義務を負う報酬の全額を支払っていること。
- 前各号に定めるもののほか、外国人の興行に係る業務を適正に遂行する能力を有するものであること。
上記の要件に合致していれば申請者の学歴・経験や控室などの基準が不問とされます。
そのため、小規模の飲食店やライブハウスなどで、知名度の低いアーティストなどを招へいしやすくなります。
基準省令1号「ロ」の要件
新たに外国人を受け入れようとする場合でも下記のいずれかの要件に該当すれば適用となります。
申請人が従事しようとする活動が次のいずれかに該当していること。
- 国・地方公共団体等が主催するもの又は学校教育法に規定する学校等において行われるものであること
- 国、地方公共団体等の資金援助を受けて設立された本邦の公私の機関が主催するものであること
- 外国を題材にしたテーマパークで敷地面積10万㎡以上の施設で行われるものであること
- 客席における飲食物の有償提供がなく、客の接待を行わないものであって、客席部分の収容人員100人以上又は非営利の施設で行われるものであること
- 報酬1日50万円以上であって、30日を超えない期間本邦に在留して行われるものであること
昨今、大型の特定遊興飲食店やライブハウスも増えています。
そのような飲食を提供する施設でも外国人を招へいすることが可能となります。
また、活動期間が30日に延長されたため、大物アーティストなどの長期ツアーも可能です。
収容人数が100人以上
客席が設置されていないライブハウスなどで、立見席で100人以上の収容できる施設も認められます。
日本では立ち見のライブハウスが多いので、該当する施設が多くなります。
飲食の提供について
客席と一体性のある場所のバーカウンター等で飲食物を提供しても、客が自ら運んで飲食する場合は飲食物の有償提供には当たりません。
基準省令1号「ハ」の要件
上記「イ」、「ロ」に該当しないものが基準省令1号「ハ」となります。
申請人の学歴・経験
学歴・経験については、招へいされる外国人が下記のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 外国の教育機関で当該活動に係る科目を2年以上専攻
- 2年以上の外国での当該活動の実務経験
例外として1日の報酬額が500万円を超える場合はこの要件は適用されません。
なぜなら1日で500万円以上の報酬を得られる能力があれば学歴や経験は問われないからです。
ただし、この要件に該当するのは知名度のあるスター歌手などに限られます。
招へい機関(外国人を呼ぶ興行主)の要件
下記のすべての要件を満たしている必要があります。
- 外国人に対して20万円以上の報酬を支払う
- 外国人の興行に対する業務に3年以上の経験を有する経営者・管理者がいる
- 5名以上の常勤の職員がいる
- 経営者又は常勤の職員が欠格要件に該当していない
人身取引等を行っていない、売春防止法等で刑に処せられた、暴力団員など。 - 過去3年間で外国人に対して報酬をすべて支払っている
例外として主に外国の民族料理を提供するお店で活動する場合は、上記の基準は適用されません。
ただし、「技能」の在留資格を有する調理師がいることが一つの条件となっています。
施設の要件
施設とは外国人が実際に活動する場所で、下記のすべてを満たしている必要があります。
- 不特定多数の客に対して外国人の興行を行う施設であること
- 風俗営業1号許可を受けているお店(キャバクラなど)の場合は下記の要件を満たすこと
専ら接待行為を行う従業員が5名以上いること
興行ビザで従事する外国人が接待行為を行うおそれのないこと - 13㎡以上の舞台があること
- 9㎡以上の控室があること(外国人が5名を超えるときは1名につき1.6㎡加算)
- 施設(お店)の従業員が5名以上いること
- 施設を運営する経営者又は常勤の職員が人身取引等を行っていなく、反社会的組織に在籍していない
以前の省令基準1号の要件と同様です。
つまり、上記の「イ」か「ロ」に該当しなければ厳しい要件は変わらないということです。
最後に
コロナ禍もあり、落ち込んでいた興行ビザで入国する外国人は、昨年大きく回復しました。
今回の大幅な緩和措置によってさらに増えることは間違いないと思います。
しかし、偽装目的で入国する外国人が増加する可能性も否定できません。
以前に興行ビザが厳しい審査となった経緯を忘れてはいけません。
今回の緩和においても風俗営業許可を受けているお店に対しては変わらず厳しい要件が課されています。
適正な手続きで外国人タレントを招へいする必要があります。
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