マッチングアプリで知り合った異性と飲みに行ったら、その飲食店で高額請求されてしまったというトラブルが相次いでいます。
2022年10月にもマッチングアプリを手口にしたぼったくりの摘発がニュースになりました。
ただし今回の容疑は、詐欺やいわゆるぼったくり条例違反などではなく、風営法の無許可営業です。
ぼったくり被害が、なぜ風営法の無許可営業につながるのでしょうか?
事件のあらまし
事件のあらましはこうです。
摘発された飲食店の男性従業員が女性を装い、マッチングアプリで見定めた男性をデートに誘います。
約束の場所には女性従業員が現れ、「知り合いの店がある」と言って店に誘います。
飲食後、いざ会計となった時に男性は高額を請求されます、女性従業員は被害者を装い「ATMに行ってくる」などと言い姿を消してしまいます。
残された被害者男性は、仕方なく支払いをせざるを得なくなりました。特定の飲料が法外な値段で設定されていたそうです。
どこが風営法に抵触するか
今回の容疑は、風営法に規定される「無許可営業」です。公安委員会の許可を受けずに接待を伴う飲食店を営業したということです。
ここで、風営法の解釈運用基準における接待の主体という定義を確認してみましょう。
接待の主体
解釈運用基準 第4の2
通常の場合、接待を行うのは、営業者やその雇用しているものが多いが、それに限らず、料理店で芸者が接待する場合、旅館・ホテル等でバンケットクラブのホステスが接待する場合、営業者との明示又は黙示の契約・了解の下に客を装った者が接待をする場合を含み、女給、仲居、接待婦等その名称のいかんを問うものではない。
また、接待は、通常異性によることが多いが、それに限られるものではない。
交際している女性やマッチングアプリで知り合った女性とデートで飲みに行き、隣に座って長時間会話をしていても接待行為にあたることはありませんし、お店が風営法違反に問われることもありません。
なぜなら女性とデートすることは自由ですし、女性とお店の間に契約や了解がなければ、女性とお店は無関係だからです。
今回のケースでなぜ無許可営業と判断されたかというと、女性がお店の従業員であることを隠してお店に誘い、店内で接待行為を行ったからです。
風営法における接待行為の主体は、正式な雇用契約があるかではなく、客観的にみてお店との関係性があると判断されれば該当します。
「正式に雇用していない者が勝手に接待した」という言い訳は通用しません。
お店の方へ リスクなど
風俗営業の無許可営業は、風営法で最も重い罪である「2年以下の懲役又は200万以下の罰金又は併科」です。
それに加えて、5年間風俗営業の許可を受けることができなくなります。
さらに迷惑防止条例や、いわゆるぼったくり条例に違反となれば、社会的にも多大な影響を受けることになるでしょう。
一般の方へ ぼったくりにあわないために
この手の美人局のような手口は昔からありますが、SNSなどの発達で昔よりも知り合う手段が増え、時代に合わせてやり口が巧妙化しています。
今の時代、SNSを通した人との出会いは当たり前のことですが、その中にこういったケースがあり得るということは頭に入れておきましょう。
不自然に知り合いのお店に誘ってきたり、会う場所を繁華街に指定してきたりしたら、一歩引いて冷静に考えてみましょう。少しでも違和感があるようでしたら、今までの経緯などをしっかりと確認することをおすすめします。
それでも被害にあってしまった場合は、後日弁護士などと協議して解決できるケースもあります。
最後に
今回のケースは風営法違反の無許可営業という、「ぼったくり」に対する直接的な罪ではなく、回り道をしての摘発だったように感じる部分もあります。
ナイトビジネスの世界において、ぼったくりか否かの判断は非常に難しいといえます。
正当な対価として、非常に高額な料金設定をしているお店もありますし、多少曖昧な金額設定だからこそ魅力があるといった側面も否定できません。そのため、ぼったくりとして立件することが困難なため、風営法の無許可営業で摘発したという判断があったかもしれません。
高額な料金を設定しても、お客さんが満足して納得すれば、それは正当な対価となります。
そういった本物のサービスを提供するお店が増えて、偏見の多い業界を少しでも理解してもらえるよう、弊所も尽力できるように日々活動していきたいと考えています。
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