先日の風営法改正により、色恋営業の禁止、罰金上限の大幅増などが規定されました。
罰金3億円など、インパクトのある改正に隠れがちですが、「欠格要件の拡大」も規定されています。

ただし、欠格要件の拡大に関しては令和7年11月28日から施行となっています。
施行に伴い、「風営法施行規則」と「添付書類に関する内閣府令」も改正する必要があります。
そのため、令和7年8月29日に具体的な案分が公表され、意見募集が行わています。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集について
改正風営法が施行されると処分を受けるリスク、許可申請時に添付する書類が増加する可能性があります。
色恋営業やスカウトバックの禁止なども気を付ける必要がありますが、欠格要件についても注意が必要です。

欠格要件とは

欠格要件とは風俗営業許可を受けることができない条件のようなものです。
風俗営業では、場所的・人的・構造的欠格要件が定められています。
新たに施行される風営法では、人的欠格要件の拡大について規定されています。

例えば破産した人、薬物中毒者、風俗営業許可を取り消された人(法人)は許可を受けることができません。
風営法では、第4条第1項1号~11号に規定されていて、一つでも該当した場合は欠格事由該当となります。

拡大された欠格要件

11月28日から施行される改正風営法の条文は下記の通りです。
現行法にない「密接な関係を有する法人」という概念が追加されています。

 当該許可を受けようとする者(法人に限る。イ及びハにおいて同じ。)と密接な関係を有する次に掲げる法人が第二十六条第一項の規定により風俗営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者である者
イ 当該許可を受けようとする者の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの(ロにおいて「親会社等」という。)
ロ 親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの
ハ 当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条第一項7号(令和7年11月28日施行)

 次のいずれかに掲げる期間内に第十条第一項第一号の規定による許可証の返納をした者(風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で当該返納の日から起算して五年を経過しないもの
イ 第二十六条第一項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間
ロ 第三十七条第二項の規定による風俗営業の営業所への立入りが行われた日から聴聞決定予定日(当該立入りの結果に基づき第二十六条第一項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞を行うか否かの決定をすることが見込まれる日として国家公安委員会規則で定めるところにより公安委員会が当該立入りを受けた者に当該立入りが行われた日から十日以内に特定の日を通知した場合における当該特定の日をいう。)までの間

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条第一項8号(令和7年11月28日施行)

簡潔に言うと、申請する法人と密接な関係を有する法人が許可取消を受けて5年を経過していない場合は欠格事由に該当します。
また、処分逃れがを防止するための要件が厳格化され、欠格要件に該当するケースが増えます。

密接な関係を有する法人とは

施行予定の風営法の条文には密接な関係を有する法人に関する具体的な説明はありません。
国家公安委員会規則(風営法施行規則)に定めると委任しています。
そこで風営法施行規則を改正して具体的な要件を定める必要がありました。
公開された案文によると主に以下の3つのパターンが規定されています。

議決権の過半数を所有している者

株式会社において議決権のある株式の過半数を保有している者です。
会社法でいう「親会社」、「子会社」も該当します。

資本金の1/2を超える額を出資している者

上記の議決権の過半数を保有している者と意味はほとんど変わりません。
ただし、持分会社が該当します。
持分会社とは、合名会社、合資会社、合同会社の総称です。
昨今では株式会社ではなく、比較的設立の容易な合同会社での申請が増えています。

上記2つと同等以上の支配的影響力を有する者

株式や出資に限らず、人事、技術、取引等において支配的な影響力を持つ者のことです。
株式や出資金と比較して客観的な指標は少ないのですが、反社会的勢力との繋がりなどが該当します。

処分逃れをした者

処分逃れとは、許可取消し処分のおそれがある場合に処分が出る前に許可証を返納することです。
許可取消によって欠格要件に該当する前に許可証を返納してしまおうということです。
要約すると下記の通り、より厳格になりました。

改正前→処分に係る聴聞の日から起算
改正後→立入りが行われた日から聴聞決定予定日の間から起算
つまり、処分が決定していなくても欠格要件に該当する可能性があります。

申請書類の追加

申請書類に関しては、「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令」という命令に規定されています。
欠格要件が拡大したことにより、疎明しなければならない事項が増えました。

現時点(施行前)で規定されている添付書類

風俗営業許可を受けるには人的欠格要件に該当していないことを書面によって疎明する必要があります。
施行前(令和7年9月現在)の改正に係る部分は下記の通りです。

 申請者が法人である場合(次号に該当する場合を除く。)には、次に掲げる書類
イ 定款及び登記事項証明書
ロ 役員に係る第四号イ及びハに掲げる書類
ハ 役員に係る法第四条第一項第一号から第九号までに掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約する書面

風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令第1条第1項7号

改正により、密接な関係を有する法人に対する関係性を疎明する必要があります。
案文では、密接な関係を有する法人の名称、住所、代表者名に加え株主名簿の添付が追加されています。
また、条文の変更により誓約書の文面が変わるはずです。
この辺は実際に運用が始まらないと何とも言えないことから追って追記いたします。
風俗営業許可申請は、行政書士が代理するケースが多いので事業者の方にはなじみが薄いかと思います。
ただし、用意しなければならない書類が増えることによる手間の増加があるのではと思います。
また、審査項目の増加により処理期間が伸び、開店が遅れる懸念もあります。

最後に

11月28日から施行される改正風営法によって今後の営業にリスクが生じる可能性があります。
例えば別法人で展開していても、1店舗の許可取消によってすべてのお店が取消しの対象となる可能性もあります。
また、欠格要件の拡大については経過措置が設けられていません。
そのため、11月28日までに許可処分が出ないものについては、施行前に申請しても法律適用の可能性があります。
もちろん、法令を遵守して営業している限り、悪影響が出ることはありません。
まずは、法令を正しく理解した上で風俗営業を行っていくことが大事です。
そのためのサポートの提供、万が一の対応は弊所までお気軽にご相談ください。

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