歌舞伎町のホストクラブが風俗営業許可取消し処分を受けました。
取消しの原因は「売掛金」が理由という報道です。
「売掛金」による営業許可取消しは、都内では初めての事例とのことです。
今回はおそらくですが、他の法令(売春防止法、職業安定法)違反に起因するのではと思います。
しかし、風営法を適用して営業許可処分が行われたことは事実です。
営業許可取消し処分は、風営法では最も重い行政処分です。
そこで営業許可取消し処分に絞ってポイントを解説します。

風営法に基づく行政処分

行政処分と一口に行っても、許可取消しといった重い処分から指示処分という比較的軽い処分まで様々です。
また、行政処分とは別に懲役や罰金といった罰則も定められています。
今回は行政処分である「営業許可取消し処分」を主に取り上げます。

営業許可の取消し

風営法で最も重い行政処分が営業許可取消し処分です。
営業ができなくなることはもちろんですが、今後5年間新たに許可を受けることもできなくなります。
風営法では26条で許可取消し処分について規定されています。

第二十六条 公安委員会は、風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき、又は風俗営業者がこの法律に基づく処分若しくは第三条第二項の規定に基づき付された条件に違反したときは、当該風俗営業者に対し、当該風俗営業の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第26条1項

風俗営業者若しくは代理人等

行政処分の対象者は風俗営業者だけに限られません。
条文における「代理人等」には使用人や従業員も含まれます。
つまり、お店の従業員が法令違反を犯しても営業許可取消し処分の対象となるということです。

指示処分前置

原則として許可の取消し処分は、まず指示処分を行い、その指示処分に違反したときに行われます。

ただし、下記の場合は指示処分を行わずに直ちに取消し処分が行われることがあります。

  • 悪質なものを短期間に繰り返す
  • 指示処分期間中に同様の違反行為を行う
  • 法令違反行為で検挙された場合
  • 20日以上の量定に相当する処分事由に当たる法令違反行為が行われた場合
  • 善良な風俗、清浄な風俗環境を害し青少年の健全な育成に重大な結果が生じた場合

量定

量定を簡単に言うと、刑の重さの判断基準のことです。
風俗営業や飲食店営業は8段階の基準となっています。

風俗営業・飲食店営業等

A:風俗営業・特定遊興飲食店営業は取消し。飲食店営業は6月の営業停止命令。
B:40日以上6月以下の営業停止命令。基準期間3月
C:20日以上6月以下の営業停止命令。基準期間40日
D:10日以上80日以下の営業停止命令。基準期間20日
E:5日以上40日以下の営業停止命令。 基準期間14日
F:5日以上20日以下の営業停止命令。基準期間7日
G:営業停止命令等を行わないもの
H:5日以上180日以下の営業停止命令

店舗型性風俗や無店舗型性風俗営業は、許可制ではないため、許可取消しという概念がありません。
ただし、立地制限などに抵触した場合、営業廃止命令が行われる場合があります。

店舗型性風俗特殊営業・無店舗型性風俗特殊営業など

A:8月の営業停止命令
B:2月以上8月以下の営業停止命令 基準期間4月
C:1月以上8月以下の営業停止命令 基準期間2月
D:20日以上4月以下の営業停止命令 基準期間1月
E:10日以上2月以下の営業停止命令 基準期間20日
F:5日以上40日以下の営業停止命令 基準期間14日

風営法における取消し事由

原則として営業許可取消し処分は、量定がAの場合に行われます。
風俗営業を行っている場合、量定Aに該当する処分事由は下記の通りです。

風営法に基づく量定Aに該当する処分事由
  • 無許可で風俗営業を行う
  • 無承認変更・不正な手段による変更承認取得
  • 名義貸し禁止違反
  • 遊技機の無承認変更・不正な手段による変更承認取得
  • 年少者を接待業務に従事させる
  • 年少者を接客業務に従事させる
  • 営業禁止区域・地域における店舗型性風俗営業
  • 無許可で特定遊興飲食店営業を行う
  • 営業停止命令違反
  • 他の法令の規定に違反する行為

つまり、上記の行為を行ってしまうと営業許可取消し処分の可能性が非常に高いといえます。
その他、短期間に違反行為を繰り返したり、複数の違反があったときも営業許可取り消し処分を受けることがあります。

営業許可取消し処分を受けてしまったら

万が一、営業許可取消し処分を受けてしまった場合、不服を争うこともできます。
方法としては下記の3つの方法が考えられます。
公安委員会に対する審査請求
裁判所に対して都道府県を被告とする行政訴訟
都道府県に対する国家賠償請求訴訟
納得いかない場合は争うことが可能です。
しかし、過去の判例等からハードルはかなり高いといえます。
取消し処分を受ける前の聴聞等で正当性を訴えることも重要です。

最後に

営業許可取消し処分は重大な不利益を被ります。
軽微な違反だから大丈夫という気持ちは禁物です。
いつのまにか違反が積み重なってある日突然重い処分を受けることがあります。
日頃から法令順守を意識する必要があります。
何か不安なことがありましたら是非弊所までご相談ください。

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