居酒屋が風営法違反に問われることはよくあります。
先日も滋賀県で一般の居酒屋が風営法違反として摘発されました。
しかし、一般の居酒屋はもちろん風俗営業には該当しません。
それではなぜ、風営法違反に問われたのでしょうか。
一般の居酒屋が風営法違反に問われる理由と対策を解説します。

飲食店に対する規制

風営法では風俗営業に該当しない一般の居酒屋(飲食店)に対しても適用される規定があります。
下記の32条の規定により、深夜に営業する飲食店と一般の飲食店に対して規制しています。

 深夜において飲食店営業を営む者は、営業所の構造及び設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。

 第十四条及び第十五条の規定は、深夜において飲食店営業を営む者について準用する。この場合において、これらの規定中「その営業」とあるのは、「その深夜における営業」と読み替えるものとする。

 第二十二条第一項(第三号を除く。)の規定は、飲食店営業を営む者について準用する。この場合において、同項第一号及び第二号中「当該営業」とあるのは「当該営業(深夜における営業に限る。)」と、同項第四号中「業務」とあるのは「業務(少年の健全な育成に及ぼす影響が少ないものとして国家公安委員会規則で定める営業に係るものを除く。)」と、同項第五号中「十八歳未満」とあるのは「午後十時から翌日の午前六時までの時間において十八歳未満」と、「を営業所」とあるのは「を営業所(少年の健全な育成に及ぼす影響が少ないものとして国家公安委員会規則で定める営業に係るものを除く。)」と、「第二条第一項第五号の営業に係る営業所にあつては、午後十時から翌日の午前六時までの時間において客として立ち入らせること」とあるのは「保護者が同伴する十八歳未満の者を客として立ち入らせる場合を除く」と読み替えるものとする。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第第32条

禁止事項を定める風営法22条は一般の飲食店営業者にも準用されます。

飲食店営業者の禁止行為

32条の文言に従って22条を読み替えると下記の通りとなります。(マーカー部分が読み替え)

飲食店営業者の禁止行為(風営法32条)
  1. 当該営業(深夜における営業に限る)に関し客引きを行うこと。
  2. 当該営業(深夜における営業に限る)に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
  3. 営業所で18歳未満の者に客の接待をさせること。(接待行為は想定されていない)
  4. 営業所で午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させること。(定食屋や牛丼店などは除く)
  5. 午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること。(定食屋や牛丼店などは除く)
  6. 営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。

つまり、飲食店営業許可を受けている飲食店であれば上記の風営法の規制が及ぶことになります。
ただし、特定遊興飲食店や風俗営業に該当する場合は除かれます。
なぜかといえば既にそれぞれの営業について風営法の規制を受けているからです。

深夜に営業する飲食店

深夜に営業する飲食店営業に関してはさらに風俗営業に準じた規制があります。

深夜に営業する飲食店は禁止行為に加え、下記の技術上の基準に適合している必要があります。

深夜に営業する飲食店の技術的基準
  • 客室の床面積は9.5㎡以上(1室の場合は制限なし)
  • 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない
  • 卑猥な写真や広告物、装飾などを設置しない
  • 客室の出入口に施錠の設備を設けない(営業所外に直接通じる出入口はOK)
  • 営業所内の照度が20ルクス以下とならないような設備
  • 騒音・振動の数値が条例の基準に適合している

なおかつ、酒類を提供する場合は深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要となります。
ただし、酒類を提供していなければこの届出は不要です。
届出が不要なので見落としがちですが、上記の規制を受けることに注意が必要です。

違反した場合

風営法に違反してしまった場合は罰則があります。
もし、禁止行為(風営法22条の準用)に対する違反だと原則として前置処分なしで行政処分となります。
特に年少者に対する年齢確認は、写真付きの身分証明書等で厳格に行う必要があります。

営業所の構造設備の基準に違反した場合

行政処分:10日以上80日以下の営業停止命令(原則として指示処分前置)
※深夜に営業する飲食店に限られます。

照度の規制に違反した場合

行政処分:5日以上40日以下の営業停止命令(原則として指示処分前置)

騒音・振動の規制に違反した場合

行政処分:10日以上80日以下の営業停止命令(原則として指示処分前置)

客引き行為等をした場合

行政処分:40日以上6月以下の営業停止命令(前置不要)
罰則:6月以下の懲役又は100万以下の罰金

年少者に夜間接客業務をさせた場合

行政処分:6月の営業停止命令(前置不要)
罰則:1年以下の懲役又は100万以下の罰金

年少者立ち入らせ、酒・たばこの提供をした場合

40日以上6月以下の営業停止命令(前置不要)
1年以下の懲役又は100万以下の罰金
立ち入らせに関しては保護者の同伴があれば許容されます。
ただし、条例で深夜外出が規制されていることもあります。
東京都の場合→東京都青少年の健全な育成に関する条例

最後に

風俗営業許可が必要ないからといって風営法の適用がないとは限りません。
一般の居酒屋や飲食店でも風営法の規制が及ぶということを意識しておきましょう。
冒頭の居酒屋については、女子中学生を客として酒類を提供したという報道です。
これは、年少者の立ち入らせ、酒類提供の罪に該当します。
もちろん風営法違反として罰金刑が科されています。
略式起訴になっていますが、前科となるので今後の飲食店営業に支障が出ます。
飲食店営業を行う場合は、風営法の規定にも注意して営業しましょう。

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