特定遊興飲食店とは
特定遊興飲食店営業とは2016年の改正風営法施行で解禁された比較的新しい飲食店営業形態です。
深夜に酒類を提供して遊興させるという3つの要素が全て揃っている飲食店です。1つでもこの要素が欠ければ許可を受ける必要はありません。遊興に関して詳しくはこちら
具体的にはナイトクラブやショーパブ、一部のライブハウスなどが該当します。
特定遊興飲食店営業を始めるには
特定遊興飲食店営業を始めるためには飲食店営業許可の他、公安委員会の許可を受ける必要があります。
風俗営業ではありませんが、深夜の時間帯に酒類を提供して遊興させるため、風俗上の問題が生じやすいため許可制が採られています。
許可の要件である「人」、「場所」、「お店の構造及び設備」の3つの要件を確認しましょう。
人的要件
こういう人は許可を受けられませんという要件です。(法人の場合は役員全員が対象)
- 破産者
- 過去に犯罪を犯してしまって刑の執行が終わってから5年が経過していない者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれのある者
- アルコールや薬物常習者
- 心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
- 風俗営業の許可を取り消されて5年を経過していない者
- 未成年者
場所的要件
特定遊興飲食店営業はどこでも営業可能というわけではありません。
各都道府県の条例で営業可能な区域が告知され、営業可能な区域はかなり限定されます。
おそらく3つの要件の中でもここが一番高いハードルになると思います。
ここでは東京都の例になります。(千葉県、神奈川県、埼玉県の基準に関してはお問合せいただければ詳しくご説明いたします)
・商業地域のうち、規則で定める地域
詳細な地域はこちら
・東京都公安委員会が政令に規定する基準に照らし相当と認め規則で定める地域
詳細な地域はこちら
上記の区域内であっても20m以内に住居集合地域がある場合は住居隣接地域となり、許可が受けられません。(当該区域が風俗営業等密集地域に該当する場合は幹線道路の外側端から外側50mの区域を除く)
保全対象施設との距離制限
さらに上記の告示区域であっても保全対象施設との距離によっては許可がおりません。
また、風俗営業許可と違い特例区域がないため、周辺調査は必ず必要です。
・ホテル等内適合営業所
ホテル等の施設内においては、一定の基準を満たせば上記の立地にかかわらず営業所を設置することができます。
お客の出入りを適切に管理できるなどの国家公安委員会規則の基準を満たす必要があります。
構造的要件
国家公安委員会規則で特定遊興飲食店営業の営業所の基準が定められています。
- 客室の床面積は一室の床面積を33㎡以上とする
- 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない
- いかがわしい広告や設備を設けない
- 客室の出入口に施錠設備を設けない
- 営業所内の照度が10ルクス以下とならないよう維持するために必要な構造または設備を有する
- 騒音、振動が条例で定める数値に満たないように維持されるために必要な構造または設備を有する
照度の測定方法
特定遊興飲食店営業では10ルクス以下とならないような構造や設備が必要となりますが、クラブやショーパブの場合は演出上、10ルクスを確保することが困難です。
そのため、営業スタイルによって測定方法が2パターン想定されています。
・客席と遊興スペースが分かれている場合
クラブなど、ダンス(遊興)をするスペースと飲食するスペース(客席)が明確に分かれているスタイルです。
→客席部分の面積が客室全体の面積の1/5を超えている場合に限って客席部分のみ10ルクスを確保すれば、低照度飲食店営業には該当しません。
・客席と遊興スペースが分かれていない場合
ライブハウスやショーパブなどは遊興スペースと客席が明確に分かれていません。
→この場合は客室において、営業時間の半分以上で10ルクスを確保すれば低照度飲食店営業には該当しません。
遊技機の取り扱い
特定遊興飲食店営業において風営法2条1項5号の遊技設備を設置することがあります。
この場合、遊技機を用いて「遊興をさせる」か否かで取り扱いが変わってきます。
例えばスロットマシンを設置して、客自身に遊技させる場合は「遊興をさせる」には当たりません。
風俗営業5号許可を受けた上で、特定遊興飲食店営業許可を受ける必要があります。
ただし、風俗営業が認められない深夜の時間帯は、遊技機を客に使用させないための措置が必要となります。いわゆる10%ルールの取り扱いは認められるので、適用となった場合は深夜でも遊技機を客自身に使用させることは可能です。
風俗営業5号許可を受ける必要がありますが、全体として風俗営業5号営業とみなされるため、特定遊興飲食店営業の許可を受ける必要はありません。10%ルールの取り扱いも認められません。
つまり、アミューズメントカジノなどは特定遊興飲食店営業ではなく、風俗営業5号営業となります。
特定遊興飲食店営業者の義務
2016年の改正風営法の施行に伴い、深夜に営業することとなる風俗営業者(営業延長許容地域で営業する場合)と特定遊興飲食店営業者には下記の義務が課されています。
- 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼしてはならない旨を表示した書面を営業所の見やすい場所に掲示し、又は当該書面を客に交付すること。
- 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼしてはならない旨を客に対して口頭で説明し、又は音声により知らせること。
- 泥酔した客に対して酒類を提供しないこと。
- 営業所内及び営業所の周辺を定期的に巡視し、営業所の周辺において他人に迷惑を及ばす行為を行い、又は行うおそれのある客の有無を確認すること。
- 4に規定する客がいる場合には、当該客に対し、4に規定する行為を取りやめ、又はこれを行わないよう求めること。
- 苦情を申し出た者の氏名及び連絡先(氏名又は連絡先が明らかでない場合は、その旨)並びに苦情の内容
- 原因究明の結果
- 苦情に対する弁明の内容
- 改善措置
- 苦情処理を担当した者
※それぞれ参考様式があるので必要な方はご相談ください。
営業開始まで
特定遊興飲食店営業は公安委員会に許可を受ける必要があります。
東京都の場合の標準処理期間は営業所の検査を行った日から30日以内を目安とするとなっています。(休日を含まない)