旅館業許可とは

旅館業とは、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業と定義されます。
宿泊させるとは、寝具を使用して施設を利用することをいいます。
このような営業を行う場合は、都道府県知事の許可が必要となります。
ただし、保健所設置市と特別区は、市長又は区長の許可になります。

旅館業の種別

旅館業には下記の3つの種別があります。

旅館・ホテル営業

宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で簡易宿所営業と下宿営業以外の施設です。
2017年の旅館業法改正により、旅館とホテルは統合されています。
法律上の明確な違いはなくなりましたが、洋風がホテル、和風が旅館というイメージです。

簡易宿所

客室を多人数で共用する施設です。
カプセルホテルや山小屋のように一つの客室を多人数で共用する施設です。

下宿営業

一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業です。
その上で清掃などの管理を営業者が行っている場合は下宿営業となります。
つまり、一般的にイメージする学生寮などは下宿営業に該当しないケースがほとんどです。

申請手続きから許可までの流れ

旅館業の許可を受けるためには、構造設備基準、人的要件及び立地制限をクリアする必要があります。
そのため、大まかな計画が決定した段階で管轄の保健所へ事前相談に行くことが大切です。
さらに、消防法や建築基準法といった旅館業法以外の法令も関係してきます。
消防署や関係法令を所管している部署にも事前相談が必要です。
事前相談と調査を経て実際に営業が可能であることを確認しなければなりません。

事前周知

旅館業許可を申請する前に近隣住民に周知をする必要があります。
周辺住民の範囲は、申請地の敷地の周囲10m以内の住民とされるケースが多いです。
周知方法は、説明会を開催するか戸別訪問となりますが、行政の指示に従って実施する必要があります。
また、並行して計画標識の設置もしなければなりません。
こちらも申請予定日の前から営業許可日まで設置しておく必要があります。
(自治体の条例によって周知期間や範囲は異なります)

許可申請

関係行政機関との相談、事前周知が完了したら保健所へ申請となります。
申請手数料は保健所によって変わります。
東京都では旅館業許可で22,000円~30,650円、簡易宿所で11,000~16,550円です。

申請に必要な書類(正副2通)
  • 旅館営業許可申請書
  • 営業施設の構造設備の概要
  • 欠格要件に該当しない誓約書
  • 申請地を中心とする半径300mの周辺見取図
  • 建物の図面(配置図、各階平面図、正面図、側面図)
  • ガスを使用する場合は配管図
  • 法人の場合は定款及び登記事項証明書
  • マンション等の場合は規約の写し
  • 検査済証の写し

申請に必要な書類に関しても自治体によって異なることがあるので、事前に確認しておく必要があります。

関係機関への照会

旅館業法では申請予定地から概ね100m以内に学校などの施設がある場合は、施設環境が害されるおそれのないことを意見照会によって確認しなければなりません。(旅館業法第3条4項)
東京都では、意見照会がある場合は標準処理期間に10日加算されます。
ただし、あくまで標準処理期間なので意見照会には1カ月以上かかることもあります。

施設検査

施設が完成したら、構造設備基準に適合しているかを保健所の担当者が確認します。
この完成検査で問題なければ営業許可証が交付されます。
東京都の標準処理期間は施設完成から12日とされています。
ただし、申請が殺到している場合は許可までに時間がかかることがあります。

旅館業許可を受けるための基準

旅館業の許可を受けるためには、施設の構造基準に適用している必要があります。
また、営業者の人的要件と施設の立地条件に関しても規定があります。

施設の構造基準

施設の構造設備の基準は旅館業法施行令に規定されています。
2017年の旅館業法改正により、最低客室数の廃止や最低床面積の緩和、玄関帳場(フロント)の基準が緩和されています。
また、建築基準法上の建物の用途は「ホテル・旅館」でなければなりません。

ホテル・旅館営業

旅館業法施行令1条1項に規定される設備構造基準
  • 客室の床面積は7㎡(寝台を置く客室は9㎡)以上であること
  • 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場(フロント)、その他適切に行うための設備として省令で定める基準に適合するものを有すること
  • 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること
  • 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること。
  • 宿泊者の需要を満たす適当な規模の洗面設備を有すること
  • 適当な数の便所を有すること
  • その設置場所が法第三条第三項各号に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲おおむね百メートルの区域内にある場合には、当該施設から客室又は客の接待をして客に遊興若しくは飲食をさせるホール若しくは客に射幸心をそそるおそれがある遊技をさせるホールその他の設備の内部を見通すことを遮ることができる設備を有すること
  • その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること

簡易宿所営業

旅館業法施行令1条2項に規定される設備構造基準
  • 客室の延床面積は、33㎡(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、3.3㎡に当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること
  • 階層式寝台(二段ベッド等)を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね1m以上であること
  • 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること
  • 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること。
  • 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること
  • 適当な数の便所を有すること
  • その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること

人的基準

旅館業許可には欠格事由が定められています。
下記のいずれかに該当する場合は、旅館業許可を受けることができません。

旅館業法3条2項に規定する人的欠格事由
  • 心身の故障により旅館業を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくはこの法律に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
  • 旅館業許可を取り消され、取消しの日から起算して三年を経過していない者
  • 暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から起算して五年を経過しない者
  • 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が前各号のいずれかに該当するもの
  • 法人の役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者

場所的基準

施設の設置場所が下記の施設の周囲100m以内にあったときは許可が受けられないケースがあります。

  • 学校教育法1条に規定する学校及び幼保連携型認定こども園
  • 児童福祉法7条1項に規定する児童福祉施設
  • 社会教育法2条に規定する社会教育に関する施設その他の施設で都道府県の条例で定めるもの

上記の施設が周囲100m以内にあった場合は、関係行政庁に意見照会をします。
その結果、清純な施設環境が著しく害されるおそれがないと判断されれば許可を受けることができます。

用途地域による制限

都市計画法で定められた用途地域によっては、旅館業営業が禁止されている地域があります。
建築基準法により下記の用途地域でしか旅館業営業はできません。

建築基準法48条により旅館業営業ができる用途地域
  • 第一種住居地域(3,000㎡まで)
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域

旅館業の許可は弊所のメイン業務である風俗営業許可と非常に親和性が高いものです。
実際に旅館業営業ができるかの調査が非常に大切です。
ただし、自治体によってルールが異なりますので旅館業を始めたいとお考えの方は是非ご相談ください。

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